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元国税調査官が教える「医療費控除になる7つのお金、ならない5つのお金」

プレジデントオンライン / 2020年9月30日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PeopleImages

会社勤めでもできる節税策のなかに、医療費控除がある。その対象は病院での治療費、入院費だけでなく、交通費や栄養ドリンクなど幅広い。元国税調査官の大村大次郎氏が控除の対象となる7つの項目を紹介する――。

※本稿は、大村大次郎『やってはいけないお金の貯め方』(宝島社)の一部を再編集したものです。

■医療費控除の対象はこんなにある

誰もができる節税策の代表的なものに、「医療費控除」があります。

年末のビジネス誌などで時々、特集されたりしていますので、聞いたことがある方も多いでしょう。

医療費控除は、対象範囲が広いので誰にでも簡単にできるものなのです。そして、医療費控除はほとんどの方が、少額であっても税金還付になるのです。

医療費控除は、簡単に言えば、「年間10万円以上の医療費を支払っていれば、若干の税金が戻ってくる」という制度です(本当はもう少し複雑な計算があります)。そして医療費の領収書さえ残しておけば、誰でも医療費控除の申告をすることができます。だから、やろうと思えば、今日からでもできるのです。

しかも病院での治療費、入院費のみならず、通院での交通費、薬屋さんで買った市販薬、場合によっては、ビタミン剤、栄養ドリンク、按摩、マッサージなども含まれるのです。

また昨今、はやりの禁煙治療、ED治療などの費用も医療費控除の対象になるのです。

そのようなものを全部足したら、だいたい誰でも年間10万円以上にくらいにはなるでしょう?

ちなみに医療費控除の対象となる主な医療費は次の通りです。

■歯の治療代、マッサージ代、交通費も

①病気やけがで病院に支払った診療代や歯の治療代
②治療薬の購入費
③入院や通院のための交通費
④公的資格を持つ施術師による按摩・マッサージ・指圧師、鍼灸師などによる施術費
⑤保健師や看護師、特に依頼した人へ支払う療養の世話の費用
⑥助産婦による分べんの介助料
⑦介護保険制度を利用し、指定介護老人福祉施設においてサービスを受けたことにより支払った金額のうちの2分の1相当額や一定の在宅サービスを受けたことによる自己負担額に相当する金額

※この他にも医療用器具の購入費、義手や義足等の購入費用も対象となります。

けっこういろいろなものが対象になるでしょう?

また医療費控除には他にも、いろいろな裏ワザがあるのです。禁煙治療、ED治療なども、医療費控除とすることもできるのです。

これを知っているのと知らないのとでは、大違いなのです。

■年収500万円、医療費が30万円かかるとすると…

まずは医療費控除の仕組みについて、簡単にご説明しておきましょう。

医療費控除というのは、その年において多額の医療費を支払った場合に、その支払った医療費のうち一定の金額をその年の所得金額から控除できるというものです。

医療費控除の計算方法は以下の通りです。

その年に支払った医療費(保険金等で戻った金額を除く)-10万円(※)=医療費控除額(最高200万円)

※10万円または所得金額の5%いずれか少ない金額となります。

たとえば、年収500万円の人がいたとします。この人(家庭)の年間の医療費が30万円かかったとします。

となると、30万円から10万円を差し引いた残額20万円が医療費控除額となります。

課税対象となる所得から20万円を差し引くことができるのです。つまりは、これに税率をかけた分が還付されます。この人の場合だと、所得税、住民税合わせてだいたい3~4万円が還付されると思ってください。

年間30万円くらいの医療費って、普通の家庭で普通に使っているものです。それを申告すれば3~4万円が戻ってくるのです。

つまりは、普通の家庭が普通に申告すれば、3~4万円が還付になるのです。

■控除対象になる市販薬、ならない市販薬

医療費控除の額を増やそうと思えば、まず重要ポイントとなるのが、市販薬です。

病院に行かない人でも、市販薬というのはけっこう購入しているものです。風邪薬、目薬、湿布など、健康な人でも何かしら購入しているものでしょう?

