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新潟市は若者にとって"古着のまち"だった

プレジデントオンライン / 2018年11月30日 9時15分

インスタグラムの投稿情報をもとに作成した新潟市の観光地図

写真SNS「インスタグラム」には「ハッシュタグ」という機能がある。単語の前に「#」をつけることで、写真を特定のキーワードにひも付けることができるのだ。新潟市ではこのハッシュタグを分析することで、埋もれている観光資源を再発見し、若者へのマーケティングに活用している。“インスタ先進都市”の取り組みとは――。

■インスタ投稿データを活用した「観光マップ」

写真SNS「インスタグラム」が人気です。国内での月間利用者数は2900万人(2018年9月末時点)。それにともなって全国の地方自治体でも活用が増加しています。私が代表を務める会社「パスチャー」では、インスタグラムを活用した観光振興を全国で支援しています。

このうちインスタグラムの活用に積極的な自治体のひとつが新潟市です。観光客向けに配布する観光地図を、インスタ投稿データをもとに作り直して11月に公開しました。

マップに掲載した観光スポットは、インスタグラムの投稿時に付けられるキーワードである「ハッシュタグ」から選定しました。例えば、「#新潟市」というハッシュタグのついた投稿に一緒につけられている「#新潟珈琲問屋」といった店舗名や観光スポット名を分析して、人気のスポットを見つけています。

■繁華街は若者にとって「古着のまち」だった

ハッシュタグ「#新潟市」と一緒につけられているのは、「#日本酒」や「#白山神社」など、すでに観光客向けにPRしている内容が多かったのですが、新潟市の繁華街である「#古町」と一緒に投稿されたハッシュタグを分析したところ、興味深い結果が得られました。「#古町」と一緒に投稿されるのは、古着やファッションに関わるハッシュタグだったのです。

ハッシュタグ「#古町」とともに付けられるハッシュタグとその投稿数(直近4033投稿:2018年7月時点。著者調べ)

新潟市はこれまで、「古町は古着のまち」とは積極的にPRしていませんでした。しかしインスタグラムには、特に若い女性たちの中で、「古町で古着巡りをした」という投稿や、古町で買った古着を取り入れたコーディネートの投稿などが多くありました。

インスタグラムの投稿データから、若者がどのようにまちの魅力を感じているのかを可視化することができ、新たな観光資源の発掘に繋がったと言えます。新たな魅力を発掘できれば、そこから「古着屋巡りの文化を広めるキャンペーン」のような、新しい施策を考えるきっかけにもなります。

「#新潟マップ」を通じて観光客が人気スポットに集まり、写真を撮ってインスタグラムにアップしていけば、よりリアルなまちの魅力が伝わっていくことが期待されます。

■インスタグラムで見つかった人気の「商店街」

以下はインスタグラムの投稿数にもとづいたハッシュタグ「#新潟観光」に関する人気スポットのデータです。

ハッシュタグ「#新潟観光」がついた投稿につけられた観光スポット名のハッシュタグと投稿数(直近1702投稿:2018年7月時点。著者調べ)

旅行予約サイトなどの人気スポットランキングを見ると、娯楽施設や農園などがランクインしているのに対し、インスタグラムのデータをもとにしたランキングでは、商店街が1位になりました。沼垂テラス商店街は、旧沼垂市場のレトロな長屋に新しくできた商店街で、そのおしゃれな雰囲気は“インスタ映え”するスポットになっています。

2位になった白山神社は七夕に風鈴を飾った祭りを開催しており、インスタグラムには幻想的な写真が多く投稿されていました。3位のぽんしゅ館は新潟の日本酒が飲める施設です。

最近は、「インスタ映えするかどうか」で旅行の行き先を決めるという声も聞きます。その人たちにとっての旅行の楽しみは、「帰ったら終わり」ではなく、「撮りためた写真を後日インスタグラムにアップし、共有する」というところまで続いています。「#新潟マップ」はそんな彼らのニーズにぴったりと当てはまると言えます。

■観光スポットにおける新しいインスタ活用

マップや公式ホームページを通じて観光情報を発信しても、若年層へリーチするのが難しいのは自治体の課題です。その課題を克服するPR方法として、インスタグラムの活用は全国的に広がりつつあります。

新潟市ではマップに加えて、キャンペーンサイトを立ち上げて、インスタグラムに投稿された写真を掲載しています。旅行した時にどんな写真が撮れるかのイメージも湧き、旅行のきっかけに繋がると期待しています。マップ公開から3週間たたずして「#新潟グラマー」のハッシュタグ投稿数は約1000件増の1万1400件となりました。

インスタグラムの投稿数が増えることで、新潟市を知る機会が増え、さらには観光に興味を持つ人が増えます。また、実際に訪れた人が写真を投稿すれば、さらに観光客が増加するという好循環が期待できます。インスタグラムを活用した「フォトコンテスト」などは全国各地に広がっていますが、インスタグラムを使ったPR施策は今後より増えていくのではないでしょうか。

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甲斐 優理子(かい・ゆりこ)
パスチャー代表取締役
東南アジア向けアパレルコマース事業を運営するANELAでCEOを務めた後、2016年6月に株式会社パスチャーを創業、代表取締役に就任。インスタグラムを中心としたSNSビッグデータ解析の事業を軸に、コンサルティングから実行まで各種マーケティング支援を行う。インスタグラムアカウント分析ツール「PONY」、インスタグラマー検索ツール「ROOSTER」を運営。企業のマーケター3,800人が参加するFacebookグループ「Instagramマーケティング勉強会」を主宰。テレビ、ラジオ等、出演多数。http://corp.pasture.biz/
 

山内 智史(やまうち・さとし)
株式会社パスチャー 企画戦略チーム マーケティングディレクター
マーケティングディレクターとして、大手企業から地方行政まで幅広くSNSマーケティングの企画立案~実行を担当。元地方公務員とインスタグラムマーケティングの経験を生かし、地方創生におけるインスタグラムの効果的な活用方法の追求も行う。

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(パスチャー代表取締役 甲斐 優理子、株式会社パスチャー 企画戦略チーム マーケティングディレクター 山内 智史)

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