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親の末期がんには"在宅療養"が向いている

プレジデントオンライン / 2019年2月28日 9時15分

老後に困らないベストな選択肢はなにか。各分野のプロフェッショナルに「より賢い選択肢」を聞いた。第8回は「がんvs.ボケで老衰 コストと負担はどれだけ違うか?」――。(全11回)

※本稿は、「プレジデント」(2018年11月12日号)の掲載記事を再編集したものです

■ゴールの見えない「延命治療」

がんでも認知症でも、まず家族にとって考えてほしいのが「平穏死」という視点です。平穏死とは「自然に任せる穏やかな最期」を意味します。残念ながら多くの病院では、平穏死は難しいのが現状です。治せる病気であれば、いい病院で高水準の医療を受けたほうがよい場合もありますが、高齢者の場合、現実的には極めて少ない。末期の病気など「治らない病気」が多いからです。無理に入院させたばっかりに、親を寝たきりにさせて、認知機能を奪ってしまうというケースを多く見ました。しかもそれがゴールの見えない「延命治療」の序章となっているのです。

そこで鍵となるのが「在宅療養(在宅医療と在宅介護)」です。病院では終末期になっても「延命治療」ばかりに力が入れられますが、自宅で「緩和医療」をしっかり受ければ、親自身の苦痛も軽減されます。さらに、在宅療養のほうが病院などに入院するよりもはるかに経済的という面もあります(図参照)。

■「抗がん剤をやめる」という選択肢もある

親が平穏死を迎えるために、子どもがすべきことは何でしょうか。

写真=iStock.com/Pablo_K

末期がんの場合、考えてほしいのは「抗がん剤」をやめるという選択肢があること。抗がん剤は諸刃の剣で、多少の延命効果はあっても、吐き気や嘔吐、食欲不振などさまざまな副作用があります。

在宅療養の目標は「命の質の向上」と「寿命を延ばす」ことの両立であり、残された日々を満足して過ごしてもらうことだと私は考えています。そのためには、そのときを見据えて、どのタイミングになったら抗がん剤をやめるのか、また初めから使用しないのかを親子で相談しておくことが大切です。

末期がんの場合、在宅療養が始まって、旅立つまでの平均在宅期間は1カ月半程度と“短期決戦型”です。寝たきり状態も1~2週間程度、人によっては1~2日ということもあります。これなら会社を辞めず、有給休暇で充分でしょう。末期がんは特に在宅療養に向いていると言えます。

「認知症」の場合、「施設」に入所させると、余計に大きな声を上げて暴力的になったり、被害妄想が強くなったりするケースを見かけます。認知症ケアは、施設や病院といった枠の中に閉じ込めず、五感を満たし、本人のやりたいようにさせてあげることが一番。「施設入所」でなく、うまく介護サービスを利用しながら「在宅療養」をすることをおすすめします。

認知症の在宅医療は“長期戦型”。症状の進行具合は初期から終末期まで、10~15年と長期間に及びます。在宅医や訪問看護師、ケアマネジャーと相談すれば、必ずよい方法が見つかりますので、1人で抱え込む必要はありません。

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長尾和宏(ながお・かずひろ)
裕和会理事長
長尾クリニック院長。東京医科大学卒業後、大阪大学第二内科に入局。1995年兵庫県尼崎市で開業。複数医師による365日無休の外来診療と24時間体制での在宅医療に従事。

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(長尾クリニック院長/医学博士 長尾 和宏 構成=プレジデント編集部 写真=iStock.com)

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