悠仁様も通った国立小学校に受かる子の親
プレジデントオンライン / 2019年7月13日 11時15分
■全国に70校しかない国立小学校とはどんな学校か
国立小学校とは、国立教育大学や国立大学教育学部の付属小学校のこと。2018年度時点で全国に70校ある。全小学校の0.35%と、圧倒的に少ない。新たな教育の実験の場、教員を志望する大学生の研修の場として設立されており、そのため研究発表会などが頻繁に開催される。
ペーパーテスト、行動観察、面接などによる入学試験があり、1、2回の抽選がある学校も多い。受験倍率は数十倍という狭き門だ。
学費は公立同様で無料。にもかかわらず、質の高い教育が受けられる環境が整っているのが国立小学校の魅力だと、小学校受験のトレンドにも詳しい、フォレスト幼児教室の武田澄子室長は語る。
「新しい教育技術を研究し、公立小学校のお手本となることが国立小学校の目的。当然、公立小の教師や教育学部の大学生の指導的な役割を果たせるベテランで指導力の高い教師が多い。教科担任制を採っている学校も多く、各分野のオーソリティーともいえる先生が大勢います。加えて子供たちも入試という選別を経ているので、基本的に学力が高くみな落ち着いています。公立小学校でよく問題となる学級崩壊、といった心配がありません」
また、教育実験校という位置づけなので、体験学習や外国語教育、いじめ対策など、実験段階にある最先端の教育方法が授業に積極的に取り入れられているのも魅力の一つだ。
「児童の親の学歴が高く、教育に対する意識も高い点では私立小学校と同様ですね。子供だけでなく、親同士も他の保護者との関わりの中で、いろいろな刺激を受けることもできるんです」
■PTA活動が活発で共働き家庭だと有休をすぐ使い切るケースも
だが、一方でデメリットもある。国立小学校の数自体が少ないため、近所に存在することは稀。電車やバスで通うケースが多く、通学に時間とお金がかかる。家の近所に同級生もいない。
また、学校行事などに親が駆り出される機会が多く、PTA活動も活発だ。共働き家庭だと1学期で有給休暇を使い切ってしまうケースもあるという。
武田室長は、さらに次のような注意点を指摘する。
「ベテラン教師が多いので、みな自分独自の授業を行う傾向があります。教科書を一切使わない先生や、宿題を出さない先生も。国立に子供を通わせる親御さんの中には『担任が替わると学校が替わったようだ』という人もいます。当然、わが子との相性の当たり外れがあるんです。また進学指導も私立には及びません。低学年のうちは成績表もない学校もあり、わが子がどのレベルにいるかもわかりません。実験的な授業が多いために、教科書を使った勉強は家庭で、ということも。結果的に、塾に通わせるなど親のフォローが不可欠です」
■付属中学校への内部進学できる7割に入るよう1年生から通塾も
双子を公立小と国立小に通わせているある母親は、「宿題がまったくなく、教科書どおりに進まない国立よりも、むしろ公立のほうがしっかり勉強させてくれています」と言う。
また、付属の中学や高校への内部進学には定員があり、全員が上がれないというのも国立小学校の特徴だ。
とある国立小学校の例だが、付属中学校に内部進学できるのは全体の7割。残りの3割に入らないよう、1年生から通塾させる家庭が多いという。また、内部進学できたとしても、中学受験で入学してくる偏差値の高い生徒と、今度は高校進学を競うことになる。そのあたりの覚悟が、国立小学校受験には必要なようだ。
そして、わが子を受験させる親としてもっとも頭が痛いのは、国立小学校受験には抽選があるということ。せっかく受験準備をしても努力が必ず報われるというわけではなく、私立を併願しないかぎり、抽選に外れれば公立に行くことになる。このあたりのリスクも十分に頭に入れておく必要がありそうだ。
■学校が求める「話を聞ける子」「やりぬく子」「ルール守る子」
前出の武田室長は、国立小学校が求める子供像についてこう語る。
「結局、私立も国立も求めている子供のタイプは同じ。『人の話をきちんと聞ける』『集中力があり、最後まであきらめずに物事をやりぬける』『TPOをわきまえ、ルールを守れる』といったポイントが評価されます」
加えて「人の目を見て挨拶ができる」「待てる」「人に迷惑をかけない」「社会性がある」「自主性・積極性がある」「好奇心旺盛」なども合格のポイントだ。
国立小学校は教育実験校であるため、新しい教育方法を実験的に行い、児童の反応を見る必要がある。そのため積極的に授業に参加し、手を挙げて発言する児童が望ましい。
また、教育大学からやってくる教育実習生も多いので、指導力不足の若い実習生の話も静かに聞ける子供でなければならない。時間をかけて電車通学する場合、公共交通機関内でのルールやマナーを守る力も必要だ。
