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「愛情の変化」は微分方程式で理解できる

プレジデントオンライン / 2019年4月16日 9時15分

■微分積分に関係する不思議な数「ネイピア数」

金融商品の金利には「単利」と「複利」があり、複利のほうが得だ。単利は預けた元本にのみ利息がつくのに対し、複利はついた利息が元本に組み込まれ、その元利合計に新たに利息がつくからだ。

元本100万円を、年利7%の1年定期(複利)に10年預けたとする。1年後は「100万×1.07=107万円」、2年後は「107万×1.07=114万4900円」……、10年後の元利合計は約196万7000円となる。

では、100万円を同じ年利7%の1カ月複利で運用するとどうなるか。この場合は「7%÷12カ月=0.5833%」の利息が元利合計に毎月つく。ということは1カ月後は約100万5800円、2カ月後は約101万1700円……と増え、10年後は約200万9000円になる。利息がつく期間を短くすることで、複利効果が高まり預金は増える。

同じように100万円を1日複利、1時間複利、1分複利……と無限(∞)に短くしていくと、元利合計も大きくなるが、無限に増え続けるわけではない。今回の場合、201万3752円で頭打ちになる。

どうやって計算したら、その数字が出てくるのか。ここでキーになるのが「ネイピア数(e)」だ。数学者のジョン・ネイピアの名前にちなむが、ネイピアが発見したわけではなく、1614年にネイピアがつくった「対数表」を、134年後の1748年にレオンハルト・オイラーという数学者が分析してeを発見した。eは「自然対数の底」ともいい、「2.71828182845……」と無限に続く無理数であり超越数。数学定数として記号eと表される。

eの説明は非常に難解なため詳細は省くが、eは高校で習った「微分積分」に深く関わる数だ。微分とは「x分のyという割合においてxを無限小にするときの量」で、「勢い」と考えたらよい。投げたボールのスピードを思い浮かべればわかるように、位置や速度は刻々と変化する。その瞬間、瞬間の勢いが微分だ。同様に複利の期間を無限に小さくすれば、利息も刻々と変化する。そしてネイピア数eを用いることで変化する量を計算でき、「100万円×(eの0.07乗)の10乗=201万3752円」と計算される。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/jganser)

実は、身近で見られる現象のほとんどは刻々と変化するものばかりだ。そして、微分すなわち瞬間の勢いに注目することで、そうした現象をモデリングでき、それが「微分方程式」なのである。そういうと難しく思われるかもしれないが、私たちが日々実感している経験を説明できるものなのだ。

たとえば、お茶の湯温は入れたてのとき急激に下がり、次第に室温に近くなるにつれてゆっくり下がるようになる。湯温が変化する勢い(微分)が、その瞬間の勢いに比例していると考えられ、それを表す微分方程式を解くと、湯温の時間変化がネイピア数eを用いた指数曲線「y=eのx乗」になる。

スティーブン・ストロガッツの論文「恋愛と微分方程式」も、その湯温の変化の微分方程式と同じものなのだ。男女それぞれが持つ愛情の量の微分方程式を解くと、愛情の量の時間変化がやはりネイピア数eを用いた指数曲線で表される。そういうと、どんな形のグラフか頭のなかに思い浮かんではこないか。

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桜井 進
サイエンスナビゲーター
1968年生まれ。東京工業大学理学部数学科卒業、同大学大学院修了。2000年、日本で初めてのサイエンスナビゲーターとして活動を開始。『面白くて眠れなくなる数学』など著書多数。

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(サイエンスナビゲーター 桜井 進 構成=田之上 信 写真=iStock.com)

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