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取引先の怒りを鎮める「幽体離脱」の技術

プレジデントオンライン / 2019年2月26日 9時15分

写真=iStock.com/fizkes

どんな人間でも失敗はしてしまう。緊急事態に陥ったとき、どんな「屁理屈」であれば、その場を切り抜けられるのか。今回、5つのテーマで実例を収集し、作家の架神恭介さんに考察してもらいました。第1回は「大口顧客が大激怒」です――。

※本稿は、「プレジデント」(2018年12月17日号)の掲載記事を再編集したものです。

■優しい嘘も、時には社会の潤滑油

われわれの社会生活にはミスやトラブルが付き物です。ですが、皆さん。馬鹿正直に謝って損をしたことはありませんか?

今回、日本最大級のクラウドソーシング「ランサーズ」の協力も得てビジネスマン1000人にアンケートを行い、プレジデント編集部が集計。「出掛けに社長に捕まって打ち合わせに遅れたと言い張った」「目に涙を浮かべながらひたすら謝った」など、困ったときのさまざまな切り抜け術を収集しました。信じられないかもしれませんが、本記事での例はすべて実例です。

実際、正直に謝るよりも、時には優しい嘘を吐き、円満な解決を目指すべき場面もあります。ちょっとした知恵と工夫で辛いシチュエーションを切り抜けるコミュニケーション術は、社会の潤滑油としてビジネスマンには必携のスキルと言えるでしょう。

また、言い逃れの際にはあなたのキャラクターも重要です。「まあ、あいつはそういうやつだから」。周囲からそう思われていれば、遥かに言い逃れしやすくなります。幸いなことに、現代のビジネスシーンではダイバーシティが声高に叫ばれています。人種や性格、価値観などの多様性を受け入れ、広く人材を活用していこうという動きです。一昔前では変人でも今では個性で通用するのです。時代の流れを掴み、ピンチをチャンスへと変えていきましょう!

大口顧客が大激怒

■『勧進帳』に学ぶ、伝統的な手法

納期に遅れる、品質が悪い、事前の約束が守られない……。相手の期待に応えられず、顧客に怒られる場面はビジネスシーンでしばしば発生します。しかし、あなたは会社として損害賠償など払いたくないし、もちろん社内評価も落としたくありません。

正攻法は、相手の言い分をよく聞き、最も相手が激怒しているポイントを見極め、取りうる対応を検討することです。アンケートでも、

「ひたすら謝りながら、お客様の気持ちに沿うような応対をし続けていると、だんだん怒りが収まってくるので、最後には『これはクレームじゃなく意見だから』と言って気持ちよく電話を切ってくれるように持っていきます」

といった回答がありました。こういった形で解決できれば理想的ですが、しかし、正攻法だけでは場が収まりそうにないときにはテクニックを使う必要もあります。

伝統的な手法としては「怒り役」の上司を連れて行き、顧客の目の前で、顧客以上の剣幕で怒鳴り散らしてもらう、というのがあります。相手に「まあまあ、そのへんで……」と言わせれば勝ちです。これは歌舞伎などの『勧進帳』において源義経、弁慶なども用いた由緒あるテクニックです。あまりに有名な手法なので、相手も大抵「茶番を始めやがった」と思うことでしょうが、人間、たとえ茶番であれ、平身低頭する相手の頭を踏むことはなかなかできるものではありません。これは許しを請うための一種の儀式、プロセスなのです。

土下座にも同様の効果が見込めます。アンケートでも「1度目は根性がいるが、2度目からはひょいひょい土下座できるようになる」「土下座をビジネスに取り入れることで業務が大変スムーズになります」と大変好評で、ビジネスマンに愛され続けているメソッドと言えます。

■ごにょごにょと口走り、辛そうに目をつむる

また、とにかく黙っておくという手もあります。そもそも怒り狂ってる相手とまともな会話が成り立つわけがありませんので、会話をするだけ無駄という考え方もできます。あなたは何を言われてもとりあわず、常に俯いたまま、ごにょごにょと小声でよくわからないことを口走り、たまに辛そうに目をつむります。相手が怒って一通りの文句を並べている間は今日の晩ごはんのことなどを考えていてください。アンケートではこれを「幽体離脱」と表現している方もいて、「平謝りする自分」と「晩ごはんのことを考える自分」を分離させるのがストレスを軽減させるポイントとのことです。

