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財務状況がいきなり悪化「いきステ」の大ピンチ

プレジデントオンライン / 2019年12月19日 15時15分

立ち食いステーキ専門チェーン「いきなり!ステーキ」=2017年3月22日、東京都江東区 - 写真=東洋経済/アフロ

ステーキチェーン「いきなり!ステーキ」が不振に陥っている。既存店売上高は20カ月連続でマイナスが続き、運営会社ペッパーフードサービスも経営危機に瀕している。店舗経営コンサルタントの佐藤昌司氏は「キャッシュが激減し、借金が増えている。自己資本が12億円まで落ち込み、債務超過の危険性も出てきた」と分析する――。

■増収増益の陰で既存店売上高が悪化

ステーキチェーン「いきなり!ステーキ」を展開するペッパーフードサービスが経営危機に瀕している。主力のいきステが不振に陥り、それに伴って財務状況が急激に悪化しているのだ。

これまでは急成長を遂げる中で大儲けし、巨額の資金を獲得していた。営業活動で増減したキャッシュの量を示す「営業キャッシュフロー(CF)」は2018年12月期が64億円のプラスだった。それにより期末の現預金は1年前から23億円増えて67億円まで積み上がった。

2018年のいきステには勢いがあった。この1年間だけで国内店舗数は約200店増え、386店に倍増した。米国事業が不振で損失を出してしまったが、国内は大量出店で急成長を遂げ、いきステ事業の業績は好調に推移。同事業の売上高は前期比2倍の541億円、セグメント利益は2.1倍の53億円と大幅な増収増益を達成していた。

ただその陰では、大量出店による自社競合や度重なる値上げなどで、好調だったいきステの既存店売上高は悪化しつつあった。18年4月にマイナスに転じ、19年11月まで20カ月連続で前年割れが続いている。さらに悪いことにマイナス幅は拡大している。19年8月以降が特に深刻で、同月は前年同月比35.2%減、翌9月が33.6%減、10月が41.4%減、11月が32.8%減と、大幅な前年割れが続いている。

■全店の1割弱にあたる44店の閉鎖を発表

いきステの不振を受けて、ペッパーフードサービスは11月14日、19年12月期通期の連結業績予想の修正を発表。売上高は従来より98億円少ない665億円(前期比5%増)とした。営業損益は従来計画では20億円の黒字を見込んでいたが、7億3100万円の赤字(前期は38億円の黒字)に、最終損益は15億円の黒字から25億円の赤字(同1億2100万円の赤字)に下方修正した。こうした状況を踏まえ、いきステ全店の1割弱にあたる44店の閉鎖も発表している。

同日、19年1~9月期決算も発表。売上高は前年同期比15.2%増の518億円と増収だったが、営業利益は98.2%減の4400万円と大幅に減った。最終損益は19億2200万円の赤字(前年同期は11億5600万円の黒字)に転落している。

さらに見逃せないのが財務状況の悪化だ。

18年12月期の営業CFが64億円のプラスだったことはすでに述べたが、19年1~6月期は2億4700万円のマイナス(前年同期は36億6900万円のプラス)に陥ってしまった。これは、店舗販売など営業活動でキャッシュが2億4700万円流出したことを意味する。深刻な状況だ。

■負債が246億円に膨れ上がっている

さらに、土地や建物といった固定資産の取得および売却など投資活動で増減したキャッシュの量を示す「投資CF」は40億円のマイナス(同37億円のマイナス)だった。一方、金融機関からの借り入れなど財務活動で増減したキャッシュの量を示す「財務CF」は借金をするなどで10億円のプラス(同16億円のプラス)だった。

これらなどをトータルした19年1~6月期のキャッシュの増減額は32億円のマイナス(同16億円のプラス)だった。これを受け、期首に67億円あったキャッシュは半減に近い34億円となってしまった。

こうしたキャッシュ不足を補うためか、借金である「長期借入金」が急激に増えている。19年9月末時点で92億円となっているが、3カ月前の6月末時点(59億円)から33億円増えた。1年前の18年9月末時点(43億円)と比べて、49億円増えている。急速に借金に頼らなければならない状況に追い込まれていることがわかる。また、長期借入金の増加などで負債は246億円に膨れ上がっている。

■自己資本はわずか12億円にまで減少

また、積み上げた儲けの累積額である「利益剰余金」が減少するなどで、「自己資本比率」が急激に低下している。19年9月末時点の自己資本比率は4.8%で、3カ月前の6月末(15.6%)と比べて10ポイント以上低い。1年前の18年9月末(20.6%)からだと15ポイント以上も低下した。

自己資本は減少しており、19年9月末時点でわずか12億円しかない。債務超過に陥ってもおかしくない状況だ。もしそうなれば金融機関からの借り入れが難しくなり、倒産リスクが一気に高まる。

■直筆の「社長からのお願い」に批判集中

厳しい状況のなか、ペッパーフードサービスはいきステで集客を実現するための施策を打ってきた。起死回生の一手なのか、同社社長がお客に来店を呼びかける直筆の張り紙を店頭に貼り出したのだ。

「社長からのお願いでございます」という書き出しから始まり、「お客様のご来店が減少しております」「このままではお近くの店を閉めることになります」と切実な状況を訴え、「創業者一瀬邦夫からのお願いです。ぜひ皆様のご来店を心よりお待ちしております」と結ぶ文面で、来店を呼びかけた。

だが、この張り紙には批判が巻き起こった。「日本初」「食文化を発明」「大繁盛」といった言葉が連なっており、「上から目線」と受け取られたのだ。また、「来店客が減っているのをお客のせいにしている」「来店客が減ったと言われても、客が知ったことではない」「閉店しても困らない」といった意見もあった。SNSなどをみる限り、こうした声が大勢のようで、「お願い」が集客に結びつくかは微妙なところだ。

いずれにせよ、ほかに有効な対策を講じなければ、客離れは止まらないだろう。いきなり陥った経営の危機を脱することができるのか、注目が集まる。

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佐藤 昌司(さとう・まさし)
店舗経営コンサルタント
立教大学社会学部卒業。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。店舗型ビジネスの専門家として、集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供している。

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(店舗経営コンサルタント 佐藤 昌司)

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