「人前できちんと話せる力も必要ですね。参観者の多い研究授業で発表する機会も多いですし、電車の中で突発的な出来事が起こったときに、ちゃんと対応できる力にもつながります。ただ、ご家庭でこういうことをしっかりとしつけられている子供だとしても、そこは5歳、6歳のお子さんですから、試験会場の雰囲気にのみ込まれてしまうこともあります。場慣れするには練習も必要です」
■国立小学校に合格する子の親に共通する特徴
では、国立合格組に共通する親の特徴というのは何か。
「子供を塾に通わせると、周りの親御さんから様々な情報を聞く機会が増えます。大手の塾には、他のお母さまとお話ししないよう指導が入るところもあると聞きますが、たくさんの情報に惑わされず、うちはうち、とぶれないことが大切です。また、そういう親御さんは、情報の取捨選択がお上手ですね」
目先の結果に一喜一憂せず、子供のできないことよりできることに目を向けられる親というのも、合格組の共通点だと武田室長は言う。
■「親の半分ぐらいが共働き、という印象」
また、国立小学校に子供を通わせる多くの母親から「思った以上に共働きが多い」「親の半分ぐらいが共働き、という印象」という声が聞かれたという。
「以前は『国立に子供を通わせているのに、どうして働いているの?』みたいな空気がありました。学校行事など親の出番も多いですから。でも最近は共働きの親同士が協力をしあったり、おじいちゃん、おばあちゃんの協力を得ながら仕事を続けるお母さんが増えています」
専業主婦の母親主導で、塾にも通わせ、おうちでもお勉強という、従来の小学校受験組とはちょっと違った家族像が垣間見える。
「どうせ将来は高校・大学を受験するのだから、私立小ではなく、国立小に通わせながら塾に行かせたほうが経済的にもメリットがある、という合理的な判断で国立を志望する親御さんもけっこういます。お母さんではなく、お父さんが国立志望というケースも少なくありません」
国立小学校に娘を通わせる、ある母親は、「最初は公立に入れるつもりでいましたが、私立受験組のお母さんと知り合う機会があり、そのあまりの教育熱心さに刺激を受けて受験を考えるようになりました。でも、私も働いていたので、同じようにはできなくて……。結果、抽選もあって、ダメでもともとの国立を受験させることにしたんです」と語る。
子供にはよりよい小学校生活を送ってほしいが、プレッシャーをかけすぎるのもイヤ。費用負担も無理のない程度に抑えたいという、バランスの取れた考えの親が、国立合格組には多いようだ。
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有名私立・国立小学校受験「フォレスト幼児教室」室長
緻密なデータ分析と情報収集に基づいた指導によって、毎年、多くの受験生を有名私立小学校に合格させるカリスマ指導者。著書に『この一冊で小学校受験のすべてがわかる!』「有名小学校合格請負シリーズ」など。
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■国立小学校のいい点悪い点、受かる&受からない子・親の特徴
▼国立小学校のメリット
先生の指導力が高い
教科担任制を採っていることが多い
新しい授業法で学べる
公立に比べて子供たちの学力が高い
公立に比べて親の学歴が高い
いじめ対策の研究も
▼国立小学校のデメリット
通学に時間とお金がかかる
同級生が近所にいない
兄弟姉妹が別の学校になることも
教科書の内容が終わらないことがある
家庭での学習フォローが必要で、塾代がかかる
親も協力する行事が多い
PTA活動が多い(役員も大変)
私立に比べると校舎が古い、暗い、暑い(寒い)
働いている親は、1学期で有休を使いきることも
▼受かる子の親
情報収集力がある
ダメなら公立でも、という余裕がある
周囲に惑わされない
▼受かる子
人の話が聞ける
最後まであきらめない
人の目を見て挨拶ができる
待てる
人に迷惑をかけない
社会性がある
自主性・積極性がある
好奇心旺盛
▼受からない子の親
目先の結果に一喜一憂する
塾の先生やママ友の言葉に過敏
子供のできないことに怒る
子供の話を聞かない
本番が近づくにつれカリカリしてくる
▼受からない子
落ち着きがない
言語能力が育っていない
反応が鈍い
すぐに隣の子にちょっかいを出す
TPOがわきまえられない
ルールを守れない
(ジャーナリスト 田中 義厚 文=田中 義厚 イラストレーション=田中 海帆)
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