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吉村VS大村の殴り合い勃発! 大阪・名古屋の代理戦争「勝者が次の総理だ」

プレジデントオンライン / 2020年6月10日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AndreyPopov

■「#大村知事のリコールを支持します」

全国的に暑い夏になると予想される今年は、例年にはない大きな熱量が加わりそうだ。保守系の著名人らが愛知県の大村秀章知事に対するリコール(解職)運動を今夏にスタートするが、これに新型コロナウイルス対応で人気が上昇した吉村洋文大阪府知事(日本維新の会副代表)が“参戦”しているためだ。なぜ他県知事のリコール活動に口を挟むのかという疑問はともかく、コロナ危機下で長い自粛生活を余儀なくされてきた人々が緊急事態宣言の解除後に放つ熱量は大きく、すでにネット上は「お祭り」状態にある。「腹黒い」と自認する吉村知事の視線の先には何があるのか。

「#大村知事のリコールを支持します」「#大村知事のリコールに反対します」。今月初め、ツイッター上には2つのハッシュタグが現れ、トレンド入りした。双方の支持者によるネット上での戦いは激しさを増しており、それは「大阪・吉村VS愛知・大村」の様相を見せている。

発端は、昨年に愛知県で開催された国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」だった。

■「愛知県民にとって恥ずかしいことをする知事」

昭和天皇の肖像を使った創作物を燃やす作品などの展示を認めた芸術祭の実行委員会会長・大村知事に対し、吉村知事が「知事として不適格。責任をとらないといけない」と痛烈に批判。これに大村氏が「憲法21条の『表現の自由』を全く理解していないのではないか。日本維新の会は表現の自由はどうでも良いと思っているのではないか」と反論し、記者会見やツイッター上などで激しい戦いが繰り広げられてきた。

こうした攻防はコロナ危機到来で収まったかに見えたが、吉村氏を応援している美容外科「高須クリニック」の高須克弥院長は6月2日、名古屋市のホテルで開いた記者会見で「昭和天皇の写真に火をつけたり、英霊を辱めるような作品が公開された」「国にとって恥ずかしい、愛知県民にとって恥ずかしいことをする知事は支持できない。県民に現実を知っていただいて、改めて判断を仰ぎたい」などと、大村知事のリコール運動を始めると発表。保守層に影響力を持つ作家の百田尚樹氏、明治天皇の玄孫で評論家の竹田恒泰氏らも同席した。

■国政では中途半端な維新

参加を呼び掛けられていた吉村氏は欠席したが、同日のツイッターでは「リコールは簡単にはいかないと思いますが、応援してます、なう。行政が税金であの『表現の不自由展』はさすがにおかしいですよね」と参戦した。

緊急事態宣言の解除後、ヒートアップしている「大阪府VS愛知県」のトップ対決の背景には何があるのか。全国紙政治部記者はこのように見る。「あいちトリエンナーレの企画展には保守層から猛反発があり、それが根本にあるのは間違いない。しかし、吉村氏はその他のこともいろいろと計算しているのではないか。その1つには、自身の人気があるうちに『維新』を全国区にしようという思惑があるはずだ」。

コロナ対応をめぐる各種世論調査で、吉村氏は東京都の小池百合子都知事とともに人気が上昇した首長だ。連日のようにテレビに露出し、評論家やコメンテーターが無批判のまま絶賛する今は「吉村バブル」ともいわれている。スポーツ紙や週刊誌でも好意的に持ち上げる記事が溢れているが、その一方で、国会で少数政党に甘んじている日本維新の会は野党なのか、与党寄りなのか分からない中途半端さも影響し、その党勢は思うような広がりを見せてはいない。

■高須氏らが署名活動開始

維新支持者には「吉村氏の高い人気を利用して全国展開を!」と鼻息を荒くする人々もいるが、政争やスキャンダルが見られてきた「日本維新」への嫌悪感もあり、「大阪の地域政党」色がなかなか消えていないのが実情でもある。

