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シルバー民主主義を50字で語る小6の習慣

プレジデントオンライン / 2017年11月15日 9時15分

「現代用語の基礎知識」選 ユーキャン新語・流行語大賞2017ノミネート語掲載のウェブサイトより

「御三家などの難関中に合格する小学生は、家庭で政治の話を避けない」。中学受験塾の代表・松本亘正さんはそう話す。いま難関中では、大人でも即座に答えられないような政治系の出題が増えているという。子供に政治的素養をつけさせるには、どうすればいいか。子供が興味をもつニュース番組を見る方法とは――。

■小学生に最も有名な政治家は「豊田真由子前衆議院議員」

「このハゲーーー」「ちーがーうーだーろー!」。私が代表を務める中学受験塾に通う、有名私立小学校の男子たちは「2017年の学校内の流行語大賞はこれで間違いなし」と語っていた。

今夏、男性秘書にこれらの暴言を吐いたことが週刊誌に報道され、「ちーがーうーだーろー!」は「2017ユーキャン新語・流行語大賞」(「現代用語の基礎知識」選)にノミネートされた豊田真由子前衆議院議員。安倍晋三首相を上回り、いま小学生に最も有名な政治家だ。

なぜ、豊田前議員は小学生の注目の的なのか。

子供は、各政治家がどんな政治信条を持っているかはよく知らない。だが、面白い「人物」には食いつく。今年、政治家に不祥事やスキャンダルは数多かったが、中でも豊田前議員の振る舞いは、子供にとって最高のネタだったようだ。

▼小学生は、まずキャラクターから政治家に興味を抱く

小学生が歴史に興味を持つきっかけは、「人物」であることが多い。「坂本龍馬」や「織田信長」という人物のキャラクターに関心を持つことが勉強のきっかけになる。「船中八策」や「楽市・楽座」がきっかけで歴史に夢中になるケースは稀だ。政治にもこれと同じことが言える。

小学生は、まずキャラクターから政治家に興味を抱く。たとえ面白おかしい話題から関心をもったとしても、政治や政治家に興味を抱くのは悪いことではない。ただ、政策への関心に直接結びつくわけではない。

■難関中高一貫校に合格する子の家庭は政治談議する

小学生を相手に授業をしていると、「御三家」や「難関」といわれる中高一貫校に合格する子ほど、家庭で政治の話をしていることが分かる。どうやら親は、消費税、安保法制、北朝鮮問題など、わが子の将来に関わるかもしれない事柄を意図的に家庭内で話題としているようなのだ。

家庭で「政治談議」に触れる機会の多い子は、政権や政策への賛否を“理由”付きで述べることができる。「結局、憲法9条を改正しようとしているのは日本が戦争できるようにするため」とか「金正恩は危ない。だから日米同盟を強化しためには自然なこと」などと話すのだ。

もちろん、親の発言や報道番組のコメンテーターの受け売りであることも多い。10歳前後の子どもに大人の考えを刷り込ませるのはいかがなものか、という意見もあるだろう。しかし、浅知恵と片づけてしまうのはもったいない。学力が高い子は、政治に対しても大人がハッとするようなことを言うことがある。

▼子供の政治素養を高める、親の「つぶやき」

「都知事の『排除』発言はまずかったよね。あれで風が変わったよね」

「希望の党」を率いていた小池百合子都知事に、こう言った小学生もいた。この時、子供のくせに知ったかぶったことを、と意見を蹴散らすのは簡単だ。だが、政治や政治家に興味を抱き意見を持つことは、「賢さ」を養い、学力を伸ばす効果があるように感じる。そうした賢い子は子供同士で意見を述べ合い、自分とは異なる視点や意見に接する中で、次第に自分の意見を洗練させていく。

では、自分の子供が政治に関心を持ちそれなりの意見を持てるようにするには、親はどうすればいいのだろうか。

「ニュースを見ながら、つぶやいてください」

私は親御さんにそう伝えている。親が思っている以上に、子供は親の何気ないつぶやきを聞いている。食事をしながらの家族だんらんの時間。すべてみる必要はないので、最初の15分間だけでもニュース番組を一緒にみてほしい。

