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松井一郎大阪府知事ロングインタビュー「籠池氏には一度も会ったことはない」

プレジデントオンライン / 2017年4月3日 15時15分

松井一郎 日本維新の会代表、大阪府知事

大阪府豊中市の国有地が学校法人「森友学園」に鑑定価格よりも低く売却された問題をめぐって、3月23日、国会で森友学園の籠池泰典理事長の証人喚問が行われました。その際、籠池理事長は国有地の取得に「政治的な関与があった」と語るとともに、開設予定の小学校の認可に関して、「松井一郎大阪府知事にはしごを外された」と述べました。小学校の設置については、大阪府私立学校審議会が2015年1月27日に条件付きで「認可適当」と答申し、17年3月10日に森友学園が認可申請を取り下げています。

今回のインタビューは17年2月22日に行ったものですが、約1カ月後に国会での証人喚問で、籠池理事長が小学校の認可問題をめぐって大阪府や松井知事との関係について言及し、その点が問題となったため、追加して松井氏に、小学校の認可問題、籠池理事長との関係などについて再質問を行い、書面で回答を得ました。その全文を下記のインタビュー記事と併せて収録しました。

■「府市再編」の法定協議会を提案

【塩田潮】大阪府知事在任が5年を超えました。

【松井一郎(日本維新の会代表・大阪府知事)】やりがいはあります。大阪で成長のためにこれをやろうと思えば、府市両組織を動かすことができる。どんどん結果をつくっていける。東京と比べて都市として遅れを取ってきたインフラがどんどん動き出す。インバウンドのお客さんを呼び込む仕掛けをつくる。そうすれば、東京以上の伸び率で訪問客が増える。それによって大阪の消費は拡大する。それが府民のみなさんの豊かさにつながる。

【塩田】大阪での都市改革で、2015年5月に当時の橋下徹大阪市長とともに実現を目指した大阪都構想が大阪市の住民投票で否決され、一度、挫折を余儀なくされました。

【松井】再度、府市再編の議論を行うための法定協議会をこの議会で提案しました。大阪府と大阪市の両議会で同意を得れば、前回に否決された協定書と違った大阪府・市の再編の協定書を改めてその法定協議会で取りまとめていきたいと思っています。

【塩田】「総合区8区構想」が報道されていました。

【松井】総合区は公明党が旗を振っていますが、今よりも少しよくなることは否定しません。ですが、あくまでも大阪市で身近な総合区役所を設け、権限強化を図る構想です。基礎自治体として今の24区の行政区制度よりは住民の身近なところで実行・実施できるので「よりまし」ですが、大阪市という政令市は残る。制度としての二重行政の解消にはなりません。役所の組織や仕事に、納税者が百点満点を付けることはない。総合区は今の24区よりはベターですが、われわれが言う都構想はそれよりもベターだと思っています。

【塩田】大阪の都市改革の行方について、今後の展望は。

【松井】大阪は自民党、共産党、民進党の共闘体制なので、議会で公明党の協力を得られかどうかです。「自・共・民」は、みんななりふり構わず、何が何でも自分たちの身分を守ろうとします。制度を変えることは議員の身分が変わることです。明治維新の頃は、武士の身分がなくなるということで争いになった。政治家は身分がなくなるというと、今まで言ってきた理想論は投げ捨ててでも身分を守ろうとする。大阪で5年間やってきてよくわかるようになりました。公明党は制度を変えることをまったく否定をする立場ではなく、制度変更を認めています。大阪都構想は最後、住民のみなさんの直接投票で決まるわけですから、二重行政解消のためにもう一度、住民投票を、とお願いしていきたい。

【塩田】大阪府は国際博覧会(万博)の2025年開催を唱えています。今日的意義、経済的な波及効果などをどうとらえていますか。

■2025年万博開催を目指す理由

【松井】万博開催の狙いは3つあります。第1は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの後、日本が安定して経済成長を続けるには、世界に対してビッグイベントが必要です。第2は、世界中でニーズのある新しいものを生み出す。柱になるのは健康や長寿というキーワードの新たな製品やサービスです。それをいつまでに完成させるという期間の目標が必要です。

