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人生と経営を"暴走・逆走"させない運転法

プレジデントオンライン / 2019年5月28日 9時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/leonello)

令和時代の経済や社会は、平成時代より厳しくなる。経営コンサルタントの小宮一慶氏は、「会社経営もビジネスパーソンの生き方・働き方も、『一度基本に立ち戻ることが重要』だ。それが、これまで築いてきたものを逆走・暴走させず、成功させるための鉄則だ」という――。

■令和元年、会社経営もビジネスマンの働き方も「基本に戻れ」

令和の新しい時代を迎え、気分一新という方も多いと思います。私は、新しい時代を迎えた今だからこそ、基本に立ち返るべきだと考えています。

前回のこの連載で指摘したように、平成時代の経済は、昭和時代の高度経済成長や平成最初のバブルの余韻もあり、繁栄を辛うじて維持できましたが、「成長」にはほど遠い状況でした。

令和時代の経済情勢は、高齢化の進展や財政赤字の拡大、加えて予定されている消費増税などで、これまで以上に厳しくなることが予想されます。だからこそ余計に「基本」に戻ることが大切なのです。

今回は、経営コンサルタントである私が、日頃、経営者の皆さんにお話ししている経営の基本についてご説明しましょう。これは、経営者だけでなく、ビジネスパーソンの日頃の心がけにも十分に通じる内容です。いわば、人生と経営を逆走・暴走させない乗り切り方です。ぜひご参考になさってください。

【経営とは「方向づけ、資源の最適配分、人を動かす」】

経営する上で重要なのは、「(1)方向づけ、(2)資源の最適配分、(3)人を動かす」の3つです。

(1)の「方向づけ」とは、企業として「何をやるか、やめるか」を決めることです。これが企業の命運の8割を決めると言っても過言ではありません。

(2)の「資源の最適配分」は、企業が活用するヒト・モノ・カネという資源を最適に配分することです。そして、(3)「人を動かす」ことによって組織のパフォーマンスを高めるとともに働く人を活かすのです。それぞれを、もう少し細かく説明しましょう。

(1)の「方向づけ」が企業の命運の8割を決めると述べましたが、その柱となるべきは、なんといっても「顧客第一」です。顧客の視点に立つ。それも、できれば「一番厳しい顧客の目」になって考えることです。顧客や世の中の動きを見極めることにより、商品や会社を変えていければ生き残ることができるでしょう。

ピーター・ドラッカーも「マーケティングとイノベーション」の重要性を説いています。これは、顧客の視点に立って顧客が欲しいものを見つけ出し、それを提供することと、その商品そのものやその製造プロセス、さらには組織などを革新することこそ企業が常に追求すべきことだということです。

■人生や仕事を“暴走・逆走”させない日々の暮らし方

その実現のために、経営者は毎日何をすればいいのか。

まず、ごく当たり前のことですが、毎朝、新聞に載る記事やテレビのニュースにしっかり目を通すということです。世の中の大きな動きを見きわめることなしに方向づけを行っても、うまくいくことはありません。「会社」という文字は「社会」という文字の反対ですが、社会の動きに勝てる企業はないのです。

毎日、社会の動きを丹念にとらえて、トレンド・世の中の趨勢を見きわめる。この朝の習慣こそが経営者の目を磨いてくれるのです。ネット上にニュースがあふれる今、新聞やテレビの大きなニュースをきちんとチェックすることを怠ってしまう人も少なくありません。

しかし、多くの有能な経営者はより綿密な取材で正確な記事を書いている既存メディアによる報道を確認する。その「積み重ね」の習慣を、社会の動きを見きわめる大きな原動力としているのです。

また経営者として、「素直になる」ことも大切です。松下電器創業者の松下幸之助さんは「人が成功するために一つだけ資質が必要だとすれば、それは『素直さ』だ」とおっしゃっています。経営者・社長という立場になってなお、素直かつ謙虚になって物事を見ることが大切だと私も考えます。そうした視点がないと、どうしても人間は自分の都合のいいように物事を間違ってしまうのです。

