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"小池知事1年"新聞が論じない首相への道

プレジデントオンライン / 2017年8月6日 11時15分

48階建ての東京都庁。知事室は7階にある。

7月15日で65歳になった小池百合子氏。都知事に就任して1年を迎え、新聞各紙も都政に厳しい注文をつけるようになっている。ただし、都政の先の国政進出について、掘り下げた論考は見当たらない。国民の関心事は、小池氏が女性初の首相になるかどうか、という点ではないか。そして焦点は「いつまでになるか」のはずだ――。

■「小池知事1年」は朝日と毎日だけ

この8月で小池百合子氏が都知事に就任して1年になる。朝日新聞と毎日新聞が2日付紙面でそれぞれ「真に『開かれた都政を』」(朝日)、「イメージより課題解決を」(毎日)との見出しを掲げ、小池都政を厳しく批判し、注文を付けている。

全国紙で「小池知事1年」を社説のテーマにしたのはこの沙鴎一歩が調べた限り、朝日と毎日だけである。

しかし朝日と毎日も国民が関心を最も寄せる小池氏の国政進出、つまり女性初の内閣総理大臣(首相)の可否については、ひと言も触れていない。だから社説は「面白くない」といわれるのだ。かつて社説を10年以上にわたって執筆してきた記者として非常に残念である。

■朝日は「大きな疑問と不安がある」と批判

まず朝日の社説。「先月の都議選では支持勢力が議会の過半数を占めた。『都民本位の都政』『都民に開かれた都政』という自らの公約の実現に向けて盤石の体制を確立した形だが、ここまでの歩みを見ると大きな疑問と不安がある」と書き出す。

ここで「大きな疑問と不安」とは何だろう、と読み手に考えさせ、「知事はこの間、任命した外部顧問らとの間で重要な方針を決める手法をとってきた」と指摘する。

そのうえで朝日社説は具体的事例を挙げていく。

■「市場関係者や都民は戸惑うばかりだ」

「たとえば市場移転問題だ」

「知事は6月20日、突然『築地は守る、豊洲を活(い)かす』」を基本方針として発表した。その4日前に知事も出席して開かれた都の『市場のあり方戦略本部』の最終会合では、まったく議論にのぼっていなかった話だ」

「会合をネットで傍聴していた都民は『両立』など想像しなかったに違いない。それは都庁幹部も同様で、発表直前まで知らされていなかったという」

「基本方針に関与した顧問らはその後、豊洲には『一時移転』するだけだと、ツイッターなどでくり返し発信している。一方で、知事もメンバーである都の幹部会議では、副知事が豊洲を市場として『継続的に』運営すると報告し、了承された」

だめ押しも手厳しく、「市場関係者や都民は戸惑うばかりだ。姿勢をあいまいにしたままの知事の責任は重い」と批判する。事実、「移転賛成派と反対派の双方にいい顔をしただけ」との批判は都民から多くあがったし、この沙鴎一歩もそう思う。

ただ朝日がここまで感情的に批判するのをみると、朝日は小池氏がかなり嫌いなのかもしれない。

■取材がないから新聞社説は面白くない

この後、朝日社説は「もうひとつ大きな注目を集めた五輪の計画見直しでも、顧問らがまとめた英文リポートが、知事から国際オリンピック委員会のバッハ会長に手渡されたことがあった。都議会で内容を尋ねられた都幹部は『作成の経緯に関与していない。答弁は控えたい』と言うしかなかった」と書く。

そのうえでまた厳しくこう批判する。

「議論の過程をできるだけ透明にし、結論を出したら、理由も含めて自らの口ではっきり語るのがリーダーの務めだ。この当然のことが小池都政はできていない」

「知事は従来の都政をブラックボックスと呼んで批判した。だがこれでは新しいブラックボックスが生まれただけで、都民への説明責任を果たしていない点で変わりないではないか」

「当然のことができていない」とか「新しいブラックボックス」といった表現はかなりきつい。

もちろん小池氏に反省すべき点はある。しかし新聞業界をリードする立場にある朝日新聞がここまで批判するなら、この件について小池氏の反論を聞き、その弁明を含めて書くべきだと思う。

新聞の社説というのは、相手にまったく取材せずに、自社の新聞記事を読んだだけで大上段から相手に切り込むことが多い。だから面白くないのである。

■散漫な批判にとどまる毎日社説

毎日社説も前述の朝日社説同様、手厳しく小池都政を批判している。

「小池氏は『問題提起型』の政治手法を駆使してきたが、個別に課題を見てみると、提起した問題の解決に至っていないケースもある」と指摘し、築地移転問題と東京五輪の計画見直し問題を挙げた後、こう主張していく。