日本が世界一の長寿国になった経緯を見ると、日本のさまざま技術が生かされている。今、世界中で先進国は超高齢社会になってきた。平均寿命は延びていますが、健康寿命との差があり、その差の10年間は、長生きはできているが、自立した生活を送れていない。その人たちに対する社会保障費も増大します。日本は、新しいイノベーションでそこを解決する目標をつくれるのではないか。それは世界中でニーズがあり、日本の新たな産業の柱になると思う。大阪は研究機関、大学など、先進医療に携わる人材が集まっているから、大阪を中心として新しいものを生み出していく。その目標設定として万博は非常に効果がある。

第3は、開催場所をベイエリアにすることです。ベイエリアは本来、どの国でも成長する核のエリアですが、大阪の場合は、今まで巨額の税を注ぎ込んできたのに、成長とかけ離れた「僻地」扱いになっています。マイナスの負債を有効な資産に変える。そのために大阪のベイエリアで万博を、と思っているわけです。

【塩田】会場の建設費も含め、運営費などの開催費用は1000億円以上といわれています。

【松井】期間中の開催費用、運営費はチケット収入でまかなえると試算しています。会場建設費は1200~1300億円という概算が出ていますが、経済効果を考えれば、投資の価値は十分あると見ています。1300億円といっても、東京オリンピック・パラリンピックの国立競技場を一つつくるよりも安い。オリンピックは2週間の開催ですが、万博は半年間やります。2年前、橋下前大阪市長と2人で2020年の東京オリンピック・パラリンピックの後に大阪で万博を、と言って旗を振り始めた頃は夢物語みたいな感じでしたが、政府も成長の起爆剤として考え、僕が持っていった旗を受け取ってくれて旗を振り始めた。機運は盛り上がってきたかなと思っています。

【塩田】昨年の臨時国会で、維新の会は自民党と連携して「カジノ解禁法」と呼ばれるIR(統合型リゾート施設)整備法案の実現を図り、可決・成立しました。経済効果への期待と同時に、カジノの弊害を懸念する声も根強く存在します。

【松井】これはベイエリアの活性化策の一つで、大阪府・市の成長戦略です。ベイエリア地域にエンターテインメントと新エネルギーの拠点の2つの産業の柱を立てる。エンターテインメントの核がIRで、非日常を楽しめるエリアをつくる。去年の時点で大阪にきたインバウンドのお客さんは年間 約940万人でしたが、IRをつくれば、新たにプラス1000万人が訪れると試算しています。大阪の消費拡大にすごくメリットがあると思っています。

弊害はギャンブル依存症ですが、日本では現在、一番はパチンコです。パチンコでギャンブル依存症が出ているのであれば、きちんと定義付けして、国も地方自治体も対応策をつくっていくのが筋論です。IRについてはシンガポール型を目指します。視察に行ってきましたが、シンガポールでは依存症にならないようにさまざまな行政の規制があります。日本もシンガポールでやっている依存症対策を取り入れ、IRができても依存症が増えない対策、対応は十分可能だと思う。それが政治の役割だと思っています。

■権限と財源を移譲しないと地方分権ではない

【塩田】維新の会は大阪でカジノをつくるために法案成立を目指して頑張ったのですか。

【松井】IR法案だけではありません。ポイントは地方分権です。地方分権推進一括法が2000年に成立して17年が過ぎましたが、遅々として進まない。地方が霞が関と永田町で力を持たないからです。IR法案だけでなく、国が握る権限と財源を移譲しなければ、地方分権といえない。やろうと思うなら、地方の側が自分たちの勢力をつくっていくしかない。僕は今、地方分権のために、あるべき姿の政治をやっていると思っています。