では、素直になるためにはどうしたらいいのか。常に反省する姿勢を持つことです。「自分は素直でないのではないかと」と普段からやや疑いの目を自分に向けて、反省するくらいがちょうどいいのです。「自分は勉強ができる」とほんの少しでもうぬぼれていると、もうそれ以上勉強をしなくなってしまうものです。それと同じように、「自分は素直なほうだ」と思いこんでいると、その「素直さ」が次第に曇り、自分を自分でチェックする機能が年々劣化してしまうのではないでしょうか。これでは、自分の人生や経営を逆走・暴走させてしまいかねません。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/baona)
【「資源の最適配分」で大事なのは心から褒める、公私混同しない】

(2)の「資源の最適配分」では、他の人の長所を活かすことと、公私混同しないことがポイントになります。長所を活かすとは具体的にはどういうことを指すのか。例えば、同じ構成員によるチームでも、「各人の長所を活かしてそれを集めたチーム」に対して、「凡庸なところ、ダメなところを寄せ集めたチーム」では、パフォーマンスが違うのは明らかです。プロ野球やJリーグで同じ選手を使っていても、監督が代わればパフォーマンスが変わるのはこのためです。

「監督」は長所を活かすためには、現場で活躍する部下や相手の良いところを見出さなければなりません。それなしでは、長所の活かしようがありません。これができているかどうかの判断ポイントは、「人を心から褒めることができるかどうか」だと私は考えています。

どんなに扱いづらい部下にも必ず良いところがあります。それを素直に認めて褒めることができる人が、他の人の長所を活かすことができる人なのです。

「公私混同をしない」というルールも監督者としては大事なことです。私自身、「部下が同じことをやっても許せるかどうか」という基準を持っています。お金の使い方、人の動かし方、そして時間の使い方などで、部下が同じことをやっても許せることなら、自分もやってよいと判断します。この基準を持たなければ、何事も自分の都合のいいように解釈しがちだからです。

■「基本」を体に覚え込ませてこそ無事故で生きられる

【人を動かすには「2つの覚悟」が必要だ】

仕事、それも大きな仕事をしようと思ったら、人を動かさなければなりません。これは簡単なことではありません。私は「人を動かす」ということに関しては、「2つの覚悟」が必要だと考えます。ひとつは「先頭に立つ覚悟」、もうひとつは「責任を取る覚悟」です。理屈ではなく、覚悟を持って物事に対処することが大切なのです。

とかく頭の良い人は、人は「理屈」で動いてくれるはずだという思いがあるかもしれません。でも、そんな完璧な理屈があるなら、その理屈でもって、まず自分を思うように動かせばいい。しかし、自分がそんな違和感ゼロで動ける理屈などそうそうあるはずがありません。つまり、自分すら動かない理屈で人を動かそうと思うこと自体が間違っているのです。

それでは、どうするか。

戦前の海軍のエリートを養成する海軍兵学校では、「指揮官先頭」ということが厳しく教えられました。まず、指揮官は先頭に立って行動するということです。

これを実践するには、覚悟がないとできません。嫌なこと、危ないことでも先頭に立たなければならないからです。部下がやることを何でもすべて上司でやれ、と言っているのではありません。重要な方針や危機対応は自らが先頭に立って行うということが必要なのです。

そして、もうひとつは、責任を取るということです。

指示をして、部下を動かして、その結果については自分が責任を取らなければなりません。さらには、指示をしていなくとも、自分の責任範囲については、責任を取らなければなりません。それこそがリーダーの仕事です。部下に責任を押し付けるのは最低な行為です。

私は、社員14人の会社の代表者です。このような小さな規模の会社でもときに顧客からお叱りを受けることがあります。そういう時は、私自身が顧客にお詫びさせていただくことも珍しくありません。お詫びする行為は、気分のよいものではありませんが、これもリーダーとしての仕事だと思って覚悟を決めてやっています。

■ルーティン実践すれば自分の人生や経営を逆走・暴走しなくてすむ

※写真はイメージです(写真=iStock.com/eugenesergeev)

これらの「先頭に立つ」「責任を取る」という行為は普段からやっていないと、いざというときにできません。車を運転していて「危ない」と思ったら、アクセルにあった右足をとっさにブレーキに移動させますが、その時は何も考えていないと思います。無意識です。それが習慣というものです。

普段からやっていてこそ、とっさに心と体が動くのです。そうでなければ、大事故・大惨事を起こしてしまいかねません。

ここで述べたような基本をしっかり実践すること。それが、自分の人生や経営を成功させることにつながると私は信じています。

(経営コンサルタント 小宮 一慶 写真=iStock.com)

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