そして、番組をみるだけでなく、取り上げられたニュースに対して何かしらつぶやいてほしい。たとえば待機児童の問題なら「ウチも保育園が見つからなくて苦労したわね」。または小池都知事が取り上げられれば、「小池百合子都知事の服のセンスってどう思う?」。とにかく、ニュースに対してひとことコメントしてみてほしい。

■難関校の出題:「シルバー民主主義」を50字で説明せよ

おすすめのネタは安倍晋三首相についてだ。小学生も安倍首相のことは知っている。親は「実は、昔、病気で一度総理大臣を辞めたんだよ」でもいいし、「おじいちゃん(岸信介)も総理大臣だったんだよ」でもいい。個人にスポットを当てることで、子供が「政治」に興味を持つきっかけをつくることができる。

では、最終的に、どのようなレベルにまで子供の政治的素養を引き上げればいいのか。例えば、中学受験を考えているのならば、以下のような出題に答えられるような知識が必要となる。

《「民進党や共産党など野党4党は、候補者を一本化」について、野党各党が与党に勝つため、別々に候補者を立てるのではなく、野党で共通して候補者を1人に絞ったのはなぜか、答えなさい》(2017年鴎友学園女子中)

学校が発表した解答は以下の通りだ。

「野党が別々の候補者を立てると、票が分散して与党に勝てなくなるが、共通して1人に絞ると票が集まり、与党に対抗できるから」

今や、小学生にも政治への理解が求められている。国会議員の数や任期を単純に記憶すればいい、という時代ではないのだ。

▼国政選挙で地方に住む高齢者の声が国会に届きやすい理由を120字で

中学受験の問題は、社会を映す鏡になっている。「選挙権年齢の18歳引き下げ」「一票の格差の是正」「参議院の合区(隣り合う選挙区を統合)」といった言葉は中学受験をする小学生にとっては覚えるべきキーワードになっている。

政治関連で近年頻出するテーマは「シルバー民主主義」だ。この2年だけでも、偏差値60~70の難関中高一貫校では、次のような問題が出ている。

《「シルバー民主主義」という言葉を選挙時に聞くことが増えてきました。これは、各政党が65歳以上の高齢者に配慮した政策を掲げる傾向が出てきているからです。なぜこのような傾向になるのか、50字以内で理由を説明しなさい》(2017年渋谷教育学園渋谷中)

《日本の国政選挙では地方に住む高齢者の声が国会に届きやすいという指摘があります。(中略)なぜそのようなことが言えるのか、またそのような問題についてどのような対策がとられているのか、120字以内で説明しなさい》(2017年浅野中)

《1990年代以降、投票率の低下がしばしば指摘されています。投票率の低さはどのような問題を持つと思いますか。年代別の投票率にも注目し、国民主権と関連付けて説明しなさい》(2016年武蔵中)

いずれの問題も、受験生は人口ピラミッドや投票率といったデータを参考にしながら解くのだが、難関校に合格したければ、小学生といえども「主権者意識」が求められるということだろう。

ちなみに、シルバー民主主義とは、少子高齢化の進行で有権者に占める高齢者(シルバー)の割合が増す中、選挙で当選するためにそうしたシルバー層に配慮した政策や公約を打ち出す候補者が増える現象のこと。そのことから、若い世代も投票することが重要であることを子供に考えさせる問題だ。

家族でテレビを囲むとき、どんな番組をみているだろうか。お笑い芸人が登場するバラエティ番組や野球やサッカーなどのスポーツ番組をみるのもいいだろう。だが、ニュース番組をみることがあれば、「政治家」を話題に出してみてほしい。きっと子供の政治的素養を高めることにつながるはずだ。

(中学受験専門塾ジーニアス代表 松本 亘正)

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