【塩田】小池百合子東京都知事が誕生して半年が経ちました。今も破竹の勢いで、東京都政だけでなく、中央政治にも影響を与え、「小池旋風」が注目を集めています。

【松井】頑張ってもらいたいと思います。ですが、唱えている「東京大改革」は、何をやろうとしているのかとわからない。今、やっていることは、僕から見ると、大阪では4~5年前にすでにやってきたことです。東京都の意思決定をフルオープンにすると言っていますが、大阪では6年前から予算編成過程もフルオープンで、大阪府の戦略本部会議は、庁内放送で流れていますし、記者も入ってやっています。

「教育の無償化」も大阪では6年前から私立高校等の授業料(590万円未満世帯)については完全無償です。小池さんの場合、高校の完全無償化となるのかどうかは、ちょっとわかりません。完全無償を実現する場合、私立学校の授業料の上限設定、つまりキャップをはめなければならない。私立学校への助成金の額を上げるだけなら、各学校が授業料を値上げすれば、学校が儲かるだけの話になります。本当に完全無償を実現するには、学校や私学団体と徹底的に議論して、説明し、納得してもらってキャップをはめなければなりませんが、すさまじい抵抗があります。教育の機会平等で、誰でも自由に高校が選択できるようにするなら、キャップをはめることができるかどうかが重要で、これが改革だと思います。大阪府は橋下知事時代でしたが、私学団体と激論になりました。大阪府は説明し切って、私学側に合意してもらったから、実質無償化ができたんです。小池さんはそこがやれるかどうか、僕が注目しているところですね。

もう一点、知事だけで役所は動きません。決定権は議会にありますが、議会の構成が選挙目当ての野合談合だと、選挙が終わればバラバラになってしまう。その人選ができるかどうかです。はっきり言って、「小池新党」に集まってくる人たち一人一人の覚悟、信念がちょっと見えない。今回、小池さんが言い出した豊洲移転問題も、今の議員は全員、移転賛成だった。それを覆すことについて、理屈がわからない。築地よりも安全性が確保されるなら、移転すべきだと議会は言うべきです。それを言わずにすべて小池さんに寄りかかっていくのは、政治家が議員バッジを付けたいだけとしか僕には見えないですね。

ですが、知事として小池さんに頑張ってもらって、霞が関が握る権限や財源をどう地方に移すか、そこで協力してやっていきたい。東京と大阪と、あと一つ中部とか、多極分散でエリアをつくっていく。それが日本中に改革が広がるきっかけになると思っています。

■「政権を鍛える野党」という意味

【塩田】2度目の安倍晋三首相が5年目に入りました。ここまでの政権運営は。

【松井】アベノミクスについては、デフレ脱却のために「3本の矢」の金融緩和と財政出動はやはり必要でしょう。ですが、3本目の規制改革と成長戦略は自民党ではやりにくいし、安倍首相が旗を振っても、族議員のみなさんは各種団体がバックボーンで支援者だから、規制を守りますよ。今の自民党の限界です。

ただ、日本の舵取りを民進党がやると、とんでもないことになる。日本維新の会はまだ力を蓄えていません。日本のために安倍内閣が政府の運営に当たるべきです。安倍内閣にピリッとした改革をやらせるために、「是々非々」の野党が存在する意義があると思っています。安倍さんは小泉純一郎元首相と違っていろいろな人との人間関係も大事にするから、大なたを振るうのではなく、話し合いの積み上げになる。規制改革は非常に時間がかかります。実際にやろうと思うと、外圧が必要です。維新が外圧の役割を果たすことができれば、と思います。「政権を鍛える野党」と言ってきましたが、そういう意味です。

たとえば教育の無償化も、われわれが国政選挙で掲げてきた公約ですが、未来への投資ということで、憲法を改正してでも必要かなという雰囲気が出てきています。それはもしかすると安倍政権や自民党の手柄になるかもしれないけど、それでいいんですよ。

自民党は投票率が高い高齢者にばかり目が向いていて、税金の使い方を変えることができなかった。維新が国政に進出し、国の未来を背負う子どもたちへの投資が重要、と言い出して、政府も動かざるを得なくなってきた。日本のためにプラスだと思いますね。

