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上昇志向が薄い職場をどう活性化させるか

プレジデントオンライン / 2019年6月26日 11時15分

社員の意識改革を目指してセミナーを開催しても、なかなか参加者が集まらない。自主参加制だからか、それともゆるキャリ志向の人が多いからか──。悩む相談者さんに、サンスターグループ執行役員の鈴木久美子さんが、原因と解決法をわかりやすく解説してくれました。
◆今回のお悩み
セミナーを開催しても自主的な参加者が集まりません
私は保険会社に勤務しており、転職して1年目です。現在、本来の業務とは別に社内の有志によるネットワークに参加し、「文化の変革の推進」「ネットワーキングの推進」「女性のキャリア開発支援」「ビジネス価値の創出」を柱に、推進委員として活動しています。
出身は東京ですが、前職では全国に転勤し、主に都市圏で働いてきました。現在の勤務地は九州の地方都市であり、同僚のキャリアアップ志向や仕事に対するモチベーションに、今までとは違うものを感じてきました。
そこで、キャリアアップやダイバーシティについて意識改革を図りたいと考え、セミナーを企画開催しています。しかし、任意参加だとなかなか思うように人が集まらず悩んでいます。
地元採用の地域限定社員が多いからかもしれませんが、私としては、一緒に働く社員の皆さんに広い視野も持ってもらいたいと思っています。興味がない人に無理強いするわけにもいきませんし、何かいいアドバイスがありましたらぜひご教示いただけないでしょうか。(41歳・保険会社勤務)

■まずは皆の学びたいテーマを探ってみて

有志のネットワークチームで自主的にセミナーを開催されているのは、すばらしいことだと思います。でも、主催者には「人が集まらない」という悩みがつきもの。私も広報としてたびたび記者発表会を開催してきましたが、最初は「誰も来なかったらどうしよう」と不安でいっぱいだったものです。

このニュースは記者さんを集めて紹介する価値があるのか、わざわざ足を運んでくれた人にそれだけのメリットを提供できるのか、本番まで何度も自分に問い直していました。広報担当になった当時は来場者も少なめでしたが、そのたびに工夫して、何度も開催していくうちに段々と人が増えていきました。

相談者さんは、セミナーのテーマとして「文化の変革の推進」などを柱にされているそうですが、もしかしたら社員の皆さんが求めているのは違うテーマなのかもしれません。確かに、相談者さんが挙げたテーマは、どれも企業の今後にとって重要なものです。ただ、現状を伺うと、社員の方々が学びたいこととは少し距離があるのかも? と思いました。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/metamorworks)

まずは第1ステップとして、皆さんのニーズを探ることから始めてみてはどうでしょうか。上司や同僚と積極的にコミュニケーションをとって、今知りたいことや学びたいことについて率直な意見を聞いてみてください。その上で、皆のニーズとご自身の目標が重なる部分を探していきましょう。きっと、次のセミナーのテーマが見えてくるはずです。

ニーズを探った結果、相談者さんの志とはまったく違う結果が出るかもしれません。だからと言ってあきらめないでほしいのです。身近なテーマから始めて、少しずつ意識を改革する方向へ導いていくやり方もあります。いずれにしても、意識改革は時間がかかるもの。一気に進めようとしない、上から目線にならない、ただし当初の志はしっかり持ち続ける。この3点を大事にして、社員の皆さんに近い場所から始めてみていただければと思います。

■地元採用が多い会社の意外な強み

テーマのリサーチと同時に、サポーター探しも進めましょう。自主的な参加者を集めるには信頼関係も重要です。すでに有志がいるということですから、その人たちと密にコミュニケーションをとりながら、上司や同僚とも信頼関係を築いていってください。「そのテーマ面白そうだね」「あなたが主催するなら行く」「誰か誘ってみるよ」などと言ってくれる人たちを増やしていくのです。

相談者さんは転職1年目ということですから、周囲との信頼関係という面ではまだ発展途上ではないでしょうか。根回しのようで面倒かもしれませんが、これはセミナー主催者に絶対必要なスキル。有志の助けも借りながら、ぜひサポーターの輪を広げていってください。

第2ステップはテーマの決定です。リサーチ結果を反映することが大事ですが、個人的には「ビジネス価値の創出」なら皆さんのニーズを取り入れやすいのではと思いました。地元採用の社員が多いということは、その地域ならではのビジネスを見いだせる可能性が高いということ。

昇進を目指すという意味でのキャリアアップ志向はなくても、自分を成長させながら長く働いていきたいという人は少なくないはずです。中には、会社や自分の力を地域に還元したいという人もいるでしょう。保険会社の社会的役割を考えても、地域に根差したビジネスというテーマは、多くの社員の興味を引くのではないでしょうか。

3つ目のステップは、セミナーの中身の決定です。外部講師による講演にするか、社員同士の勉強会にするか、いずれにしてもキラーコンテンツは必須。皆が自主的に参加したくなる仕掛け、参加してよかったと思ってもらえる仕掛けを考えてみてください。

自主参加制である以上、もちろん参加しない人もいるでしょう。その中には、相談者さんから見てモチベーションが低い人もいるかもしれません。でも、人によって意欲に差があるのは当然のこと。そこは人それぞれですから、私の場合は変えさせようとするのではなく、「何かきっかけを作ってあげられたら」と思うようにしています。

■長期的視点をもって「継続」を大切に

私の周りにも、実力はあるのに意欲の面で物足りなさを感じさせる人がいます。少し視点を変えるだけで大きく成長できるのに、もったいないなぁと思いますね。そんな時は、こちらの期待を知ってもらうために声をかけたり、セミナーに誘ったりしています。経験から言えば、社外の人やカリスマ的な人の講演を聞いてもらうと、意識が変わることが多いように思います。

そして最後のステップは「実施」です。これが終わったら、例え出席者が少なくてもあきらめず、また第1ステップから繰り返してください。意識改革を目的としたセミナーで、最も大事なのは「続けること」です。人数を増やすことを目標にせず、質を追求していきましょう。続けるうちに、きっと「あのセミナーいいね」と言ってくれる人が増えていくはずです。

私は1年ほど前から、CSR/CSVの考え方を社内に広めようと活動を続けています。始めたきっかけは、今後は社会課題の解決に取り組まない企業は生き残れないだろうと危機感を抱いたから。親しみやすいパンフレットを製作し、これを使って部署ごとにワークショップを実施してもらっていますが、なかなか思うように広まりません。それでも、危機感に対しては賛同者が増えてきた実感があります。今後も、長期的視点をもって取り組んでいくつもりです。

ある考え方を人にのみ込ませ、行動に移させるというのは大変なこと。人の意識は1回や2回のセミナーでは変わりません。すぐに結果が出るものではないので、1回ごとに一喜一憂する必要はないと思います。つらいときは有志の皆さんや同僚に話して、1人で抱え込まないようにしましょう。そして今の志を忘れずに、このすばらしい取り組みをぜひ続けてください。

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鈴木 久美子(すずき・くみこ)
サンスターグループ コーポレートマネジメント アジア-日本ブロック執行役員
1983年に短大を卒業後、サンスター入社。人事、総務、広報などスタッフ部門に携わる。2018年より現職。現在、法政大学大学院キャリアデザイン学研究科にて、個人がよりよいキャリアを築くためのプロセスを研究中。

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(サンスターグループ コーポレートマネジメント アジア-日本ブロック執行役員 鈴木 久美子 写真=iStock.com 辻村洋子=構成)

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