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元TBSプロデューサー「退社は出世」と胸張る訳

プレジデントオンライン / 2019年10月15日 6時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tuaindeed

「さんまのスーパーからくりTV」など数々の人気番組でプロデューサーを務めた角田陽一郎氏は、3年前、46歳のときにTBSを退社した。なぜ安定した地位を捨ててしまったのか。角田氏は「閉鎖的なマスコミの世界に耐えられなかった。僕は、枠組みから抜け出すことを“出世”と考える」という——。

※本稿は、角田陽一郎『「中の人」から「外の人」へ 出世のススメ』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。

■マスメディアは「井戸」だ

僕は長年、TBSテレビで「さんまのスーパーからくりTV」や「中居正広の金スマ」「EXILE魂」「オトナの!」といったバラエティ番組を作ってきました。なので、現在名乗っている「バラエティプロデューサー」という肩書を、バラエティ番組のプロデューサーだからだと思われるかもしれませんが、実は違います。バラエティの本来の意味である「いろいろやる」という意味でのプロデューサーです。そして、いろいろやるために2016年末、22年9カ月在籍した会社を退職しました。

改めて思います。テレビ、マスコミ、広告業界、芸能界は「井戸」だと。マス(大衆)メディアなわけですから、外からの情報とは常に交流しているのですが、すごく閉鎖的で、井戸の中の論理で物事が動いていきます。

例えば番組の会議。冒頭で出席者(プロデューサー、ディレクター、構成作家、AD=アシスタントディレクター)がチェックするのは、各局の視聴率が書いてある毎日の視聴率表です。それを一緒に見ながら喧々囂々(けんけんごうごう)、議論します。

「今、この局の○○って番組、人気あるなー」
「この××さん、よく出てるなー」
「なんかグルメもの、数字高いですね」

その分析は鋭く、傾聴に値します。ただ、「自分たちの番組で何やろう?」という議論になると、視聴率表の中から視聴率を取りそうなモノコトを探し始めるのです。

■ぴったんこカンカンのカエルはテレビマンそのもの

テレビを見ていて思いませんか?「どこも同じような人が同じようなコトしてる」と。だって、そうなるように「中の人」は作っています。だから既視感を与えてしまう。

昼夜おもしろい番組を作るために、テレビマンは死に物狂いで働いています。でも、テレビという井戸が閉鎖的で、その中のルールは特殊で、井戸の外は中とは全然違う世界だと知らずに、みんな死に物狂いで働いているカエルさんです。

TBSの人気番組「ぴったんこカンカン」のキャラクター「ぴったんこカエル」は「カエルの王様」です。このキャラクターは、僕の尊敬するバラエティ番組の師匠が作り、そのカブリ物には師匠本人が入っていました。当時の僕は何気なく、「キャラはカエルなんだなー」と思っただけでしたが、組織から外に出て思うのです。あのカエルはテレビという井戸で働く「中の人」のメタファーだったのだと。

僕もバリバリの「井戸生まれのカエル」でした。ただ、時々、井戸の外の情報も入ってきます。好奇心旺盛の僕は、外の情報を見聞きしながら、それを体感したい気持ちを抑えることができなかった。そして、井戸の外に出ました。46歳の「出世」の決心です。

■新年の抱負「日本人をやめよう」

僕が本格的に退社を意識し始めたのは退職した年の正月です。新年が始まる頃というのは、柄にもなく抱負とかを考えたりしますよね。僕はその年の正月、ふとこう思ったのです。

「日本人をやめよう」

続いて、こうも思ったのです。

「では、僕は何人か?」

少なくとも大地と空気がないと生きていけないので、宇宙空間で生きる者ではない。「なら地球人はやめられないな」。てことで、その日から決めました。

「自分は地球人である。地球のためになることだけやろう」「日本のためになる」という理由だけで何かをやるのはやめ、「地球のためになることで、なおかつ日本のためになること」をやっていく。だから、「日本のためにはなるけれど、地球のためにならないならば、やらない!」と決めたのです。

■「視聴率なんて取りたくない」という思いが積もり……

角田陽一郎『「中の人」から「外の人」へ 出世のススメ』(日本実業出版社)

この行動理念だと、今までやってきたことの中に、「やったほうがいいこと」と「やらなくていいこと」があり、数としては後者がたくさんあることに気づきます。例えば、僕が制作していたトークバラエティ番組「オトナの!」に、すばらしいゲストが出て、貴重な話をしてくれたのなら、それは地球のためになるかもしれない。その話を聞いて勇気をもらえる人がいたり、そこからインスピレーションを得て、新しい文化が創造されるきっかけになるかもしれないからです。

一方で、「視聴率を取ること」。これはTBSのためにはなりますが、日本のためにはなりませんし、地球のためには、まったくなりません。テレビマンでありながら、僕はいつしか「視聴率なんて取りたくない」となってしまい、そんな思いが積もり積もって退職届を出すに至りました。

■出世とは「フレームから抜け出す」こと

21世紀になって約20年。世界は次のパラダイムに行くタイミングです。グローバリズム、中国の台頭、情報技術(IT)革命、MMT(現代貨幣理論)、ベーシックインカム、AI(人工知能)、……。今、世界中で新たなフレームがどんどん作られています。

そんな中、僕たちはどう生きるのか? 今まで異常だったことが普通になるし、逆に今までと同じことをしていると、成功はできない。僕は思うのです。「出世」を立身出世ではなく、「フレームから抜け出す」という本来の意味で、再定義することが現代人にとって必要ではないのか? あなたもフレームの外へ出て「中の人」から「外の人」になってみませんか?

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角田 陽一郎(かくた・よういちろう)
バラエティプロデューサー
1970年、千葉県生まれ。東京大学文学部西洋史学科卒業。1994年、TBSテレビ入社。『さんまのスーパーからくりTV』『中居正広の金曜日のスマたちへ』『オトナの!』などの番組を担当。2016年にTBSテレビを退社し、独立。著書に『13の未来地図 フレームなき時代の羅針盤』(ぴあ)、『「好きなことだけやって生きていく」という提案』(アスコム)などがある。

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(バラエティプロデューサー 角田 陽一郎)

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