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限界だと感じたら、親を放り出してもいい

プレジデントオンライン / 2018年2月4日 11時15分

写真=iStock.com/KatarzynaBialasiewicz

■要介護度が違う両親への対応

親の介護は大変だ。とはいえ、どこがどのように大変なのかは、実際にはじまってみなければわからない。私の知っているケースでは、両親の「要介護度」が違ったことが仇になった。

ご存じの通り、要介護度は身体の状況や、それによってどれくらいのサポートが必要かなどで決まる。たとえば、食事や衣類の着脱などは1人でも問題ないが、入浴や排せつの一部で介助が必要な場合は「要介護度1」。生活全般にわたって全面的な介助が必要な、いわゆる「寝たきり状態」の場合は「要介護度5」ということになる。

そして、厄介なことに2015年の介護保険制度の改正で、特別養護老人ホームに入所できるのは原則として「要介護度3」以上の人となってしまった。その他の介護施設においても、施設ごとに「うちは要介護度3以下の人しか入所できません」「要介護度5の人専門です」などと基準を掲げている。同じような状態の人をまとめて入所させたほうが、施設側にとって楽だからだ。

となると、要介護度が著しく違ったり、どちらかに認知症の傾向があったりすると、同じ施設に入所するのは難しくなる。そこから家族の苦悩がはじまるのだ。

■見舞いが辛くてうつになる人たち

たとえば父親が「要介護度2」で、母親が寝たきりの「要介護度5」の場合、2人が同じ施設に入所するのは難しい。とはいえ、父親を1人で家に置いておくのも心配……と別々の施設に入所させたとしよう。

すると、見舞いに行く家族は、まず実家で両親の荷物をピックアップし、次に父親の施設に行き、母親の施設に行くということになる。実際、2つの施設が遠いこともあるし、そもそも実家から離れていることもある。そうなれば本当の「大移動」だ。肉体的・経済的負担は計り知れない。

それだけならまだいいが、これらの負担が心を蝕むこともある。結局、介護疲れからうつになってしまった人も大勢いるのだ。だからこそ、私は言いたい。頼れるものは頼ること。そして、「自分は冷たいんじゃないか」などと思わず、親の世話はアウトソーシングすること。

『ルポ介護独身』(新潮新書)の著者で、多くの介護者の取材をしてきたルポライターの山村基毅さんも言っている。「もう無理だ、限界だと感じたら、親を放り出してもいいと思うんです」と。自分が倒れたら、本当にすべてが瓦解してしまうからだ。

■まずは「地域包括支援センター」に相談を

もちろん、そんな切迫した事態にならないのが1番。たとえばこのケースでは、「地域包括支援センター(高齢者総合相談センター)」に相談するのが正解だ。

地域包括支援センターとは、65歳以上の高齢者の困りごとに応じてくれる「よろず相談所」のようなもの。各市区町村に配置され、地域の高齢者の心身の健康状態の維持や、保健福祉医療の向上、生活安定に必要な援助を包括的に行う。相談すれば、必要に応じた保健・福祉サービスが受けられるよう、市区町村や関係機関との連絡調整を行ってくれる。

両親の要介護度が違う場合、基本的には同じ施設には入れないが、比較的基準の緩い施設もある。一度相談してみる価値はあるだろう。

また、にっちもさっちもいかない状態になってからだと、よく調べもせずに施設を選ぶことになる。介護施設は基本的には「シェアハウス」のようなもの。保育園のようだとも言える。

外からの来客が多く、レクリエーションが頻繁にあるような賑やかな施設もあれば、イベントの少ない静かな施設もある。どちらがいいかは、親の性格次第だ。早めに動けば、「親を施設に預けてしまった」と自分を責めずに済むような、理想的な施設が見つかるだろう。

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黒田 尚子(くろだ・なおこ)
CFP、一級FP技能士、消費生活専門相談員
日本総合研究所に勤務後、1998年FPとして独立。個人向けの相談業務、セミナー・FP講座等の講師、書籍や雑誌・Webサイト上での執筆など幅広く行う。消費者問題にも注力。

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(ファイナンシャルプランナー 黒田 尚子 写真=iStock.com)

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