【塩田】松井さんは安倍首相とは、いつどんなことから付き合いが始まったのですか。

【松井】第1次内閣のとき、安倍首相は2006年12月に教育基本法改正を実現しましたが、志半ばで辞任となった。僕たちも日本の教育を変えるために教育基本法の改正が必要と思っていた。教育は聖域で、政治が口を出したりコミットしてはダメという考え方が根を張っていましたが、知事や市長が選挙の公約で「こういう教育を」と掲げても、当選すれば教育に口を出せない。これでは選挙民を裏切ることになるから、教育基本条例をつくることにした。ポイントは大阪の教育の方向性について、知事が教育委員会と協議して決定をするという点です。それで2012年3月に大阪府で教育行政基本条例をつくった。そのときは日教組を含め先生は全部、反対。教育委員会も教育委員が全員、辞表を出したくらいです。

その後に教育のシンポジウムをやる団体が、僕と首相を辞めた後の安倍さんに声をかけた。当時、自民党は野党で、安倍さんの復活はないだろうと言われていたけど、僕らが教育行政基本条例をつくったとき、「大阪はよくやったよね。シンポジウムに出席しよう」と言って出てくれた。それが僕の名前を覚えてもらえるようになる出会いです。シンポジウムの後、食事しながら話をした。教育行政基本条例を全国に広げないといけないけど、大反対にあうから、これをやれる知事や市長はいない。僕らは「国で法律で変えてくれれば、全国に広がりますよ」という話をした。安倍さんは「そうだよね」と言っていましたが、そのときは安倍さんも首相として復活するとは考えていなかったし、僕も思っていなかった。

■森友学園問題をどう考えればいいか

【塩田】安倍首相の政治家としての資質、人物をどう見ていますか。

【松井】一度、地獄を見たので無茶苦茶強くなったと思います。国会答弁を見ていても余裕がある。次はないから、完全に覚悟を決めている。周りからの声、いい意味でいえば意見、悪い意味でいえば足を引っ張るような圧力にも屈しない形で政権を運営しています。

【塩田】安倍首相の昭恵夫人が「名誉校長」を引き受けていたことや、旧教育勅語の子どもへの押しつけ教育で話題となった森友学園は大阪府豊中市にあります。国有地の格安売却問題が大きく取り上げられ、国会でも議論になっています。

【松井】これは開設予定の小学校の認可の話と土地売買の話を分けて話をしないとわかりにくくなります。土地売買は、本来、不動産取引で地下にゴミが埋まっているなら、ゴミ処理撤去費は売り主の負担で土地をきれいにしないと、土壌汚染を含めて売り主の責任になる。今回、売り主の国がその責任を買い主に渡してしまった。一番の問題は、その土地の中にある異物、ゴミを近畿財務局が確認したかどうかです。確認していなければ、近畿財務局の職務怠慢で、処分の対象になるでしょう。もう一つは、相手側が「地下8メートルにゴミの層がある」と言ったわけで、それが事実かどうかです。これは今から確かめればいい。事実でなければ、買い主の学校側が虚偽を言って国の資産を意図的に低下させたことになり、詐欺的な行為となる。その場合は、虚偽を言ったほうの処分とか罰の問題となります。この二つの事実をきちんと調べるべきだと思います。

【塩田】安倍昭恵さんの名前が出て、森友学園と首相の関係が取り沙汰されています。

【松井】安倍昭恵さんがちょっと軽く受けたのかなというのが僕の感じですよ。総理大臣がこの小さな土地取引に関与して私服を肥やすというのは、ないと思います。安倍首相も国会答弁で、そういう事実が出れば議員も辞めると言っています。それはないでしょう。ただ安倍昭恵さんは非常に大らかで、オープンで、いろいろな人とお付き合いする方です。沖縄の基地反対運動の人とも会っている。安倍首相とは人格は別なので、日本の教育のためになるなら、私でよければどうぞ、みたいな軽い形だったのかなと感じています。

【塩田】安倍首相は在任中の憲法改正に強い意欲を示しています。維新も改憲には前向きで、去年3月に「地方自治の章などの統治機構改革、全教育無償化、憲法裁判所新設」を柱とする独自の改憲案を打ち出しました。改憲問題にどう取り組んでいくお考えですか。

