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汗だく運動バカが難関中学に合格するワケ

プレジデントオンライン / 2019年7月28日 11時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/OkinawaPottery)

「二兎を追う者は一兎をも得ず」ということわざがある。しかし現実には、二兎を追って二兎を得ることは可能だ。中学受験塾を主宰する矢野耕平氏は「小6まで習い事と受験勉強を両立させ、見事難関校に合格する子供には、ある共通点がある」という――。

■モーレツ習い事少年少女が中学受験で成功する理由

夏休みに入った。水泳、ピアノ、サッカー、野球……。そうした習い事に熱中する小学生も多いだろう。一方、中学受験を予定している小学生にとって夏休みは大事な時期だ。連日塾に通っている子供も多い。そのため中学受験生の保護者は、「習い事をどう整理するか」という悩みを抱えるようになる。

中学受験の進学塾に通いはじめる小4、小5になると、習い事をやめるという家庭は多い。しかし、せっかく時間をかけて身に付けた「技芸」の研さんをいったん停止することにはリスクがある。

ピアノを例に挙げると、1日ピアノの練習をしないと演奏レベルが3日~7日程度後退するといわれる。すなわち、中学受験のために半年間ピアノを弾かないとなると、中学受験終了後にはピアノの腕前が1年半~3年半前に戻ってしまうことを意味する。

中学受験と習い事は両立できないのだろうか。わたしの経営する中学受験専門塾の卒業生や保護者に取材した結果を基に考察していきたい。

■たった5カ月の受験勉強で有名私大付属中に合格した野球少年

教え子の中に、小6の9月に中学受験塾に通い始め、たった5カ月間の勉強でG-MARCH付属校のひとつに合格した男子がいる。中学受験勉強スタートの時期は、小4から約3年間をかけて取り組む子たちが大半だ。小6の9月というと、4教科の基本の単元習得を終えて、志望校の過去問に取り組み始める時期だ。

この時期から塾に通っても、合格する可能性はかなり低い。彼はどうしてこんなに遅いタイミングで受験勉強を開始したのか。改めてその点をたずねてみると、こんな答えだった。

「ぼくはずっと少年野球チームに入っていたのですが、大会が一区切りして周囲を見ると多くの友だちが中学受験を目指していたんです。だったら、自分もやってみるかなあと思い、塾に通い始めました」

周囲は入試直前期で切羽詰まって受験勉強に打ち込んでいるタイミング。そんな中、なんとも「牧歌的」と形容したくなる動機ではあるが、担当した講師によると、その彼は楽しそうに受験勉強に取り組み、なおかつ、授業での集中力は抜群だったという。

実は地元で彼はちょっとした「有名人」だった。少年野球では投手として地元の選抜チームに抜擢され大活躍していた。高いレベルで野球に没頭してきたからこそ、彼は受験勉強においても同じ気持ちで取り組めたのだろう。また、彼は「入試本番は全く緊張しなかった」と笑う。

「野球の試合のほうがよっぽど緊張しますよ。打たれてしまったら自分一人の問題では片付かなくなりますし。それを考えると、(合否結果を自分ひとりが背負う)中学入試はラクでしたね」

なるほど、彼は少年野球を通じて、本番で存分に己の力を発揮できる「度胸」を涵養(かんよう)したのだ。

■スキマ時間を有効に活用して準御三家に受かったバレエ女子

「先生、わたし受験のためにバレエもバトンもやめないからね。もしやめたら絶対に成績が下がる気がするから!」

6年生の春、わたしに向かって「元気」いっぱいにこんな宣言をした女の子もいた。わたしは習い事をセーブするように告知するつもりはなかったが、これは彼女なりのけん制だったのだろう。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Nikola Stojadinovic)

月・水・金・日に塾に通い、火・土はバレエ、木はバトントワリングを習っていた。そして、6年生の12月にバレエのコンクールの主役に抜擢され、中学入試間際まで忙しくしていた。志望校の試験日は2月1日から始まる。1カ月前まで勉強以外のことでかなり時間を割いていたわけだ。

試験の結果はどうだったか。彼女は自分の「持ち偏差値」を上回る複数の女子校に見事合格し、いまは御三家に次ぐレベルの女子進学校で学校生活を送っている。

中学生になった彼女にあの「宣言」の真意をたずねてみた。

「だって、バレエもバトンも奪われたら、発散する場所がなくなっちゃうし、それらをやめて空き時間ができたとしても、その分勉強をがんばれる気がしなかったんですよね」

■習い事も勉強も試験も「楽しむ」ことができる

彼女の母親は当時の様子を懐かしそうに語る。

「習い事に移動する途中でファミレスに寄って宿題をしたり、駅のコンコースを歩いているときには教材を見ていたりしましたね」

ほんのわずかなスキマ時間があれば、そこを学習時間に充てていたのだ。かなり慌ただしかったはずだが、彼女が宿題を忘れたことは一度もなかった。彼女は2月1日からの数日間、連日塾に通い勉強に打ち込んでいたが、いつもニコニコと楽しそうに学んでいる姿が印象的だった。

「だってバレエのコンクールのほうが入試の何倍も緊張しますよ。だから、中学入試は精神的にも余裕がありましたね」

そういえば、彼女は科目試験のあとに「面接」を課す女子校を受験したが、「面接」で緊張しなかったか聞いてみると、ただ一言「楽しかった」と笑っていたことをわたしは思い出した。

■どうすれば中学受験と習い事は「両立」できるのか

中学受験のために「好きな習い事」を無理やりストップしても逆効果になることがある。

実際、わたしは習い事をやめた途端、顔からみるみる精気がなくなり、成績も低迷し始めたケースを何度か見ている。それに引き換え、結果的に合格をゲットする「モーレツ習い事少年少女」は塾でも目を輝かせているという共通点がある。

6年の夏前まで少年野球に打ち込んだ後、本格的に受験対策を始めた男の子は、都内にある早稲田大学の系列中学校に合格、進学した。

「受験勉強のために無理やり野球を辞めさせられたら、気分転換の時間が失われてしまって、かえってストレスがたまったと思います」

モーレツ少年少女たちは勉強時間が限られてしまうこと自体にストレスを感じることはない。かえって、その限られた時間を目いっぱい活用しようという気概にあふれている。

塾通いの日以外は、毎日シンクロナイズドスイミングの選手としてハードな練習を積んでいた女の子は、プールまで向かう車や電車の中でも黙々と勉強に取り組んでいたという。その彼女はやはり「持ち偏差値」を大きく上回るG-MARCHの付属校に合格をした。スキマの時間とはいえ、「ちりも積もれば山となる」。コツコツとした努力によって大きな実を結んだのである。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/paylessimages)

■「誰かにやらされている」感覚など一切持っていない

ここまで読んで、「では、わが子も中学受験と習い事を両立させよう」と考えた保護者がいるかもしれない。しかし、気をつけなければいけないことがある。

それは、ここで挙げた子どもたちは、「高いレベルで習い事に打ち込む姿勢」と「真面目な性格」の両面を併せ持っているということだ。そして、習い事であれ、中学受験であれ、「誰かにやらされている」感覚など一切持っていない。自分の好きな「習い事」、自分のための「中学受験」という意識がある。彼ら彼女たちに一脈通じている性質はそういうところだ。

だから、中学受験のために習い事を整理すべきかどうかは、わが子の習い事に取り組む姿勢や性格面を考慮したうえで、慎重に判断してほしい。

(中学受験専門塾スタジオキャンパス代表 矢野 耕平 写真=iStock.com)

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