そこで注目されているのが、リコール運動の時期だ。地方自治法には一定数の署名が集まれば、リコールの是非をめぐる住民投票を行うことができるとの規定がある。住民投票で過半数の同意があれば首長が職を失うというものだ。過去には合併問題をめぐる住民投票でリコールが成立した例や、東京都知事時代の舛添要一氏が別荘のある神奈川県湯河原町に公用車で移動し、ファーストクラスの使用や高額な宿泊費などが相次いだことに都民が怒り、リコールを求める声があがったこともある。

今回、高須氏らは8月にも署名を開始し、2カ月以内に住民投票実施に必要な約86万5000人以上の署名を目指している。仮に署名が集まれば、住民投票は「60日以内」に行われるという点がポイントで、早ければ「年内」にも住民投票が行われることになる。大阪で取材を続ける全国紙デスクは「そのタイミングは、維新の悲願である『大阪都構想』の是非を問う住民投票ともかぶってくる。リコール運動が盛り上がれば、相乗効果が狙えると見ているのではないか。今は保守層の囲い込みをしているように見える」と指摘する。

■維新、安倍から流れてきた保守層を囲い込む

大阪市を廃止し、特別区に再編する「大阪都構想」実現は、言うまでもなく維新の「一丁目一番地」だ。維新代表を務める松井一郎大阪市長は5月29日の記者会見で「最後やるかどうかは9月に判断する」と語ったが、現時点では11月の住民投票が予定されている。2015年5月に行われた1度目の住民投票では反対票が上回り、維新創業者の橋下徹大阪市長の政界引退につながったが、2度目の失敗は何としても許されないとの思いは維新支持者に強い。

保守層からの人気が高かった安倍晋三総理がコロナ対応で信頼を失い、行き場を失った人々は維新に流れているとされ、その動きを証明するかのように「日本維新」の政党支持率は最近になって上昇し、調査によっては野党第1党の立憲民主党を上回っている。保守系著名人によるリコール運動に「参戦」することにより、自民党から離れた保守層を囲い込み、その勢いのまま「大阪都構想」の住民投票になだれ込みたいとの思惑が透けて見える。

■戦国時代を思わせるような激しい攻防

ただ、大村知事は愛知県で人気が高く、リコール運動が成就するかは見通せない。2019年2月の県知事選では自民、公明、立憲、国民民主の与野党が相乗りする形で約177万票を獲得、その得票率は8割を超えている。選挙が強く、愛知県民のハートを掴む大村知事との対決には「なぜ大阪の知事が、愛知県民の選んだ知事のリコール運動に参戦するのか。県民をバカにしている」「ちょっと人気が出たからといって吉村氏は調子に乗っているのではないか」との指摘も出ている。

イケイケ路線の吉村氏に対し、大村知事も負けておらず「病院に入れないということと、救急を断るという2つは医療崩壊。それが東京と大阪で起きているわけだ」と大阪のコロナ対応をチクリ。「大阪で医療崩壊は起きていません。何を根拠に言っているのか全く不明です」と反論した吉村氏に対し、大村氏は「違うのであれば違うということをデータをもって言わなければならない。単に言い訳しているに過ぎない」と追撃してみせている。今回のリコール運動についても「事実でないことを言い募っていくのは誹謗中傷になる」と淡々とやり返す大村氏の姿勢には、名古屋市在住の40代男性からも「そもそも大阪の首長が口を挟むのはおかしく、愛知県を大阪の支配下に置こうという強引さを感じる。大村知事は愛知県民を代表してドンドンやり返してほしい。吉村氏は何を勘違いしているのか分からないが、維新は大阪だけでやっていれば良い」との声もあがる。

戦国時代を思わせるような激しい攻防を見せている2人の知事。関東にも関西にも属さず、中京として発展を遂げてきた愛知県民は住民投票について「YES!」と賛同するのか、それとも「NO!」を突き付けるのか。今年の夏は「大阪VS愛知」の熱い戦いから目が離せない。

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麹町 文子(こうじまち・あやこ)
政経ジャーナリスト
1987年岩手県生まれ。早稲田大学卒業後、週刊誌記者を経てフリーランスとして独立。プレジデントオンライン(プレジデント社)、現代ビジネス(講談社)などに寄稿。婚活中。

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(政経ジャーナリスト 麹町 文子)

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