「五輪準備や市場の問題も大切だが、2年目に入る今後は、東京が直面する大きな課題に対して「課題解決型」の都政運営が求められる」

「20年ごろから東京は人口減少が始まり、高齢化が加速する。いまだ解決しない待機児童問題に加え、特別養護老人ホームなどの不足で、施設に入れない『待機老人』の問題も深刻になる。道路や橋、下水道など建設から半世紀以上経過する老朽化したインフラの整備も急務だ」

「子育て支援とともに『老いていく東京』の課題に向き合って、解決の道筋を示すことが重要ではないか」

そして最後に「生活に直結する課題を重視し、都民のための政治にリーダーシップを期待したい」と毎日社説は筆を置く。こう書くところは実に毎日らしいといえば毎日らしいのだが、いくつも課題を挙げ過ぎた結果、社説自体がかなり散漫になっている。

■細川元首相「そればかりは運ですから」

小池氏は新聞各紙のインタビューに「都政に集中しているので国政への進出はない」と明確に答えている。しかしながら小池氏も政治家。政治家は今日いったことが明日には変わるのである。

毎日新聞夕刊の人気の大型インタビュー記事「特集ワイド」に、「小池さん『倒幕』するかもね 細川元首相が読む次の一手」という見出しの記事(7月12日付)が掲載されている。

毎日新聞「特集ワイド 小池さん『倒幕』するかもね 細川元首相が読む次の一手」(7月12日付夕刊)

記事はそのリードで「小池百合子東京都知事が率いて都議選で圧勝した『都民ファーストの会』。かつて都議選の勝利をステップに国政選挙に挑み、自民党を下野させた日本新党旋風に重なる。彼女を政界へ引き入れた細川護熙元首相の思いを聞くと、意味深長なことを言った」と書く。

記事中の細川氏の話を取り上げてみよう。

「(小池氏と)会ってますよ。ホテルでコーヒーを飲み、相談を受けたりしています。都議選告示の2週間ほど前にも会ったかな。ぴりっとはしませんでしたが、豊洲市場問題は選挙までに明らかにしておくこととか、自民党の党籍は向こうが切るまでほうっておけとか。メールもきますよ。小さなことで<一生のお願い>とか言って、アハハ。もっと大きな相談をしてもらいたいんだけどね」

「来たるべき総選挙で、少なくとも東京の小選挙区で、小池新党は戦うだろうし、全国展開もあり得る。本人はやらず、都政改革、オリンピックの成功へ向けて専念するでしょう。それでいい。各地の首長などに日本新党の同志も結構いますから。政界、野党再編につながるかもしれない。小池さんは重要なプレーヤーとしての役割を果たすだろうし、期待もしています。もちろん、戦後の価値観、戦後憲法による平和で自由な社会を守る保守中道であってもらいたいが」

「それ(初の女性首相になるかどうか)ばかりは運ですから」  

小池氏が師と慕う細川氏も肝心なことは分からないらしい。いや分かっていて、はぐらかしているのかもしれない。

■「勘と度胸」では日本一の政治家

「日本新党にはじまり、新進党、自由党、保守党と渡り歩き、新党の賞味期限が長くないことは、本人が一番わかっているはず。周囲がいくら騒いでも、よっぽどのメリットがない限り動かないでしょう」

こう言及するのは元細川首相の政務秘書官を務めた成田憲彦氏である。7月26日付の朝日オピニオン面の耕論「小池劇場、国盗(と)りは?」で彼の談話が取り上げられた。

その談話を読み進むと、こんなことをいっている。

「政治家・小池百合子の最大の強みは、勘と度胸です。2012年の自民党総裁選で石破茂さんを支持し、安倍内閣が続く限り自分に展望はないとの状況を招いた。しかし都知事選がチャンスに。チャンスをものにする能力は抜群です。今の永田町に、あれほどの勘と度胸を持った政治家はなかなかいない。もしも首相を狙うなら、自民党から迎え入れられる場合しかないでしょう」

「勘と度胸」……。沙鴎一歩も成田氏のこの談話に同感である。

ただ「自民党から迎え入れられる場合しかない」という点には賛成できない。都民ファーストの会が野党と手を結びながら、やがて全国レベルの「国民ファーストの会」に成長し、自民党を倒すときがくると思うからである。

もちろん国民ファーストの会の党首は小池百合子だ。そして日本初の女性首相が誕生する。

ただ7月15日で65歳になる彼女の年齢だけが、少しばかり気になる。小池氏に時間がそうあるわけではない。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)

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