【松井】現憲法のこの部分が今は時代に合っていないのでは、と各党が案を持ち寄って協議し、国民のみなさんに判断してもらうための合意形成をする場所が衆参の憲法審査会です。憲法審査会は形だけでなく、中身の議論ができるように、地方分権、教育、憲法裁判所の3点を新たに憲法の中に入れ込んでいきましょうとわれわれは具体的に提案をした。あとは各党がわれわれの提案について必要か必要でないのか、憲法審査会で議論してくれたらいい。僕は憲法裁判所は必要と思います。安保法制のとき、憲法学者が違憲と言ったけど、違憲か合憲かの判断をする場所が日本にはない。これは非常に問題だと思う。

【塩田】霞が関の官僚機構は、本音では現在の中央集権体制を堅持して権限や財源を握り続けたいと思っています。維新の改憲案の地方自治の部分は、実際に実現に挑戦するとなると、霞が関の抵抗が大きいと思われます。

【松井】霞が関と全国の議員が反対です。ですが、公約に掲げてやっていますから、それを実現するのが政治の集団の役割と思っています。

■改憲は3分の2を確保した政治家の役割

【塩田】過去の安倍首相の発言などから推察すると、維新の改憲案は、安倍首相の改憲構想と一致しない点が多く、憲法観に相違があるように見えます。

【松井】安倍自民党ですから、自民党の憲法改正草案が安倍さんの考え方だとすると、草案の前文はちょっといただけませんね。国が個人の価値感や家族のあり方についてあれこれと言っている。それは放っといてくれという話です。われわれはそこには反対ですね。

【塩田】維新としては、憲法改正はいつ頃までに、と考えていますか。

【松井】まずは憲法審査会です。現憲法ができて初めて変えようという議論になっているわけですから、慎重にやるべきですが、期限は政治家の任期の間でしょう。改憲案の国会発議は衆参で総議員の3分2が必要です。3分の2がある今の状況で一度は改憲案を発議して国民投票の俎上に乗せるのが、3分の2を確保した今の政治家の役割と思います。

【塩田】衆議院は3分の2を大きく上回っていますから、具体的には次の参院選までの残り2年半の間ということになりますね。

【松井】その間でしょうね。

【塩田】橋下前大阪市長について、今後、政治家として何を期待していますか。

【松井】政治に対して興味と関心は持っていると思っていますが、今後、どういうポジションで自身の興味と関心を訴え、発言していくかは彼の自由ですよ。維新では法律・政策顧問で、月に1回の会議で、その先の1月間の維新の対応とか、次に必要な法律は何かといった形のアドバイスをしてくれます。それは非常に有効に活きていると思います。

【塩田】維新が勢力を拡大するには、橋下さんが先頭に立って旗を振らないと難しいのでは、という見方が根強くあります。

【松井】でも、一人の個人ですから、無理に出させるわけにはいきません。

【塩田】政治リーダーとして、人間として、橋下さんの最大の特徴はどんな点ですか。

【松井】すごいのは、決めたこと、約束したことについて、まったくぶれません。加えてスピード感を持って物事を実現していく。実現のプロセスを瞬時に自分自身の頭の中で組み立てられる人と思っています。目的を達成するために、情にほだされない。そういう点で、無神経でやれる。だから、大改革ができたと思います。

【塩田】松井さんはなぜ政治の道を。昔からいずれ政治家に、と思っていたのですか。

【松井】いや、まったく思っていませんでした。ですが、父が政治をやっていましてね。私はビジネスの世界でそこそこ頑張ってやっていたんですけど、親父から税金の使われ方に対する怒りを聞かされた。「おまえもそこそこ儲けられるようになったら、ちょっと世のためにも働けよ」と言われましてね。

【塩田】維新の会の党首ですから、大阪府知事の後、国政に、といった考えは。

【松井】まったくないですね。知事の公約を実現する。これはほぼ見えてきました。あとは都構想だけです。万博の誘致は国の権限でやる話です。万博をやろうと閣議決定までの道筋をつけるというのが公約で、知事としてはそこまでしかできません。大阪都構想をもう一度、住民のみなさんに判断してもらう。それをやれれば、ほぼ公約達成と思っています。

