休業率98.7%だったパチンコを、全国民にリンチさせた犯人は誰だ
プレジデントオンライン / 2020年6月17日 15時15分
■「率直に言って報道の仕方に悪意がある」
パチンコ店は新型コロナウイルスの感染リスクが高い。そう頭ごなしに思っている人が多いのではないか。そうでなくてもパチンコに対してなにかと悪いイメージがある人は多くいるのではないか。それが今回のコロナ禍で浮き彫りになってしまったように思える。なぜなら、パチンコが世間から理不尽とも言える多くの非難を浴びたからだ。果たしてパチンコ店は感染のリスクが高いという認識は本当に正しいのだろうか。
今回のパチンコ店に対するいわれなき批判について、パチンコ業界に身を置く私の個人的な見解を述べさていただこうと思う。
このコロナ禍の数カ月の間、パチンコ業界は常にバッシングされ続けていたように思う。現時点でパチンコ店ではクラスターは発生していないというのに、である。クラスターが発生しているスポーツジム、ライブハウス、夜の街等の他業種に比べて、発生していないパチンコ店の方が明らかに世間から非難を浴びていたように感じた。では一体なぜこんなにもバッシングを受ける対象になってしまったのか。
今回パチンコ店が特に非難を浴びていた理由の1つが、緊急事態宣言が出されてからの各都道府県による休業要請に応じない一部の店舗が世間から注目を浴びたからだ。テレビ等のマスメディアでは、休業要請に応じていないパチンコ店や、店に並ぶ利用客の姿を連日報道していた。私はこのような報道を見て、率直に報道の仕方に悪意があると感じた。他業種に比べ、パチンコに焦点を当ててバッシングする報道が多かったように思える。このような報道が連日流れれば、世間はパチンコが悪いと勘違いしてしまうだろう。
■GW中のパチンコ店の休業率は全国で98.7%
もちろん休業要請に応じないのは良いとは言えない。しかし、勘違いしないでほしい。営業していたのはほんの一部の店舗だ。多くのパチンコ店はしっかりと休業要請に応じ、営業を自粛していた。特に大手パチンコチェーン店は軒並み営業を自粛していたのだ。事実、業界関連誌サイトの調査によれば、コロナ禍におけるGW中のパチンコ店の休業率は全国で98.7%という調査結果が出ている。これはまさに全業種の中でもトップクラスの休業率であろう。果たしてパチンコがここまでバッシングされるに値したのだろうか。パチンコが悪い、休業要請に応じていないと思っていた人はもう一度よく考えてみてほしい。大半のパチンコ店は素直に休業要請を受け入れていたのが現状である。
では、なぜ休業要請に応じない一部の店舗があったのか。それは、休業すると潰れてしまう可能性がある比較的小規模な店舗は営業せざるを得ない状況であったからだ。これは国からの十分な休業補償が無い中では、ある程度仕方の無いことであろう。本来、休業要請と十分な休業補償はセットでなければならないと私は思う。都内のパチンコ店によっては月の家賃だけでも数千万円にも及ぶ店舗もある。その他にも維持費や従業員の給料等を考えると、経済的に厳しいの一言だろう。果たしてそれに見合うだけの休業補償があっただろうか。正直、今回の休業補償はパチンコ店にとって十分ではなかったと言わざるを得ないのではないだろうか。
■連日の報道でイメージは最悪に
先にも述べた通り、そんな苦しい状況下でも営業を自粛していた店がほとんどだ。これはもっと評価されるべきなのではないか。しかしながら、現実は評価されるどころか、やむなく営業していた一部の店が悪いように報道され、パチンコ業界全体のイメージの悪化につながってしまったのは残念でならない。
一方で、利用客の方はどうなのか。店の方は仕方の無い事情があると説明したが、利用客については賛同はできない。このコロナ禍において、外に出て遊びたいという思いを我慢して感染を拡大させないように家で過ごしている人がたくさんいた中で、パチンコを打って遊んでいる人がいるというのは良いとは言えない。
しかしながら、店側の立場から考えると客が来てくれないと潰れてしまうという現状があったので、利用客も店に貢献したという点では一理あるのかもしれない。だが、やはりパチンコに行くのは不要不急の外出なので、正しいとは言えない。利用客は間違いなく行くべきではなかっただろうと私は思う。
