日本がデフレで成長できない原因は「消費税」だ
プレジデントオンライン / 2019年10月14日 11時15分
■高校生レベルでMMTを解説しました
消費税が10%になって増える税収は約5.6兆円と試算されている。その半分は、国債の返済に充てられる予定だ。財務省がいう“国の借金”は1100兆円超。財政健全化が叫ばれる一方で、景気の悪化が心配されている。
「デフレ圧力は今後さらに強まる可能性が高い。日本の長期デフレは、1997年の消費増税と、その後の政府支出の抑制が主たる原因。このままでは“失われた20年”が“失われた30年”になるのは確実でしょう」
そう危惧するのは『奇跡の経済教室』シリーズがベストセラーとなった中野剛志氏だ。本シリーズは、夏の参院選でも話題になった現代貨幣理論(MMT)をやさしく解説したことで注目された。
中野氏が東京大学を卒業して通商産業省(当時)に入省したのはデフレに突入する直前の96年。規制緩和などの政策に疑問を抱いたのは入省前だという。
「新自由主義に代表される主流派経済学はインフレばかり懸念しているから、日本経済の実態とは合っていないのではないか。そこに気づいて、現実的な経済理論を模索しはじめました。その意味では『奇跡の経済教室』を書くまでに四半世紀かかっています」
■経済政策を誤ったのは、“思想決定説”と“政治決定説”が絡み合ったせい
中野氏は2005年にエディンバラ大学大学院から博士号を取得。専攻は政治思想だった。
「インフレを懸念する主流派経済学を勉強したエリートたちが経済政策を立案するから、デフレになるというのが“思想決定説”。一方で、お金の価値が下がるインフレを嫌う富裕な人たちが政策決定に圧力をかけるから、デフレになるというのが“政治決定説”。30年近く経済政策を誤ったのは、“思想決定説”と“政治決定説”が絡み合ったせいだと私は見ています」
その中野氏が支持するのがMMTだ。MMTは「通貨発行権のある政府にデフォルトリスクはまったくない」という主張だ。
通貨を発行できる政府は、インフレ悪化さえ注意すれば、いくらでも国債を発行してかまわない。日本のようなデフレ状況なら、景気回復のためにどんどん財政出動してよいことになる。つまり、増税で景気悪化を招いてまで、財政健全化を急ぐ必要はない、というのだ。
「本シリーズは、高校生にもわかるレベルでMMTを解説しました。一般の方々が理解してくれたら、選挙などの政治参加で、誤った経済政策を正してくれると期待したからです。エリートたちに理解させるのはもう諦めましたから」
増税デフレが確認されたとき、MMTの注目度はさらに高まるかもしれない。
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評論家
1971年、神奈川県生まれ。元京都大学大学院准教授。東京大学卒業後、通商産業省に入省。エディンバラ大学大学院にて博士号取得。
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ビジネス分野を中心に、雑誌記事の執筆や単行本編集を手がけるフリーランス集団。特に経営者の著書で多く実績が認められている。
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(Top Communication 撮影=研壁秀俊)
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