韓国政権の最後は必ず引きずり降ろされるワケ
プレジデントオンライン / 2019年12月8日 11時15分
■精神分析領域では嫉妬は2種類ある
精神分析の領域では、嫉妬には2種類あるとされています。1つは自分が誰かに負けていると思ったときに「そいつに勝つために努力してやろう」というプラスのパワーになる嫉妬。もう1つは、「そいつを引きずり降ろしてやろう」というマイナスのパワーになる嫉妬です。前者は「ジェラシー型の嫉妬」後者は「エンヴィ型の嫉妬」と呼ばれています。
精神分析の祖であるフロイトに言わせると、人間の嫉妬はジェラシー型でした。その根拠となるのが「エディプスコンプレックス」という心理概念です。父親を殺し、母をめとったギリシャ王神話のエディプスになぞらえて命名されたこの概念は、簡単に言えば、男の子が幼少期に抱くとされている父親への劣等感です。
■パパを追い抜いてやろう
具体的に言うとこうです。男の子はあるとき、自分のものだと思っていたママが実際はパパのものだということに気付かされる。ところがパパは絶対的な存在で、とてもかなわない。そこで何を思うかというと、とりあえず負けを認めて、いつかはパパを追い抜いてやろうと勉強したり体力を鍛えたりして頑張るんです。
それがフロイトの考える子どもの成長物語。父親への劣等感をパワーに変える、ジェラシー型の嫉妬というわけです。
ところが、フロイトの晩年ごろから、子どもの精神分析を専門とするクラインは、もっと原始的な嫉妬があると唱えました。エディプス期よりもっと前の乳児期には、別のタイプの嫉妬があると想定しました。
たとえば母親がおっぱいを飲ませてくれたとき、普通は感謝するはずですね。しかし、小さな赤ん坊は、「母親にはおっぱいがあるのになぜ自分にはないんだ」と悔しがって、それにかみついてしまう。母子関係がうまくいっていないと、そのレベルから成長できないというわけです。
相手が自分より上だと感じたときに、フロイトの理論ではいったん負けを認めていつかは追い抜いてやろうというプラスのパワーにするわけですが、クラインの仮説では、攻撃したり引きずり降ろそうとしたりするマイナスの心理になるということですね。それをクラインは「エンヴィ型の嫉妬」と呼びました。当たり前ですが、嫉妬をプラスのパワーにできた人が成功者になれるわけで、相手を引きずり降ろすほうに労力を使う人は何も成長しないわけです。
クライン以降の精神分析の考え方では、ジェラシー型になるかエンヴィ型になるかは母親の愛情次第。つまり、母親からたっぷり愛情をかけてもらった子は、人の足を引っ張るより努力して相手に勝ってやろうというタイプの人になる、という考え方を精神分析ではするのです。
その説が正しいかはわかりませんが、マザコンと言われているビートたけしさんや田中角栄さんのような人は、負けたときに「悔しいから頑張ろう」という方向に昇華できているなと思います。
ともかく、自分が満たされていないと思っている人々は、どうせ勝てないんだったら引きずり降ろしてやろうという心理になりがち。だから、韓国で政権交代が起こるときに必ず引きずり降ろし型になるのは、国全体が経済的に満たされていないことも背景にあるかもしれないし、アメリカの白人貧困層が犯罪を起こすのもその理屈なのだと思います。日本でも、著名人がちょっとミスをしたらぼろくそに叩くようなワイドショー文化になったのは、やっぱり景気が悪くなったからだと思います。
■嫉妬と向き合った角栄と三島
こういう満たされない社会、あるいはマザコンなるものが叩かれる社会になってきたうえに、今は勝ち組と負け組に早く分かれてしまう時代。昔みたいに年功序列だったら、年を重ねたら俺も上にあがれると希望を持てたけど、20代や30代で早くも勝負がついちゃう世の中では、足を引っ張るエンヴィ型の嫉妬が生まれやすい印象を受けます。
そうした悪い嫉妬が渦巻くと、社会全体がよくない方向に行く。というのも、基本的に嫉妬なるものが世の中を動かしてきたことは間違いないからです。たとえば、嫉妬をうまく利用した偉人に、田中角栄と三島由紀夫がいます。
角栄は、高等小学校卒という学歴にある時期まで非常にコンプレックスを持っていました。日本では明治時代ごろから、首相になる人は在野の成功者ではなく圧倒的に官僚出身者が多かった。彼は若くして代議士になったけど、将来首相になることはできないだろうという状況にいたわけです。
だから、能力が低いのにいい大学を出ているというだけで偉そうにしているやつらを妬んだり、ロッキード事件で自分は逮捕されたのにエリートたちは罪を免れたことを面白く思わなかったりしました。
でも、角栄は自身が嫉妬深かったからこそ、他人からの嫉妬の扱い方もうまく、嫉妬心を政治にうまく利用したのです。角栄は学歴がないのに20代で国会議員になった人ですから、他人から嫉妬を受けることも多かったんです。
