ひろゆき「僕が『言ってはいけないこと』をあえて言ってきたワケ」
プレジデントオンライン / 2020年8月18日 15時15分
「ニコニコ動画(RC2)」発表会で映画祭の開催を発表する株式会社ニワンゴ取締役で巨大掲示板「2ちゃんねる」管理人の西村博之氏(左)と審査委員長の手塚眞氏=2007年10月10日、千代田区の秋葉原UDX - 写真=時事通信フォト
※本稿は、ひろゆき『1%の努力』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。
■本音で言う。そして、ちゃんと謝る
コミュニケーションコストとは、ひと言でいうと、「言ってはいけないことを言うスキル」だと僕は思っている。
たとえば、知り合いから「僕の事業は、うまくいきますかね?」と聞かれたとする。
普通に考えて、「うまくいかないな……」と思った場合に、あなたなら、ちゃんとそれを伝えられるだろうか。
もちろん伝え方は、その人のキャラによる。やんわり否定したり、率直に切り捨てたり、伝えるための技術はあるだろう。
ちなみに、僕だったら、「失敗しますよ」と言ってあげるようにしている。
なぜなら、それが本当の優しさだと思うからだ。
うまくいかなそうなのに、「大丈夫ですよ! 絶対にうまくいきますよ!」と言ってしまうほうが残酷だと僕は思う。
世の中、みんな本音を言わない。
「言ってはいけない」という空気が支配している。
そんな中で、本音をズバッと言う人がいたらどうだろう。
一気にポジションをとれる。
もちろん、好き嫌いで言うのではなく、根拠を提示したり、改善策を一緒に考えたりはする。ただ、無責任に「うまくいきますよ」とは言わないだけだ。
僕が人に本音を言えるのは、「最終的には謝れば関係を修復できる」と信じているからだ。
後からうまくいったとしたら、「あのときはごめんなさい」と言って謝れば修復可能で、それでも嫌みを言ってくるような人であれば、そういうタイプの人とは仲良くならないほうがいい。
もし後になって間違っていれば、そのときは謝る。
そのリスクさえとれれば、いつだって思ったことを言えるはずだ。
「本音で言う。そして、ちゃんと謝る」
どうだろう。これほど単純なスキルは他にないかもしれない。
僕がイベントやテレビ出演の仕事に呼ばれるのも、すべては「本音が言える」という強みがあるからにすぎない。
それだけ、本音が言える人、言ってはいけないことを言える人は、ポジション的に重宝されるのだろう。
■会社の肩書きで話す人は今の時代に合わない
その逆のパターンとして、こんな話がある。
ある新聞社の取材を受けたときだ。
取材を受ける間、僕の中には、ずっと違和感があった。
「オレは偉いんだ」という雰囲気が、記者の言葉の端々に表れていたのだ。
「大手新聞社という大メディアが認めている自分」みたいな気持ちが、言葉や態度に出てしまっていた。
こういう人は、第三者的なポジションをとることはできない。
外側から自分を見る視点がなくなってしまっていて、会社の肩書きをなくした時点で、仕事がなくなってしまうような人だ。
一方で会社の立場を抜きにして話ができるような人は、コミュニケーションコストが払える人だ。これからの時代に合っているのは、こちらのタイプだろう。
もちろん、自分に能力がないことを自覚していれば、大きな企業の傘の下で生きていったほうが賢い。その生き方を否定するわけではない。
ただ、その場合は、失業やリストラのリスクに備える必要があるので注意すべきだ。
■打ち合わせは「とにかく意見を出す」
「アメリカ人は自己主張をし、日本人は空気を読む」
そんな話をよく聞くが、実際に留学したり海外旅行をしたりしても、そのとおりだと感じることが多い。
なぜ、そうなるのだろうか。
人と人との距離に理由があるかもしれない。
日本では、電車やバスの公共交通機関での移動が多かったりするし、飲食店のスペースも狭いし、集合住宅も多い。物理的に人と人との距離が縮まれば、おのずと相手のことを考えざるを得ない。
ここでも、考え方を変えるよりは、環境などの場所を変えることをしたほうがいい。
あえて他の人と接触しない生活を送るのが効果的かもしれない。自転車で移動したり、歩いたりする時間を増やす。
あるいは、家族や職場から離れて1人になれる時間を増やす。
そうやって意図的にやらないと、自分の意見を作れない。
さて、仕事の基本は、打ち合わせだ。
人と会って話をする。それが仕事のベースにあることだろう。
そこで大事なことは、シンプルだが、「とにかく意見を出す」ということだ。
みんな空気を読むことが得意なので、意見を言うことは苦手だ。そこを逆手にとって、僕は積極的にやるようにしている。
間違っていてもかまわない。量的にたくさんの発言をすることを心がける。
意見を出すことのメリットは、「実作業が自分に投げられることがない」ということだ。
何も発言していない人は、心理的に「じゃあ、私がやります」と言って手を挙げてくれる。こんなにおいしいことはない。
「いつだって、発信者は強い」
というのは、覚えておくといいかもしれない。
■努力で解決するタイプは年齢が上がると厳しくなる
人の意見ばかり聞いて、誰でもできることに手を挙げてはいけない。そこでアピールする人は、99%の努力で解決するタイプの人だ。
そのタイプは、20代の若手なら戦略として正しい。
現場仕事が多くてインプットしている段階であれば、できることを増やしたほうがいい。
ただ、「そのうちどこかで上の立場になってやるぞ」というしたたかさを持っておくようにしよう。そうじゃないと、努力で解決するタイプは年齢が上がると厳しくなってくる。
いろいろなことが満遍なく無難にこなせる人は、たくさんの仕事を依頼され、仕事量が増える。
そして、いつか代わりが出てくる。
発信者になれるかどうかのポイントが、1つある。
「逆張りで考えられるかどうか」だ。
普通は、常識的で紋切り型の考え方ばかりしてしまう。