今回のこのような世間からのバッシングを受けた結果、緊急事態宣言が解除後に営業を再開したパチンコ店に客足は戻っていない。イメージが悪くなったゆえに、以前のようなにぎわいを見せていないのだ。おそらく連日の報道等によるイメージで、パチンコ店は感染するリスクが高い場所だと思っている人も多いのだろう。
■パチンコ店に密接と密集はない上に、換気水準も高い
冒頭でも述べたが、果たしてそのイメージは本当に正しいのだろうか。ただなんとなく事実を知らず危ないという勝手なイメージを持っている人が多いのではないだろうか。そのイメージに反して、パチンコ店は感染するリスクは低いと私は思う。
なぜなら、パチンコ店は換気設備もしっかりしており、人同士で向き合うことも無く、密着することも無く、会話することも無く遊技することが可能であるからだ。実際にパチンコ店では今年の4月になるまでは喫煙が可能であったがゆえに、換気設備が整っており、換気が1時間に6〜7回程なされている。これは商業施設の中でも非常に高い水準の換気回数である。
また、1人1台のパチンコと向き合うことで、密接することはない。施設全体の体積から考えた密集度合いも低い。さらに、会話等はほとんどしないため、他人との接触や飛沫も少ないのだ。
そして、実際にクラスターも発生していない。このような事実がありながら、まだパチンコ店は危険だと言い切れるのであろうか。他のさまざまな商業施設に比べ、あきらかに感染するリスクは低い方なのではないか。無論、感染する可能性がゼロとは言い切れない。しかしそれはどこであろうと同じである。
■遊技を終えた客がパチンコ台から離れるとすぐに店員が…
先日私は、営業を再開したあるパチンコ店を少しのぞいてみたのだが、そこでの対策に驚いた。まず、そのパチンコ店の3カ所ある出入り口全てにアルコール消毒液を置いていた。そして、ソーシャルディスタンスを保つためにパチンコ台を1台ごとに停止するいわゆる間引き営業をしていた。さらにパチンコ1台ごとの両脇には透明のパーテーションで仕切りを作り、飛沫等の対策をしていた。また、遊技を終えた客がパチンコ台から離れるとすぐに店員がそのパチンコ台のハンドルや椅子をアルコールで入念に消毒し、それが終わると消毒済みの札をパチンコ台の上に置いていた。
それだけではない。店員が店内の自動販売機の取り出し口、釣り銭返却口に至るまでアルコール消毒をしている姿を目にした。さすがに恐れ入った。営業再開からここまで万全の対策をしているのだ。無論、店員は全員マスクを着用していたのだが、利用客においても全員マスクを着用していた。どうやら利用客の意識も高まっているようだ。
また、朝の入場抽選においても、並びの密集を回避するために、スマートフォンのアプリで並ぶことなく抽選をして、密にならないように時間をずらして入場するといった方法を導入しているパチンコ店も増えてきている。ここまでさまざまな対策を講じているパチンコ店をリスクが高い、危険だと判断するのはいささか軽薄ではないだろうか。
■いわれなき批判を受けたパチンコ店はコロナの被害者
パチンコは何かとやり玉に挙げられがちな業界だ。その大きな理由は世間からのイメージの悪さにあると思う。イメージが悪いものをたたきたくなるのは人間の性分だ。今回もクラスターが発生しておらず、なにか目立って悪いことをした訳ではないというのに、いわれなき批判を受け、イメージがさらに悪化してしまった。しかし、実際には他業種と同じようにパチンコ店も「コロナの被害者」なのだ。
パチンコ業界で働く人たちは世間からのイメージの悪さをよく知っている。それゆえに、今回のような問題が起きた際の対策やより良くなるための改善策に対して努力を惜しまない。世間からの悪いイメージを払拭するために必死に頑張っているのだ。そこを知り、現実を見た上でいま一度、パチンコに対する認識を改めて見てほしい。そして、パチンコ店の客足が増え、以前のような活気を取り戻せるよう切に願っている。
(パチンコメーカー社員 内田 勝太)
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