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「115kg→75kg」何度も失敗した僕のダイエットを成功させた彼女の言葉

プレジデントオンライン / 2020年7月2日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/huettenhoelscher

「やせたい」と思っているのにダイエットが続かない人は、どこに問題があるのか。40キロの減量に成功した医療記者の朽木誠一郎さんが、科学的根拠に基づいたダイエット方法を紹介する。第1回は「僕がやせることを決意した理由」――。(第1回/全4回)

※本稿は、朽木誠一郎『医療記者のダイエット 最新科学を武器に40キロやせた』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■同棲中の彼女が出て行ってしまった

「わたし、デブはタイプじゃないって、ずっと言ってるよね」

体重計の数値が110キロ前後を行ったり来たりしていた初夏のある日、当時のパートナーがまっすぐに僕を見やり、こう言いました。めくれ上がったTシャツから突き出た腹を隠そうともせず、クーラーを効かせた部屋のソファでダラダラしている僕に、彼女がいつになく真剣な表情で詰め寄ったのです。

付き合うことになったとき、彼女が提示した条件は、たしかに「やせる」こと。それから1年半、「やせて」と言われる度にごまかし続け、やせるどころかさらに太り続けた僕に、ついにガマンの限界を迎えたのでしょう。

一方の僕はいつものように「わかってるって」「がんばるから」と返事をしました。しかし、事態は深刻。「もうずっとそれ」「ぜんぜん信用できない」そう言い残して、彼女は一緒に住んでいた部屋を出ていってしまったのです。

これはいよいよまずいことになったぞ──部屋に積み上げられていく段ボールと、それが日に日に運び出されていく現実を目の当たりにし、ようやくそう悟った僕は、そこから“ダイエット”を始めました。

■プチ断食とジョギングで減量したら…

食事は豆腐と果物だけ。仕事中に頭が働かなくなったらブドウ糖のタブレットを噛み砕く。ファスティング(プチ断食)と称して、野菜ジュースと通販で入手した酵素ドリンクなるものだけを口にする日もありました。

運動もしました。仕事が終わり、0時を回ってから深夜のジョギング。人気のない東京湾岸の倉庫街まで走り、ボーッと海を眺めていたおぼろげな記憶があります。というのも、あまりに無茶な生活をした結果、当時のことをよく覚えていないのです。

そんな毎日は1カ月ほど続き、体重はみるみる10キロ以上落ちました。体重が90キロ台になり、ダイエットに成功したと思い込んでいた僕は、出ていった彼女と話し合いの場を持つことに。「自分はやればできる」と意気揚々とその場に臨んだ僕に、彼女ははっきりとこう言いました。

「デブがとかじゃなくて、あなたのことがもう好きじゃない」

1年半も約束を守らなかったわけなので、完全なる自業自得です。「(ダイエット)できるんだったら、もっと早くちゃんとやせてほしかった」と言う彼女に、返す言葉もありません。

とはいえ、さすがにこれはショックでした。報われなかった努力がバカバカしくなり、好きなものを好きなだけ食べ、家でゴロゴロする生活に逆戻り……。1カ月後には体重が元に戻り、さらに1カ月後にはむしろ5キロも増えていました。過去最「重」記録の更新、体重は115キロ。体脂肪率は34%で、つまり、体の3分の1が脂肪の状態です。

■再び告げられた「デブはタイプじゃない」

今であれば、無茶な“ダイエット”により絵に描いたようなリバウンドをしてしまったことがわかります。空腹の時間が長く、栄養バランスも偏っている。運動にしても急激にハードなことをしたため、継続できず、ケガをしやすい。このような“ダイエット”では、一時的に体重は減るものの、筋肉まで減ってしまい、より太りやすい体になってしまうでしょう。当然ですが、この“ダイエット”は大失敗なので、絶対にマネをしないでください。

その後、僕は失意のうちにダイエットのことを頭の外に追い出し、生活していました。

しかし、です。ありがたいことにその半年後、新しいパートナーができる運びとなりました。それではいよいよ正式に付き合いましょうか、というタイミングで、その彼女はキッと僕を見やり、こう言ったのです。

「でもわたし、デブはタイプじゃないからね」

こんなことってある!? 人生でまたこのセリフを聞くことになろうとは……。さすがにこれ以上、同じことを繰り返すわけにはいきません。こうして僕は「今度こそやせよう」と固く心に誓ったのでした。

■なぜ「わかっている」のに続かないのだろう

「やせて」と言われて「わかってるって」「がんばるから」という返事をしたことのあるすべての人のために、僕はこの原稿を書いています。なぜなら、この言葉が決してウソでないことを、他ならぬ僕自身がよく知っているからです。

やせなければいけないことがわかっていても、やせるためにがんばろうとしていても、それでもやせない。このことは、実は科学的に説明ができます。

「人はなぜ太るのか」「人はどうすればやせるのか」──これらはダイエットというテーマに向き合う上で最大のテーマです。それぞれについての個別の情報、あるいはこれらを広く網羅した情報は、世の中にすでにたくさん溢れています。

しかし、ダイエットに悩む人は一向に減っているようには思えません。

ひとつの理由は、このような情報の中には誤りも含まれているから。もうひとつの理由は、たとえ正しい情報でも実践するのが難しいから。誤った情報を基にダイエットに取り組んでも効果は出ないばかりか、逆効果になることもあります。また、正しい情報でも実践できなければ意味がありませんし、「自分にはダイエットは無理なんだ」と諦めてしまう人がいるかもしれません。

