"安倍3選"がまったく盛り上がらないワケ
プレジデントオンライン / 2018年8月22日 9時15分
■「改憲」について新聞各紙の書きぶりが微妙に変わってきた
8月中旬になって、憲法改正論議について新聞各紙の書きぶりが微妙に変わっていることに気づいた人は、かなりの政治通といえるだろう。
例えば読売新聞。8月14日の朝刊記事に添えた「想定されるスケジュール」の表の中で「憲法改正の国会発議→国民投票」を5月の新天皇即位・改元と、夏の参院選の間に置いた。この表を素直に読むと、来年の6月あたりに国民投票が行われるように読める。同日の日経新聞も同趣旨の表を掲載している。
今年に入ってから「森友」「加計」問題などで安倍政権の求心力が低下。「安倍内閣のもとでは改憲は困難」という論調が多かった。2紙の表現は、そういった論調とは、かなり違っている。
この変化は12日、安倍氏が地元・下関で「党の改憲案を(今秋の)次の国会に提出できるようとりまとめを加速すべきだ」とアドバルーンを上げたのを受けてのもの。秋の臨時国会に改憲案を提出すれば、その国会中か来年の通常国会の冒頭には国会発議。19年前半に国民投票というスケジュールが見えてくるのだ。
両紙とも、見出しなどで「改憲スケジュールが早まった」などと明示しているわけではないので、まだ「19年国民投票」には半信半疑なのだろう。それにしても、安倍政権に太いパイプを持つ2紙の報道は総裁選後、改憲スピードがアップしそうな空気を永田町に吹き込んだのは事実だ。
■衆院選があれば「年間グランドスラム」
来年は4月には統一地方選があり、全国で首長選、地方議会議員選が行われる。7月には参院選が行われる。統一地方選と参院選が同じ年に行われるだけでも12年に1回しかないのだが、そこに日本では初めて改憲の国民投票まで行われることになれば、過去に例をみない投票イヤーとなる。
国民投票は統一地方選と参院選の間の5、6月ごろ行われるのか。7月の参院選の後に行われるのか。それとも参院選と同日なのか。どちらにしても、いつも選挙が行われているような1年となることに変わりない。
もうひとつ忘れてはいけない選挙がある。衆院選だ。安倍氏は2012年暮れに首相に返り咲いた後、14年、17年と任期満了まで余裕を残し、比較的早い時期に衆院解散して自民党を勝利に導いてきた。安倍氏の今までの行動実績からすると19年は、衆院解散があってもおかしくない。
安倍氏に近い永田町関係者は、こうつぶやく。
「安倍氏は衆参同日選を狙ってくるのではないか。衆参両院の3分の2を改憲勢力が同時に確保し、一気に改憲に突っ走るだろう」
■「衆院解散が頭をよぎったことは否定しない」
改憲を発議するには衆参両院で3分の2の賛成が必要だ。今は改憲勢力が両院で3分の2を維持するが、来年の参院選では、それを割り込む可能性がある。それならば衆院と同日選にして一気に決着をつけようという発想だ。
荒っぽいと言えば荒っぽい。しかし、いかにも安倍氏が考えそうなことでもある。安倍氏は16年の参院の際にも衆参同日選を画策したが熊本地震の復旧を優先させて解散を断念した。安倍氏は後日「衆院解散(による同日選)が頭をよぎったことは否定しない」と認めている。もう一度、頭をよぎっても不思議ではない。
そうしたら、1年間に統一地方選、参院選、衆院選、そして国民投票が連なる「年間グランドスラム」になることもあり得る。
■議員の常識は「自分の選挙が一番大事」
地方議員にとっては統一地方選が、改選を迎える参院議員にとっては参院選が一番大切であることは言うまでもない。ただし、それぞれの選挙は関連しあっている。
国会議員にとっては自分の系列の地方議員を1人でも増やすことが自分の当選の近道となる。地方議員にとっては、地域の細かな陳情を受けてくれる国会議員の存在は不可欠だ。
そして改憲国民投票も無関係ではない。改憲を訴えてきた自民党などの保守勢力、改憲阻止を主張してきた護憲勢力にとって国民投票は今後の政治の行方を左右する。つまり国、地方を問わず政治家にとって地方選、衆参国会議員選、国民投票は、一つとして手を抜けない性格のものだ。
■だから消化試合に付き合っている時ではない
そこで自民党総裁選である。党総裁選も、地方選や参院選と密接にからんではいる。地方議員や国会議員にとっても、来年にも行われる自分の選挙の時の「党の顔」が誰になるのかは、重要だ。
ただし、ご存じの通り今年の総裁選は安倍氏が3選するのは確実な情勢。いわゆる無風選挙。自分の選挙の時の「顔」が誰になるかは、既に事実上決まっている。だから地方議員や国会議員は「今は消化試合に深入りしている暇はない」のだ。
今、地方議員たちは競い合うように安倍氏との面会を求め、総裁選での支持を伝えている。このことは、既報の「安倍首相が"3選圧勝"に執念を燃やすワケ」で紹介した通りだ。一見、地方議員たちは熱心に動いているように見えるが、それは、自分の選挙に利用しようと安倍氏とのツーショット写真を撮影するため。目的を達成した後は、きたる自分の選挙に全力を傾けることになるだろう。
というわけで、総裁選は盛り上がりに欠けたまま9月20日に予定される開票日を迎えることになる。
(プレジデントオンライン編集部 写真=時事通信フォト)
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