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海外依存高いソニーとパナソ…スマホ市場冷え込みと航空不況で苦境の電機業界

プレジデントオンライン / 2020年8月30日 9時15分

海外依存の生産体制が抱える構造的問題を解決できるか。(時事通信フォト=写真)

■新型コロナは業界大手2社にも大きな被害を与えた

電機業界では、これまで人員整理・赤字部門の撤退などを推し進め、ようやく実を結び始めた頃、新型コロナウイルスが猛威をふるい始めました。

新型コロナは3年連続過去最高益を更新しているソニー、赤字部門の見直しを行いこれからの飛躍が期待されているパナソニックなど業界大手2社にも大きな被害を与えました。

この2社は“事業を海外に依存していた”という共通点があります。

ソニーはゲーム、映画などエンタメ事業、そして最高益の立役者となるほど好調な半導体事業など多岐にわたる事業を展開していますが、今回の新型コロナウイルスの拡大で、外出自粛による巣ごもり需要があったゲーム事業以外は大きな痛手を負いました。

ソニーの最大の特徴である映画事業は新型コロナが原因となり、メイン市場であるアメリカ、欧州の都市がロックダウンしたため、映画館が閉鎖され作品が上映できず、制作中の作品も中断という、非常に厳しい状態に立たされています。これに対して吉田憲一郎社長は、「今後、リモートを推進する」といったコメントを出しており、リモート撮影による作品の制作や、動画配信サービスを使った作品公開に切り替わっていくことが予測されます。

スマートフォンのカメラ向けデバイスとして圧倒的シェアを誇る「CMOSイメージセンサー」は顧客であるアップルのアッセンブラー(組立組織)である鴻海(ホンハイ)の中国工場の稼働が一時停止したことで、供給が減少しました。

■最大の課題は、地政学的リスク

さらにこの状況に追い打ちをかけるように、新型コロナの影響でスマートフォンの販売数の減少とソニー製CMOSが搭載されるハイエンドモデル離れが発生。市場の冷え込みが予測され、今後も売上高増加がキープできるのかという議論が起こっています。

パナソニックの航空機向け映像音響機器も海外売り上げに依存しています。グループ会社にパナソニック アビオニクス コーポレーションというアメリカを拠点とする飛行機内のWi-Fi、オーディオ機器設備の生産を手掛ける会社があり、世界市場を大きくリードしていますが、これもまた新型コロナの影響を大きく受けています。

製造機器の供給先企業であるアメリカのボーイング、欧州のエアバスといった航空機メーカーは海外渡航の禁止などに起因した航空会社の便数の減少や航空機需要の低迷に苦しんでおり、生産航空機数を大幅に削減する計画を発表しました。

また、自動車業界も収束の予測ができないため苦戦が予測される分野です。テスラ向け電気自動車(EV)用電池の生産等を手掛ける社内ドメインのオートモーティブは、自動車工場稼働停止などの影響から直近売り上げが半減するほどの落ち込みを受けています。

しかし、角型二次電池に関して、2020年4月にトヨタと合弁会社を設立していたため、同事業が今後非連結対象となることは、不幸中の幸いといえます。

電機業界はグローバル化により、生産・需要ともに海外に依存しています。これは今回のようなパンデミック、そして紛争が起きた場合など、常に地政学的リスクを孕んでいるものです。

今後は、この地政学的リスクとの向き合い方を考えることが経営陣の課題だといえるでしょう。

(モルガン・スタンレーMUFG証券 エグゼクティブディレクター 小野 雅弘 構成=網田和志 写真=時事通信フォト)

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