"100%バカ"になる人だけが社長になれる

プレジデントオンライン / 2019年6月25日 9時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/vectorikart)

社長や役員に出世する人は、どこが違うのか。経営コンサルタントの小宮一慶氏は「人が敬遠するような仕事も率先してやり、時には先頭に立って全力で“バカになる”ことができるほど熱量の高い人は、周囲に認められ上へ上へと押し上げられる」という――。

■周囲に認められ「上へ上へと押し上げられる人」の共通点

私は社員14人の小さなコンサルティング会社の経営の他に、6社の社外役員と5社の顧問をしています。社外取締役をしている会社の中には、東証1部上場の企業もあります。また講演や研修などで多くの経営者や経営幹部に加え、幹部候補生の社員とも接します。

その際、挨拶をして名刺交換をする。場合によっては少し雑談もします。すると、ふと思うことがあります。「あ、この人は役員になるな」「むむ、この人は社長の器だな」。そして、たいていの場合、不思議とその私の「予言」は的中するのです。

職業柄、人を見るのが趣味みたいなものですから、役員になる人や社長になる人について、徐々に嗅覚が発達したのかもしれません。

【役員になれる人】

では、「役員」になる人はどんな人か。

会社のレベルによって、その基準は異なります。私が関わる会社の場合、従業員数は10数人から数万人まであり、人材の質や厚みはさまざまです。とはいえ、役員になる人は、どの会社でも「他の人よりも優れた何か」を持っているのは確かです。

彼らの共通点のひとつは「ハードワーカーである」ということ。

私が親しくしていただいた、ある大企業の常務は、有名なカリスマ経営者から30代、40代に相当鍛えられたそうです。当時は、夜中に懸案の仕事に関して自宅の電話にかかかってくるのは日常茶飯事で、場合によっては、翌朝までに調べておくようにと非情な命令を下されことも一度や二度ではなかったそうです。

そのカリスマ経営者はとにかく仕事にいちずで、風呂に入っても食事をしていても会社のことをずっと考えているタイプだったため、深夜、本人が風呂から出た直後に電話をしてきたこともあったそうです。この常務は「あの頃、いや応なく鍛えられたことが結果的に今日の自分につながっているのかもしれません」と話してくれました。

私は長時間労働がよいことだとは思いません。ただし、体力のある若い頃に優秀な経営者や先輩、顧客などから鍛えられたり、ハードワークの場を与えられたりする経験はえがたいものです。誰でも体験できることではありません。

ハードワークにより、ビジネスパーソンに必要な「基礎力」である、「思考力」と「実行力」が鍛えられるのは確かです。そうした経験を「やらされる」苦痛ではなく、「やらせてもらえる」糧として生かすことができれば、それはいずれ血肉となり、大きな収穫となるはずです。

■ベタな「サムライ」に扮装してスーパー店頭に立った大企業の役員

将来的に役員レベルにまでのぼりつめる人には、「若い時の苦労は買ってでもせよ」を地でいくハードワーカーが多いのですが、共通点はそれだけではありません。

彼らは「一歩踏み込む力」が他の誰よりも格段に強いのです。与えられた仕事を一生懸命やるだけで満足するのではなく、何か自分なりのプラスαができないか考えをめぐらします。「これでいい」と考えずに、さらに一歩踏み込む。それを徹底・習慣化しているのです。

例えば、ある大企業の役員は、家庭生活製品の部門を統括していました。

この役員は、地方のスーパーマーケットなどで、自身がちょんまげに裃(かみしも)を着けた侍の格好をして、その生活製品を店頭で販売したそうです。地方だと、「大企業の偉いさん」が侍の格好をして店頭に立つと新聞やテレビで珍しがって報道するので、この会社にとってもスーパーにとってもメリットをもたらすのです。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/alphabetMN)

「侍の格好をして店頭販売をしていたら、小学生の女の子から『おじちゃん、リストラされたの』と言われちゃいました」

と、役員は苦笑しながらも、まんざらではない顔でした。他の人はしない、やらない。そんなことを買って出て実行する。時には全力でバカになってみる。そんな「一歩踏み込み、突き抜ける力」が過剰なほどにあるおかげで他の人とパフォーマンスで大きな違いが出るのです。「やらなくていいことまで一歩踏み込んでやる」。このことがトップリーダーになるべき人の必要条件であると私は思います。

自ら額に汗して働いて出世する人がいる一方で、ラクして世渡りする人も少なくありません。例えば、オーナー系の会社で、社長の判断で「息子だから・娘だから」という理由だけで役員になる人たちがいます。それらの人の中にもハードワーカーがいないわけではありませんが、総じて働く時の「熱量」に欠け、「この人と仕事をしたい」という部下は現れにくい。周りの人がその存在を認め、上へ上へと押し上げようとしないと、役員など経営幹部にまで出世することは至難の業です。

【社長になれる人】

社長になる人には、「役員になる人」の条件に加えて次の5つの特徴があると思っています。

一つは、「全体を見る力」です。一部の部署に偏ることなく、全社に目配せできること。これはなかなかできることではありません。前出の役員の仕事も責任重大ですが、まだ「自分が統括する部門の代表」としての色合いが残る。しかし、社長になるとそれは許されません。個別最適の集合体は、必ずしも全体最適ではないのです。全体をベストパフォーマンスにできる人ことこそ、社長の器と言えるでしょう。

二つ目は「人間観」です。人を見る目と、人の気持ちがわかることです。組織のトップである経営者の最大の仕事は働く人をやる気にさせて、人を動かすこと。そのためには、人物を見極める洞察力がないとできません。

■素直で謙虚、ときどきバカになれる人が社長になれる

三つ目は「衆知を集める」ということです。つまり、独断しないこと。多くの人の意見を素直に謙虚に聞くことができるかどうかです。ただし、ここで大切なことは、聞く前に自分の「仮説」を持っていることです。「衆知を集める」と言っても、部下の話をただ集約するだけでは不十分です。まず、自分の考えを持ち、その「仮説」を元に部下の話や外部の意見を参考にして検証をすることが必要なのです。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Barks_japan)

四つ目は「決めたことは徹底してやる、やらせる」ということです。どんな組織でも失敗することはありますが、中途半端にならず、やると決めたら徹底してやる。そのことで目標に速く到達するというメリットもありますが、仮に失敗してもその原因や本質が見えてくるのです。

そして最後、五つ目に必要なのは「素直である」ということです。人の上に立つ人ほど、素直で謙虚でなければなりません。でないと、部下はその胸の内を明かしてくれませんし、こちらを信頼してくれません。

自分の人間としての基本的な考え方やバックボーンを持ちながらも、もしかしたらそれが間違っているかもしれないと思って、素直に謙虚に、検証・反省をしていける人がトップにふさわしいと私は考えています。

以上、ここまで述べたことは一朝一夕では身につきません。日々のルーティーンの仕事をおろそかにせず、常に学ぶという姿勢を維持する心構えが自分を大きく育ててくれるのです。

(経営コンサルタント 小宮 一慶 写真=iStock.com)

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