会話で「この人は面白い」と思ってもらう近道
プレジデントオンライン / 2020年1月7日 11時15分
■面白いと感じた瞬間、脳はこうなっている
「面白い」と感じたときに、何が起きているか。ズバリ、脳が反応しています。逆に「面白くない」と感じたときは脳が一切反応しません。人間の脳はとても正直にできています。
私はこれまで「脳は8つの系統の番地に分けることができて、その脳番地を意識すると、人間の脳は伸びていく」ことを提唱してきました。脳番地とは、同じような働きをする脳細胞の集まりと、その脳細胞を支える関連部位の総称のことです。
脳全体では120の脳番地がありますが、代表的な脳番地は、思考系・感情系・伝達系・運動系・聴覚系・視覚系・理解系・記憶系の8つ。人が「面白い」と感じたとき、この8つの脳番地のうち、どれかが反応しているのです。
たとえば、脳は既知のことには反応しませんが、初めて聞く新しいことに対しては「そんなこともあったのか!」と面白さを感じます。これは記憶系脳番地が反応したためだと考えられるでしょう。ほかにも、ジェットコースターに乗っているときは運動系脳番地、落語家の噺(はなし)に笑ったときは聴覚系と感情系の脳番地が反応している、というように、同じ「面白い」であっても反応する脳番地は異なります。
人は一人一人、各脳番地の成長度合いはもちろん、経験や興味、関心も違います。だからこそ、「面白い」と感じる脳のツボは、本当に人それぞれだと言えます。
■相手の脳をいかに刺激するべきか
脳番地が成長すると、脳の中に「道」ができます。道が増えれば増えるほど、脳が「面白い」と反応するエリアがどんどん広がっていく、とも言えます。人間の脳は1度でも成功体験をすると、それを再び使いたくなる性質を持っています。勉強やゲームの原理と一緒で、1度でも高得点を取ると、次もまた取りたくなる。つまり、面白い体験をして脳が働くと、脳内に新たに道ができて、それをもう1度使いたくなるということです。
大前提として、脳が「面白い」と反応するには、脳を新鮮に保つことが大事です。そのためにも私は、常に感性を研ぎ澄ませておくように、日常生活をマンネリ化させないよう意識しています。いつもの場所とは違うところで仕事をしたり、打ち合わせをしたり、時間を変えたりというのは、簡単にできることですよね。
もし「この人の言うこと、面白くないな」と感じながら話を聞いていたとしても、少しでも「面白い」と引っかかるところはないか、真剣に探しています。脳は正直ですから、「面白くない」と感じると脳活動が停滞してしまうんです。僕は人と対面する時間をムダにしたくないので、相手の話がまったく面白くなかったとしても、「僕の脳を反応させるためにはどうすればいいんだ?」と考えて、自分の「面白い」と感じるツボにいかに反応させるかを探らずにはいられないのです。脳の専門家だからそこまでしてしまうのでしょうけれど。
相手に「面白い人だな」と思ってもらいたいなら、相手の脳を反応させる必要があります。「この人の話は面白い」と感じているとき、相手の脳は確実に働いています。そのときに大事なのは、8つある脳番地のうち、相手のどの脳番地が反応するかを考えること。
そのためには相手に興味を持つことが重要です。そうすると情報がどんどん集まってきます。必要な情報が集まってきたら、その人に必要なことが言えるはずです。
加えて、言葉を発するタイミングも狙うこと。「面白い」と感じさせるにはタイミングも重要です。タイミングを外してしまうと、脳の反応が起きません。目や耳で相手が今「面白い」と感じているのかいないのか判断し、適切なタイミングで狙った話を展開することが大事です。「これは面白いと思ってもらえるだろう」と思って用意したネタであっても、時に相手の反応を見て肉付けを変える必要があるかもしれません。
最大限の情報を使って、最適な言葉を使い、最適な行動をすることが、相手に「面白い」と思われる近道ではないでしょうか。
単純明快! 脳が反応すれば「面白い」、スルーすれば「面白くない」
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脳内科医・医学博士
1961年、新潟県生まれ。脳内科医、医学博士。加藤プラチナクリニック院長。株式会社脳の学校代表。昭和大学客員教授。発達脳科学・MRI脳画像診断の専門家。胎児から超高齢者まで1万人以上を加藤式MRI脳画像診断法を用いて治療。脳の特徴を知ることでいくつになっても脳を成長させることができる「脳番地トレーニング法」を提唱。著書に『脳の強化書』(あさ出版)、『50歳を超えても脳が若返る生き方』(講談社)、『片づけ脳――部屋の頭もスッキリする!』(自由国民社)など多数。
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(脳内科医・医学博士 加藤 俊徳 構成=池田園子 写真=iStock.com)
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