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1本55万「歯インプラント治療費」全明細

プレジデントオンライン / 2019年5月5日 11時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Ocskaymark)

むし歯の治療で最も気になるのは、「治療費」と「期間」について。実際の治療内容とともに、この2点について歯科医師が解説する。

■治療の相場、原価、期間を全リサーチ

「いつまで治療が続くのかわからないし、治療費がどれだけ膨らむのか不安だ。だから、歯医者さんから足が遠のいてしまう」――。

保険診療であれば、現役ビジネスパーソンの患者の負担額は、かかった医療費の3割で済む。しかし、職場で「歯科医師に数万円の自由診療をしつこく勧められて、断るのに苦労した」という話を耳にすると、不安な気持ちに襲われる。ましてや治療期間のメドがつかないのでは、仕事の算段も覚束なくなり、「それなら歯の治療よりも目先の仕事」となる。

そこで実際の治療で、どのくらいの期間と、患者負担でいかほどの費用がかかるのかを、東京のJR四ツ谷駅近くでタムラタイチ歯科診療所を開き、新宿区四谷牛込歯科医師会の理事も務めている田村太一院長に尋ねてみた。

すると「プレジデント誌の読者を想定してみました」と言いながら田村院長がシミュレーションしてくれたのが2つのケースだ。1つ目は、昔からむし歯だった奥歯の痛みが気になり始め、悪い部分を取り除いて詰め物をする40歳の女性。2つ目は、奥歯のう蝕が進行して歯根しか残っていない50歳の男性だ。症状の程度は、前者が中度で、後者は重度と言えよう。

しかし、女性の中度の症状に対する治療でも、3カ月もの期間を要する。よく見ると、初診から本来のむし歯の治療に入るまでの期間が1カ月もあって、長いようにも思える。そんな取材者の怪訝そうな表情を見た田村院長は、「治療期間も費用も、症状によってかなり変わってきます。今回のケースは綿密に治療を行った、ある意味で理想的な治療を行ったケースです」と前置きしたうえで、次のように説明する。

「初診の際の問診で患者さんの治療の目的、つまり『主訴』を把握しながら、その後の治療計画を検討します。そして口のなかの状態を確認し、必要に応じて歯垢や歯石を除去するなどのケアを行い、健康な状態に戻してから、本来の目的の治療に入ります。口のなかが不健康なままだと細菌が繁殖して、せっかく付けた詰め物やインプラントなどが長持ちしなくなるからです」

何事も急いては事を仕損じる。しかし、合点がいったのも束の間、次に費用に関する大きな“岐路”が待ち構える。「保険診療か、それとも自由診療か」の選択を迫られるのだ。言うまでもなく、自由診療は保険診療よりも高い。

■時間も金もかかる、インプラント治療

「銀歯は保険が適用されて安価なのですが、話をするのに口を開けると目立つうえに、あまり長持ちはしません。一方、自由診療でセラミックの詰め物は、本来の歯に近い色にでき、銀歯と比較して長持ちします。こうしたメリットとデメリットを正確にお伝えし、患者さんに自分の嗜好やライフスタイルに合わせて決めていただきます」

結局のところ、保険診療で銀歯を詰めた場合と、自由診療でセラミックを詰めた場合とでは、治療期間は同じ約3カ月だが、トータルの患者負担の額は後者が税込みで6万9800円のアップとなる。この差が妥当かどうかの判断は、個々人の価値観に委ねるほかないだろう。

50歳男性のケースでは、う蝕の進行度合いが象徴しているように、口のなか全体の健康状態がかなり悪いことで、そのケアに2カ月半も要し、その間に問題となった歯の抜歯を行う。その後、抜歯した歯の両隣の歯を削って土台にし、3本の歯を連ねた金属の歯を装着する「ブリッジ」を保険診療で選択すれば、トータルの治療期間は約4カ月、患者負担額は5万3670円で済む。一方、自由診療でインプラントを選ぶと、その治療期間だけで9カ月~1年強ほどかかり、自由診療分の負担額は税込みで49万4640円ほどだ。

「予算の関係でインプラントを選択肢から外される中高年のビジネスパーソンの場合、大半の方がブリッジを選ばれます。ただし、土台を作るため両脇の健康な歯も削る必要があります。そして1度削ると、そこから細菌に感染してむし歯になるリスクが高まるのです。やはり長い目で見て、どちらを選ぶかを判断することが大切でしょう」

そう語る田村院長が興味深いデータを見せてくれた。香川県歯科医師会が2015年3月に発表した「歯の健康と医療費に関する実態調査」(図参照)がそれで、20本以上歯が残っている人が1年間に医科でかかった診療費は、0~4本しか残っていない人よりも18万4474円も低いことがわかる。

いまや「人生100年時代」といわれる。ここで歯の治療に時間やお金を惜しむと、もしかして将来の大きな悔いにつながるかもしれない。意外と知られていないのだが、セラミックの詰め物やインプラントなどの自由診療であっても、医療費控除の対象となり、税金が還付されるのだ。それなら、予算のハードルも下がるというもの。よく考えて、賢い選択をしたい。

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田村太一
タムラタイチ歯科診療所 院長
1997年、昭和大学歯学部卒業。2001年、昭和大学大学院修了、歯学博士。04年、日本歯周病学会・歯周病専門医に。05年、タムラタイチ歯科診療所を開院。
 

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■▼昔からむし歯だった1本の奥歯が痛み出した40歳女性のケース

■▼う蝕で1本の奥歯がほとんどなくなった50歳男性のケース

(プレジデント編集部 伊藤 博之 撮影=石橋素幸 写真=iStock.com)

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