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橋下徹「新型肺炎、政府はイベント自粛期間を明示せよ」

プレジデントオンライン / 2020年2月26日 11時15分

※写真はイメージです。 - 写真=iStock.com/Domepitipat

2月25日、政府は新型肺炎対策の基本方針を決定したが、感染拡大対策としては発熱時の外出自粛やテレワーク、時差出勤を呼びかけるだけで、イベントの開催については民間に任せるとのことだった。それでいいのか。橋下徹氏の見解は? プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(2月25日配信)から抜粋記事をお届けします。

■完全撲滅か共生か、感染症との向き合い方は2種類しかない

新型コロナウイルス肺炎が、徐々に日本国内に広がってきた。感染経路が不明な感染者も出てきているので、検査によって把握しきれていない感染者が市中に相当数存在する「市中感染」をもはや認めざるを得ない状況だ。

(略)

感染症に対する社会の向き合い方には大きく2つしかない。

1つ目は、その感染症を完全に撲滅させる方向性。
2つ目は、その感染症と共に生きる覚悟を決めて、社会的な耐性を強化する方向性。

人類が世界的に完全な撲滅に成功した感染症は天然痘だけだ。世界的な完全撲滅には諸条件が整わなければならず、撲滅に近づいている感染症はいくつかあるが、完全撲滅は今のところ天然痘のみとなっている。

そんな中で、新型コロナウイルス肺炎は完全撲滅が難しい種類の感染症だ。それは、「不顕性感染」といって、明確な症状がないままにどんどん感染が広がるので、感染者を完全に追跡しながら撲滅することができないからだ。また、ヒトからヒトのみの感染だけでなく、動物にも感染するので、ヒトの間での感染を撲滅したところで、また動物から感染が広がる可能性が高い。

(略)

ゆえに、新型コロナウイルス肺炎は、人類が共に生きる感染症であると覚悟して、医療機関をはじめとする社会全体が、その流行に対してしっかりと耐えるだけの力をつけていく方向性を歩むしかない。

この大きな方向性を示すのが政治の役割だ。

(略)

今は、政府が完全撲滅の方向で行くのか、共生の方向で行くのかきちんと説明していないし、各メディアに登場する専門家も好き勝手なことを言い放って情報が錯綜しているので国民の間で不安が高まっている。

しかし、政治家と政府が「完全撲滅は困難であり、共に生きていくしかない」という方向性が決まれば、国民は冷静になるし、マスメディアも感染者が1人出るたびに大騒ぎして報じている今の態度振る舞いを改めるだろう。

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※25日の基本方針では、完全撲滅を目指すことは示されなかったが、だからといって共に生きていくということも明確に示されていない。ここは、新型コロナウイルスとは、通常のインフルエンザ同様に、共に生きていかなければならないことをはっきりと示すべきだった。

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(略)

■大規模イベント中止は「時間稼ぎ」のため

ただし、今の段階では、新型コロナウイルス肺炎については、まだよく分からない部分がたくさんある。今後の感染者推移も未知のところがある。

そういう状況の中で、仮に爆発的に感染者数が増えたとしても、医療機関で対応できるように、今、政府は体制を整備しているところだ。

(略)

そこで、新型コロナウイルス肺炎の感染者数が増えたとしても、しっかりとそれに対応できるような体制を整えるための、一定の時間稼ぎが必要である。とりあえず、現在の医療体制で対応できるような感染者数に抑える必要がある。

これが「爆発的な増加を抑える」ピークカットというものであり、そのためには一気の集団感染を防ぐために大規模イベントなどを一定期間中止すべきというのが、僕の持論だ。

大規模イベントの中止というと、感染を防ぐ目的だと思われがちだ。しかし、そのような目的だと、永遠、大規模イベントを中止しなければならないことになってしまう。実際、このように誤解されている向きもある。

しかし、大規模イベントの中止は、感染の「爆発的」拡大を防ぐもので、感染を単純に防ぐためのものではない。ある意味感染が広がることは認めた上で、爆発的な拡大にならないように「時間稼ぎ」をするためのものでしかない。

(略)

そして、大規模イベントの中止などをやる場合には、発生期から移行期の間でやらなければ意味がない。しかしここで悩ましいのが、発生期や移行期においては、感染状況が明確にわかるデータがまだ手に入らないということだ。