■本や記事を読み漁ってもやせなかった理由

でも、心配しなくて大丈夫です。

僕は、誤りを含む情報に基づいてダイエットをしてリバウンドをし、正しい情報に基づいたダイエットはいつも挫折していました。それが今、やせることができた。なぜかというと、正しい情報を知り、それに基づいたダイエットを続けるための工夫をしたからです。

僕は2014年3月に地方国立大学の医学部医学科を卒業し、2017年からネットの報道機関で、2019年からは新聞社で医療記者、つまり医療や健康をテーマにした取材をして、記事を書く仕事をしています。まさに、正しい情報を取り扱うのが仕事です。情報だけでは解決できない問題は、専門家と一緒に、どんな工夫ができるか考えます。医療記者になった当初から、ダイエットをテーマにした取材を続け、自分でも実践してきました。このノウハウは、きっと多くの人が、ダイエットを成功させるために役に立つと信じています。

医療記者になる前、僕はダイエットの関連本やネットの記事を読み漁り、目についた方法に飛びついていました。にもかかわらず、僕はやせませんでした。このような行動を僕がとってしまったのは、医学の勉強をしており「ダイエットをしたいなら食事と運動の根本的な改善しかない」という事実を知りながら、目を背けたためでもあります。

■合計40キロの減量に成功

僕の大失敗“ダイエット”ほど極端ではなくとも、たとえばランチを抜いたり、脂肪燃焼サプリメントを飲んだり……といった経験がある人もいるのではないでしょうか。肥満の解消に食事と運動が重要であることはもはや常識ですが、それを知りながら多くの人が取り組んでいるダイエットの方法は、意外と誤っていることが多いのです。

あれから3年。多少の上下はありましたが、僕は現在体重75キロ±3キロをキープし、合計約40キロの減量に成功しています。

ここ数年の取り組みから、ダイエットには正しい情報とそれを実践する工夫に加え、もうひとつ大事なポイントがあることがわかりました。これは同時に、多くのダイエットが失敗してしまう理由にもつながります。

それは、成功するダイエットに必要なのは、意志の強弱によらずやせていくような環境を作ることだ、ということです。

ダイエットの成否を「意志の問題」と決めつけてしまうのは、本当はとても危険なことです。もちろん、それにより鼓舞される人もいるでしょう。一方で、これは「やせるための環境が整っている人」「やせにくい現在の環境を変える余裕のある人」にのみ有効な言説です。

■本当にやせたければ「環境を変えるべき」

やせるための環境が整っていない人、その環境を変える余裕のない人に、意志の問題を突きつけても、逆効果です。近年、医学研究では「健康になるためには環境を変えるべきである」というのが常識になりつつあります。自分の意志だけでは、環境には抗えず、したがってダイエットも成功しにくいのです。

重要なのは、少しずつでも、自分を取り巻く環境を変えていくアプローチ。今回の連載では、過去にブラック企業に勤務し、ストレス過多や長時間労働、睡眠不足、暴飲暴食で40キロも太ってしまった僕が、いかにしてその環境を変えていったか、についても紹介します。

ダイエットが意志の問題であると誤解されやすいのは、肥満解消に本人のセルフマネジメントが求められるからです。そして、これは容易なことではありません。なぜなら、肥満の状態にある人(肥満者)には、特有の「クセ」があるからです。このクセは肥満者から合理的な思考を奪い、より太らせるように働いてしまいます。

■ダイエットに潜む構造的な課題

ダイエットという行為を、一歩引いて眺めてみましょう。「食事をガマンする」「がんばって運動する」……どちらも「ガマン」「がんばって」といった言葉が出てくることからもわかるように、精神的なコストの高い行為です。

朽木誠一郎『医療記者のダイエット 最新科学を武器に40キロやせた』(KADOKAWA)
朽木誠一郎『医療記者のダイエット 最新科学を武器に40キロやせた』(KADOKAWA)

一方、肥満者にとって「好きなものをたくさん食べる(飲む)」「運動せずにゴロゴロする」といった行為は逆に、精神的なコストが低いことがわかるでしょう。同時に、目先の満足感を得られてしまう。簡単に言えば、ダイエットをするより、ダイエットをしない方が、「今この瞬間はラクで快適」なのです。

逆に「このままだと将来は病気になる」と脅かしたところで、今がよければそれでいいモードの人の行動のきっかけにはなりにくい。ダイエットにはこうした構造的な課題があります。

ダイエットは、実はそれぞれに、科学的な根拠(「エビデンス」と言います)があるものです。したがって、みなさんも自身の生活を少しずつ変えていけば、気づくと結果が出た状態になるはずです。

僕のダイエットの日々と一緒に、あなたも自分のダイエットを成功させてみませんか。(続く)

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朽木 誠一郎(くちき・せいいちろう)
ライター・編集者
地方の国立大学医学部を卒業後、新卒でメディア運営企業に入社。その後、編集プロダクション・有限会社ノオトで基礎からライティング・編集を学び直す。現在は報道機関に勤務しながら、フリーライターとしても雑誌『Mac Fan』連載「医療とApple」など執筆中。主著に『健康を食い物にするメディアたち』(ディスカヴァー携書)。近著に『医療記者のダイエット 最新科学を武器に40キロやせた』(KADOKAWA)がある。

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(ライター・編集者 朽木 誠一郎)

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