たとえば、就職活動の場合を考えてみよう。
資格を取ってアピールしたければ、「簿記や英検くらいは取っておこう」と考えてしまうし、出版社の面接を受けるときは、「紙の手触りは素晴らしいですね」と答えてしまう。
こういう人は、紋切り型の思考だ。
逆張りで考える人は違う。
「男ですが秘書検定1級を持っています」
「紙の時代は終わったと思います」
こういうことを言えるのが、逆張り思考の人だ。世の中は、本当にみんな同じことしか言わない。そんな中で、ちょっと違う視点からモノが言えれば、一気に抜きんでることができる。
もちろん、常に斜に構える必要はないのだが、一度、頭の中だけでも逆張りで考えてみることをクセにしておいたほうがいい。
できれば、「逆にこういうのはどうですかね」と、前置きした上で、口に出してみる。発言をしてみる。
その積み重ねで自分だけのポジションを確立していけるはずだ。
■職業にとらわれないのがいい
ポジションの話を続けよう。
僕がシステムのエンジニアと経営者側の間に入るのは、結局、経営者側がシステムのことを知らないからだ。
システムの仕組みがわかる優秀な経営者であれば、別に僕がいなくても会話が成立するだろう。
しかし、なかなかそうもいかない。
現場から叩き上げた経営者であっても、時代の感覚がズレていたりして、下っ端とは会話が成立しないことも多い。
だから、翻訳する立場が必要になる。
とはいえ、ただの翻訳者なら、問題が解決したときにお役御免になってしまうので、全体を最適化する視点は持っておきたい。
僕とまったく同じポジションになるのは、ハッキリ言って難しいだろう。
経営者の本を読んだところで、同じビジネスで成功することはできない。
だが、姿勢は学べる。
できるだけ職業にとらわれないのがいい。職業になった瞬間に、人が殺到して競争が起こる。いろいろな役割が混ざって、「何をやっている人なんですか?」と言われるくらいがちょうどいい。
そのうち、ハイパーなんとかクリエイターだと名乗ればいいのだ。
エンジニア界隈の場合、ちゃんとシステム設計をしてコードも書けてIT系で決定権を持っている人は、日本にはそんなに多くない。
アメリカでは、マイクロソフトのビル・ゲイツ氏がエンジニアとしても優秀だった。日本であれば、GREEの田中良和さんがプログラムを書ける。
「けんすう」こと古川健介も書けるし、ドワンゴを創った川上量生さんも書ける人だ。
■問題解決とプログラミングの掛け合わせが強みに
「現場レベルのサブスキルを持っておく」
僕にとってプログラミングはサブスキルだ。
これをメインにしてしまうと、結局、ただのシステム屋さんになってしまう。
自分がメインにしているのは、問題解決だ。起こっている状況に合わせて、どうすればそのトラブルを処理できるかを考えることだ。
目の前で怒っているオッサンを落ち着かせることや、プログラムの設計を作ることなど、すべてをひっくるめて問題解決としている。
いわばトラブル処理なのだが、そういうと、ネガティブなイメージがあるかもしれない。
ただ、自分で問題を設定することもできるので、目標を実現する能力とかなり近い。
そうやってメインスキル(マクロな経営視点)とサブスキル(ミクロな現場視点)を両方持ち合わせることが強みになる。
僕は小学校の頃からプログラムをやっていた。
ウェブで使う言語とはまた少し違うので、実際に2ちゃんねるを作るときは、一からやり直したが、小学生のときに「コンピュータはどうやって動くのか」という概念を知ることができたので、大人になってからの習得は早かった。
バイオリンで飯を食っていこうと思ったら、9歳くらいまでには始めていないと難しい。でも、たまにどこかで弾いてお小遣いをもらうくらいのレベルなら、別に何歳で始めてもいい。
そういったサブスキルは、軸として持っておくようにしよう。
■ドイツ語を話せないがドイツで仕事できる
サブスキルというのは、言語がわからなくても仕事ができるもののほうがいい。
たとえば、僕はドイツ語を話すことはできないが、ドイツの会社に入ってプログラミングの仕事をすることになったら、ある程度はできる自信がある。プログラム言語を見れば、大体こう動くとか、何をすればいいかがわかる。
バイオリンで食べていける人も、海外で活躍することができる。
留学してプログラミングのスキルで生きていけると思ったことは大きい。
言語の壁を越えられるスキルは、相当な自信になる。
それに、本当に自分に日本が合っているかどうかは、日本を出てみないとわからないものだ。
サブスキルを持っておくことは、その可能性を広げることもできる。
それがあって初めて、メインスキルに移っていくことが効果的になる。
現場レベルの仕事ができない人が、いくら「いいこと」を言っても、誰も動いてはくれない。
これもまた、ポジショニングが大事になってくるのだ。
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本名は西村博之。1976年、神奈川県生まれ。東京都に移り、中央大学へと進学。在学中に、アメリカ・アーカンソー州に留学。1999年、インターネットの匿名掲示板「2ちゃんねる」を開設し、管理人になる。2005年、株式会社ニワンゴの取締役管理人に就任し、「ニコニコ動画」を開始。2009年に「2ちゃんねる」の譲渡を発表。2015年、英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人に。2019年、「ペンギン村」をリリース。主な著書に、『無敵の思考』『働き方完全無双1』(大和書房)、『論破力』(朝日新書)などがある。
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(2ちゃんねる創設者 ひろゆき)
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