【塩田】維新の会の代表として、これからの達成目標は何ですか。

【松井】政党ですから、将来的には力を付けて国会で過半数を取り、政権を担ってもらいたいと思っていますが、そのタイム・スケジュールの中に僕自身がいるというのは、まったく考えていない話です。

■理事長とは一度もお会いしたことがありません

(以下は3月24日に追加で質問し、3月30日にメールで回答を得たものです)

【塩田】3月23日の国会での証人喚問で、森友学園の籠池理事長は、小学校設置の認可について、大阪府私立学校審議会が「認可適当」としたことの背景を聞かれ、「条件付き認可になったときには政治的背景があったと思う」と答弁しました。

【松井】「条件付き認可適当」は、私立学校審議会の答申に付された条件がクリアできれば、府として「認可」を行うというものです。森友学園のケースでは、学校の建設工事に関する契約締結状況や寄付金の受け入れ状況などを審議会に報告することが条件となっていました。それぞれの条件がクリアされなければ、当然、「認可」されないことになります。「条件付き認可適当」という文言が、あたかも認可されているかのような誤解を招くことになりましたので、教育長に、文言も含めて、答申のあり方について検討してもらうことにしています。

今回、教育長が「認可取り消し」を行ったのではなく、森友学園側が自ら申請を取り下げました。申請が取り下げられていますので、小学校設置の認可に関する審議は以後行われませんが、権限を持つ府の教育長において、なぜ3通りの工事契約書を作ったのかなど、申請書類をめぐる事実関係について、森友学園にしっかりと説明を求めていくことにしています。

【塩田】籠池理事長の「政治的背景」という発言をどう受け止めていますか。

【松井】私は小学校の認可について働きかけを受けていません。審議会会長も、そうした働きかけはいっさいないとおっしゃっています。

【塩田】籠池理事長は証人喚問で、松井府知事の名前を挙げ、「はしごを外された」と厳しく攻撃しました。

【松井】小学校設置認可の手続きについて、私がはしごを外したと発言されましたが、そもそも提出された申請書類に虚偽の記載があったとの疑いが強まる中、教育庁において事実確認を進めている最中に、森友学園が自ら申請を取り下げたのです。籠池理事長はいろいろ追い詰められ、最後に当たることができるのは私だけになって、私の名前を挙げたのだと思っています。

【塩田】籠池理事長と過去にどんな付き合いがありましたか。

【松井】籠池理事長が国会での証人喚問で、私と会ったことがないとおっしゃっていましたように、そもそもお付き合い以前に、理事長とは一度もお会いしたことがありません。

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松井一郎(まつい・いちろう)
「日本維新の会」「大阪維新の会」代表・大阪府知事
1964(昭和39)年1月、大阪府八尾市生まれ(53歳)。福岡工業大学付属高校(現城東高校)を経て、福岡工業大学工学部電気工学科を卒業。大通、きんでん勤務の後、2003年の統一地方選挙での大阪府議選に八尾市選挙区から自民党公認で立候補して初当選(3期連続当選)。07年に自民党大阪府議団政調会長。09年に「自民党維新の会」を結成して政調会長となる。10年4月に橋下徹が代表を務める地域政党の「大阪維新の会」に参加して幹事長に就任。その後、党の離合集散や衣更えに伴って、橋下代表の下で日本維新の会幹事長、維新の党幹事長を務めた(14年12月まで)。一方、11年11月、橋下大阪府知事の辞任、大阪市長選への出馬に伴い、後任の大阪府知事を目指して知事選に出馬する。大阪府知事・大阪市長のダブル選を制して、府知事に当選(現在2期目)。15年12月に結成された国政政党「おおさか維新の会」(現日本維新の会)と地域政党である「大阪維新の会」の代表に就任して現在に至る。一男一女の父。

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(作家・評論家 塩田 潮 熊谷武二=撮影)

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