(略)

■根拠が弱い時の判断は政治家がやる

このようにデータが不十分な時点において、大規模イベントを中止するか否か。官僚にそのような判断を求めるのは酷だ。官僚は、しっかりとしたデータと論拠を基に行動するのがその役割だ。これは、できる限り責任を負わないようにする行動原理ともいえる。

ゆえに、データや論拠がない中で決断をし、その上ですべての責任をとるのが政治家の役割だ。

(略)

この点、現在の感染者数や死亡率などを見ると、新型コロナウイルス肺炎の危険性は通常のインフルエンザと同程度なので、それほど大騒ぎする必要はない、という意見が巷にはある。僕も最終的にはそのように落ち着くことを望んでいる。

しかし、今の段階では、新型コロナウイルス肺炎を通常のインフルエンザと同等に扱ってもいいのか、爆発的に感染が拡大したときに医療機関が十分に対応できるのかが不明な状況だ。

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※25日の基本方針では、新型コロナウイルス肺炎は通常のインフルエンザよりもリスクが高いとの認識が示された。

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(略)

また、インフルエンザでは呼吸器障害への対応はそれほど必要ないが、新型コロナウイルス肺炎ではその対応に追われることになるらしい。ところが、医療機関においてまだその準備ができていないという声も聞く。

だからこそ、医療機関をはじめとする「社会の耐性」を整える時間稼ぎが必要であり、そのためには、発生期から移行期である今のタイミングで、データや根拠が弱くても、大規模イベントの中止をすることが必要だと考える。

(略)

■「500人以上」「3月15日まで」のイベント自粛を明言した東京都は賢明だ

一部のインテリたちは、「通常のインフルエンザと同じなのだから、イベントを中止する必要はない」と述べる。

しかし、民間企業はそんな見解には見向きもせずに、イベント類の中止に動き出している。民間企業は、感染を広げるわけにはいかないということで続々と中止の決定をしている。経済的な損失としては、相当な額になると思う。

僕が政府に言いたいのは、このようなイベント中止の判断を民間に丸投げすることは許されないということだ。今、厚生労働省は、官僚的な複雑な言い回しでもって、「一律の中止は求めないが、各イベント主催者の方で慎重に判断して欲しい」というメッセージを出している。

これが一番、最悪なメッセージだ。

橋下 徹『トランプに学ぶ 現状打破の鉄則』(プレジデント社)
橋下 徹『トランプに学ぶ 現状打破の鉄則』(プレジデント社)

(略)

その一方、東京都は、「500人以上」の規模のイベントについて、「3月15日まで」は自粛するという方針を打ち出した。非常に賢明である。民間はその方針に従って行動できる。

日本政府も民間に判断を丸投げせずに、25日の基本方針においては、イベントの自粛について、その規模と期間のガイドラインを明示すべきだ。そうでなければ、民間において、ありとあらゆるイベントが長期間自粛されることになってしまう。この経済的損失は計り知れない。イベントはいつ頃から再開してもいいのかの大まかな見込みについて、データや根拠が弱くても責任をもって示すことが政治の役割だと思う。

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※25日の基本方針では、感染拡大のピークを抑制し、その間に医療機関等の体制を整備する方針が示されたものの、イベントの開催については民間の判断に委ねられ、自粛期間も明示されなかった。ただし、政府は「この1、2週間が正念場」という認識を示しているので、イベントの自粛もまずは「1、2週間」の期間で考えればいいと思う。

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(略)

(ここまでリード文を除き約3000字、メールマガジン全文は約1万6400字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.189(2月25日配信)の本論を抜粋し、配信後の政府方針決定を受けて新たな論評(※の部分)を追加したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【感染症と政治の役割(1)】新型肺炎流行の瀬戸際! 今こそ政府がやるべきこと》特集です。

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橋下 徹(はしもと・とおる)
元大阪市長・元大阪府知事
1969年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、大阪弁護士会に弁護士登録。98年「橋下綜合法律事務所」を設立。TV番組などに出演して有名に。2008年大阪府知事に就任し、3年9カ月務める。11年12月、大阪市長。

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(元大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹)

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