そこで、ある時期までは最終学歴を「中央工学校卒」(専門学校。角栄は高等小学校卒業後、専門学校を卒業した)としていたのを、ある時期からあえて「高等小学校卒」と名乗るようになります。要するに、そうしたほうが変な嫉妬を買わないということを、処世術的に身に付けたんですよね。
三島由紀夫も、「嫉妬こそ生きる力だ」という言葉を残すほど嫉妬と縁の深い人生でした。
三島はいい家柄に生まれ東大法学部を出て、さらには20代から大作家になるわけですから、嫉妬される立場の塊みたいな人なんですよ。でも、体が小さいことがすごくコンプレックスだった。「俺ほどの天才大作家を、周りはチビだとバカにしている」と一人相撲的に周りに嫉妬していたんです。
■深い嫉妬心をうまく利用
三島の親友に増村保造という大映の映画監督がいて、彼は当時にしては大男でした。当然、三島は彼に嫉妬していたはずなんですが、自分の小説を彼に原作として差し出して、「自分は嫉妬なんかしていないよ」というポーズをとっていた時期もありました。ただ、三島はその深い嫉妬心をうまく利用して文学にぶつけることができたので、現代にも残る名作が生まれたんです。
三島は躁鬱気味だったそうですが、強い嫉妬は鬱につながることもあります。嫉妬する人というのは、1つの価値観にとらわれていることが多いですね。たとえば、学歴がすべてだと思っている人は、頭がいいか悪いかで人間は決まると思ってしまっている。
価値観のベクトルを多様にできると、わりと嫉妬しないで済むし人間の幅が広がるわけです。この点では負けているけれど別の点では勝っていると思えますから。それができない視野狭窄な人は、相手を攻撃するなど、自分の長所が見えなくなっていく「嫉妬の悲劇」が起こりやすいのです。
多くの欲望で事業活動に専心
PHP研究所によると、記録上で松下幸之助氏がこの言葉を発したのは、1948年に開かれた講演会が初出。
「欲望は天与のものであり、無暗に抑えつけたりなくそうとしたりすることは自然に反することで、結果として私たちの幸福にはつながらない。そもそも欲望はエンジンのようなもので、これなくして人類の発展はなしえなかったのではないだろうか。しかし、欲望のおもむくままに考え、行動することもまた、私たちの繁栄、平和、幸福を妨げることになる。この一面があればこそ、多くの宗教、思想では欲望をなくすこと、あるいは無欲を尊しとしがちだと考えられる。松下は、欲望のもっているこうした二面性に注目し、その調和をはかるべきとして、欲望を尊重し適度に生かすことを提案した」(PHP研究所担当者)
欲望をある程度満たし生かしつつ、抑えねばならないときは抑える。こうした生き方を嫉妬心に当てはめたとき、「狐色にほどよく妬く」という表現になったとされる。
松下氏自身も多くの欲望があればこそ、事業活動に専心していた一面がある一方、仏教の教えは「無欲」である。そこに調和、バランスという自分なりの考え方を持つようになったと、推測されている。
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第64、65代内閣総理大臣
1918~93年。自民党最大派閥の田中派(木曜クラブ)を率いて権勢をほしいままにした。著書『日本列島改造論』がベストセラーとなった72年、総理大臣に就任。76年にロッキード事件で逮捕された。
三島由紀夫
作家
1925~70年。東京都生まれ。東京大学卒業。代表作に『潮騒』『金閣寺』など。ノーベル文学賞候補にもなった。晩年は政治的な傾向を強め、自衛隊に体験入隊。自衛隊市ヶ谷駐屯地(現・防衛省本省)でクーデターを促す演説をしたのち、割腹自殺。
松下幸之助
実業家。現パナソニック創業者
1894~89年。和歌山県生まれ。パナソニックを一代で築き上げた。異名は「経営の神様」。PHP研究所を設立して倫理教育や出版活動に乗り出したほか、松下政経塾を立ち上げ、政治家の育成にも意を注いだ。
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国際医療福祉大学大学院教授
アンチエイジングとエグゼクティブカウンセリングに特化した「和田秀樹 こころと体のクリニック」院長。東京大学医学部卒業。ベストセラーとなった『受験は要領』や『「東大に入る子」は5歳で決まる』ほか著書多数。
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(国際医療福祉大学大学院教授 和田 秀樹 構成=万亀すぱえ 写真=AFLO、時事通信フォト)
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