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50代は、「捨てる力」を身に付けて人生をリセットせよ

プレジデントオンライン / 2016年12月26日 15時15分

作家 江上 剛さん

年が上がるにつれて周囲から期待される立ち居振る舞いは変わっていく。サラリーマン経験がある識者に、年代別の「理想の振る舞い方」を聞いた。

「50代の振る舞い方」
●教えてくれる人:作家 江上 剛さん

大企業のビジネスパーソンであれば、「新入社員の頃から熾烈な出世競争にさらされてきた」という人が多いでしょう。大企業には非情な掟があって、40代後半から選別が始まり、出世レースから脱落した人は、50代になると「出向」という形で企業を去ります。私は49歳で、長年勤めたメガバンクを退職したのですが、そのメガバンクも同様でした。反対に50代でラインに残れた人は、いわゆる「勝ち組」といってもいい。大半は部長クラスの役職に就き、なかには執行役員以上に昇進した人もいるでしょう。

執行役員といえば、いまやビジネスパーソンが目指す憧れのポストになっているようです。しかし、最近はやりの、この執行役員という制度が曲者で、日本企業をダメにしている元凶の一つだと、私はにらんでいます。

執行役員は、世間的には役員の一種だと見なされていますが、会社法で地位を認められた取締役とは、画然とした違いがあります。たとえば、取締役は株主総会で選任されますが、執行役員は取締役会が選びます。つまり、取締役である社長などのお偉方のご機嫌を損ねれば、たちまちお払い箱になってしまうわけです。

頑張ってようやく頂上にたどり着いたと思っても、役員クラスのなかでは最下層で、新入社員に逆戻りしたようなもの。しかも、役員とは名ばかりで、執行役員は経営権もない不安定な身分なのです。

そこで取締役に引き上げてもらうためには、再び馬車馬のように働いて、忠勤に励むしかありません。保身のため、お偉方に気に入られようと、媚びへつらったり、イエスマンに成り下がったりする執行役員が後を絶たないのも、むべなるかな。揚げ句の果てには、功を焦って、不正に手を染める不届き者まで出てくる始末です。

執行役員制度は、幹部社員を意のままにこき使えるので、社長にとっては都合がいいかもしれませんが、企業のガバナンスにとってはマイナスです。執行役員と部下の心が離反し、組織の士気が下がってしまったというケースも、往々にして見受けられます。

「いままで部下と苦楽をともにし、部下に頼りにされていた部長が、執行役員になった途端、手のひらを返したように上役ばかりを見て、部下に無理難題を押しつけるようになった」

そんな話を、嫌というほど耳にします。部下は「上司に裏切られた」とショックを受け、ついてこなくなる。それでは、何のための執行役員なのかわかりません。

■左遷されたとき心を楽にする術

では、あなたがもし執行役員や、その予備軍である部長なら、どのように振る舞うべきなのでしょうか?

私は、時の“経営者”ではなくて、その“企業”にとって、何を成すのがベストなのかを追求すべきだと考えます。

50代でラインに残った人たちは、企業の次世代のリーダーと目されています。企業の将来は、その人たちの双肩にかかっているわけです。「企業をどんな姿にしたいのか」「企業のDNAを後輩にどうやって伝えるのか」といったことを真剣に考え、部下を巻き込んで行動すべきなのです。

上のほうよりも、下のほうを見ながら仕事をすることになるので当然、上役たちはいい顔をしないでしょう。私も部下と一緒に銀行の経営改革をしようと立ち上がったことがあるので、身に覚えがありますが、「君は自分の立場がわかっているのか」などと圧力をかけられる。それでも、ブレずに自分の信念を貫くべきだと思います。

「そんなことをいったって、クビになったらどうするんだ」ですって?

それなら、それでいいじゃないですか。腹をくくりましょうよ。人間、開き直れば、これほど強いものはありません。

私は、50代に必要なのは「自分を捨てる力」だと考えています。身に染み付いた我欲や見栄の一切を、思い切って捨ててみる。いままで50年生きてこられたのだから、御の字です。これからの第二の人生を輝かせるためにも、人生をリセットしましょう。『論語』には「50にして天命を知る」とあります。私は、第二の人生では自分のためではなく、まわりや社会のために何ができるかを考えたほうがいいと思います。お子さんも大きくなっただろうし、奥さんだって腹を割って話をすれば、きっと応援してくれるはずです。

わが道を貫いた結果、企業から「執行役員解任」「左遷」といった不本意な仕打ちをされたとしましょう。そのときは、「会社に尽くしたのに」「会社の将来のために頑張ったのに」などと、つい「○○したのに」と恨み言をいってしまうもの。でも、それはあなたのためになりません。

詩人の相田みつをさんは、「○○のに地獄」に陥らないようにと諭しています。後ろ向きなことは忘れて、心の負担を軽くしましょう。私の後輩にも社長に疎んじられ、「○○のに地獄」にはまった会社役員がいました。しかし、社長の顔色を気にしなくなったら、見違えるほど元気になりました。

部長や執行役員に選ばれたとすれば、企業も取引先も、あなたが積み上げてきたキャリア、実力を認めている証拠。

「どう転んだとしても、何とかなるさ」と、自信を持ってください。論語には「徳不孤、必有隣(徳は孤ならず、必ず隣あり)」という一節もあります。懸命に仕事をしていれば、それを評価して助けてくれる人が、必ずまわりにいるもの。営業のスキルでも、財務のノウハウでも、何でもかまいません。どこに行っても通用するように自分の腕を磨いておけば、あなたを拾う神が間違いなく現れるでしょう。

もし企業に残れずに出向になったとしても、気にすることはありません。

「人間到る処青山あり」という言葉もあるじゃないですか。私の知人に、倒産寸前の鉄鋼会社に出向させられた人がいました。ところが、その人は会社に馴染んで、立て直しに腕を振るい、その後は再建専門の経営者として有名になりました。もし鉄鋼会社に出向しなければ、その人は大成しなかったかもしれません。出向先を新天地と心得、そこの仕事で最善を尽くせば、自ずと道は開けてくるはずです。

▼江上 剛さんに学ぶ50代の振る舞い方「3カ条」

1. 捨てる力を身に付ける
欲や見栄を捨てると、成すべきことが見えてくる
2. 「○○のに地獄」から抜け出す
恨み事をいっても自分の心が疲弊するだけ
3. 「人間到る処青山あり」と心得る
出向になっても、そこの仕事を大切にすれば、道は開ける

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江上 剛
1954年生まれ。早稲田大学卒業後、第一勧業銀行(現・みずほ銀行)に入行。人事部、広報部や各支店長を歴任する。そうした銀行業務の傍ら、2002年に『非情銀行』で作家に。03年に退職し、執筆に専念する。『不当買収』『企業戦士』『 小説 金融庁』などリアルな企業小説を数多く発表。最新刊に『会社という病』がある。

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(作家 江上 剛 野澤正毅=構成 柳井一隆=撮影)

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