一方、向こうからすると、一通りの文句は言ったが、相手からは異様な反応しか返ってこないし、何を言ってるのかもわからない。不気味さと不毛さが募り、相手は一応反省してるっぽく見えるので、「俺も疲れたし、言うことは言ったし、もういっか」と諦めの気持ちになってくるはずです。

相手が男性であれば綺麗な女性社員を、女性であれば若手のイケメン社員を連れていくという手もあります。人前で派手にキレ散らかすのは見苦しいものですから、異性の目があるとどうしてもブレーキが掛かります。異性の目がない女子校では、女子が思いの外、見苦しい格好をしているとよく言われますが、それと同じ理屈ですね。

■▼絶体絶命の1000人を救った名言集

顧客が激怒したとき

※以下は、クラウドソーシング「ランサーズ」を通じて収集した1000人の回答から、プレジデント編集部が選んだものです。

●以前、クレームの多いコールセンターに勤務していました。クレームの中でも一番応対に焦ってしまうのが二次クレーム(以前、別の担当者の案件だったものが何らかの原因で飛び火してしまったもの)です。以前の担当者が何の件でどのように応答していたのか、詳細が全くわからない状況でお客様がお怒りのパターンが多かったです。そんなときは、まずはお客様の怒りを収めるクールダウンに徹するのが何より大事です。お話や事情を聞くのに徹して、こちらに非がある場合は素直に謝罪し、落ち着きを感じたところでこちらからこれからどう対応するかを提案するとほぼ確実にすんなり受け入れていただけます。
●ホテルの支配人をしていたとき、夜間によくフロントで酔客がクレームをつけて大暴れすることがありました。一番簡単にそれを収める方法が私の土下座。1度目は根性がいりましたが、2度目からはひょいひょい土下座できるようになり、業務がスムーズに進んで助かりました。
●正社員だった頃、私の対応が原因で顧客が大激怒。ひたすら謝罪し倒しました。それでもなお収まりがつかず困っていたところ、上司が会社代表として土下座して解決できました。上司に申し訳なく思っていたところ「こういうときのために上司がいるんだから気にしなくてよい」と言われ、この人の部下でよかったと心底思いました。
●顧客から依頼のあった作業に対する見積もりを作成することになりました。弊社としては大きな金額である1000万円を超える案件でした。重要でミスが許されない場面で、私は見積もり時に1200万円と見積もるべきところ120万円と見積もってしまい、それが客先に出てしまい、結果受注されました。絶体絶命のピンチに、上司に叱られ社長にも叱られました。承認した上司にも責任があるということで、最終的に3名で1000万円を負担することとなりました。生活も困窮し、一時はどうなるかと思いましたが、その後、客先に事情を理解していただき、正式な金額で受注していただきました。数字は慎重に扱わなければならないと改めて深く反省した出来事です。
●数年前のことですが、取引しているお客様から1本の電話がかかってきました。「もう取引しないから……」ガチャ! このお客様は年間取引1億円の当社では大事なお客様で、当時担当をしていた後輩を呼び出し、「取引をやめると電話があったが、どういうこと?」と聞くと、「すみません、品番を間違えて1000万円分の商品を間違えて納品してしまい……」と言うのです。当社は年商3億円の会社でしたので、1億円のお客様を失うのは会社の存続にも関わることになるので、後輩を連れすぐお客様のところへ行きました。その会社の代表から「お前はいいが、こいつの話は聞かん」と言われました。しかし私が、「すみません、部下の責任はすべて私の責任です。当社が今後も生き残るには御社が必要です。ですので、今回は私が責任をとり退職をしますので、どうかそれでまずはお怒りを鎮めていただけませんでしょうか?」と言ったとき……「久々にそんなサラリーマンに会ったな。お前の生活はいいのか?」と聞かれたので、私は「会社がなくなれば結果は同じことです。私もそろそろほかの空気を吸いたかったので」と言うと「わかった、今回は全部買い取ってなかったことにしてやる。その代わり、しっかり部下を教育しろ……。お前の男気に免じて許してやる」と言ってくれました。結局、真正面からぶつかったことで無事解決しました。今ではその後輩も課長職につき、しっかり仕事をしています。

(作家 架神 恭介 写真=iStock.com)

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