この市販薬を医療費控除として申告できれば、医療費控除の範囲はグンと広がるはずです。

で、市販薬の場合、医療費控除の対象となるケースとならないケースがあります。その違いは何なのか、というと、簡単に言えば「治療に関するものかどうか」ということです。

「治療に関するもの」とはどういうことかというと、怪我や病気をしたり、体の具合が悪かったりして、それを「治す」ために買ったものであれば、医療費控除の対象となるということです。医者の処方のない市販薬でも、大丈夫です。

一方、「治療に関するもの」でないものというのは、予防のためや置き薬のために買ったものなのです。つまり、具体的な病気、怪我の症状があって、それを治すために買ったものであればOK、そうじゃない場合はダメということです。

でも予防か治療かというのは、曖昧な部分でもあります。

たとえば、ちょっと風邪気味だなあ、薬でも飲んでおくか、と思って市販薬を購入した場合。これは予防なのか、治療なのか、判別は難しいところです。

こういうときは、どう判断すればいいか?

簡単に言ってしまえば、自分が「治療だと思えば治療」ですし、「予防だと思えば予防」ということになるのです。

■注意! 対象外となる5つの費用

日本の税制では、「申告納税制度」というシステムを採用しています。これは、税金は納税者が自分で申告し、自分で納めるという制度です。この申告納税制度のもとでは、納税者が申告した内容については、明らかな間違いがなければ、申告をそのまま認めるということになっています。

だから、医療費控除の場合も、本人が治療のためと思って購入した市販薬については、税務当局が「それは治療ではなく予防のためのものだ」ということを証明できない限りは、治療のために購入したとして認められるのです。

もちろん、これは治療か予防か、曖昧なものに限られます。明らかに予防のために購入したということが客観的にわかるものを「これは治療のために買った」と言い張っても、それは通りませんので、ご注意ください。

ちなみに、医療関係の支出で、医療費控除の対象とはならないものの具体例が、税務当局から出されていますので、ご紹介しておきますね。

①医師等に対する謝礼
②健康診断や美容整形の費用
③予防や健康増進のための健康食品や栄養ドリンクなどの購入費
④近視や遠視のためのメガネや補聴器等の購入費
⑤お見舞いのための交通費やガソリン代

※親族などに支払う世話代や未払いの医療費なども対象とならない。

■控除を狙うなら栄養ドリンクは医薬品を

これもあまり知られていませんが、ビタミン剤や栄養ドリンクも、一定の条件を満たしていれば医療費控除の対象となります。

ビタミン剤や栄養ドリンクも、病気などの治療に効果がある場合もありますからね。ビタミン剤や栄養ドリンクを医療費控除に含めることができれば、医療費控除の額はかなり増加するのではないでしょうか?

「病院にもいかない、薬も買わない」という人でも、ビタミン剤や栄養ドリンクを買う人は、けっこういますからね。なので、医療費控除の申告をする際には、ぜひビタミン剤、栄養ドリンクを対象に含める術を会得していただきたいものです。

ビタミン剤、栄養ドリンクなどを医療費控除に含めるために一定の条件というのは、次の二つです。

・何かの体の不具合症状を改善するためのものであること
・医薬品であること

つまりは、体がどこも悪くないけれど、とりあえず飲んでおこう、というようなビタミン剤、栄養ドリンクはダメだということです。

どこか具合が悪いところがあって、それを改善するために飲む、というのがまず原則です。ただし、これには医者の処方せんなどは必要ありません。

まあ、ビタミン剤や栄養ドリンクを飲むときというのは、体がどこか悪いときですからね。だから、ビタミン剤や栄養ドリンクもかなりの範囲で、医療費控除の対象になるということです。

それと気をつけなくてはならないのが、ビタミン剤や栄養ドリンクは、医薬品じゃなくてはならない、ということです。ビタミン剤や栄養ドリンクも多々ありますが、医薬品になっていないものは、対象とはならないのです。ビタミン剤や栄養ドリンクを買う際には、医薬品かどうかをチェックしておくのがいいかもしれません。

■不妊治療、ED治療費もOK

不妊治療にかかった費用も医療費控除の対象になります。

大村大次郎『やってはいけないお金の貯め方』(宝島社)
大村大次郎『やってはいけないお金の貯め方』(宝島社)

不妊治療はけっこう高い費用が掛かる上に、社会保険が適用されないものが多いので、医療費控除はきっちり受けたいものです。

人工授精・体外受精・顕微授精の治療費全般(卵子・精子の凍結保存料や採卵にかかる費用等)も対象となります。

またED治療費も対象となります。最近は、若い人でもEDになってしまっている人が多いようです。

ご存じの方も多いようですが、このED、病院で治療も受けられます。治療を受けてみたいと思っている方は、潜在的にけっこういるのではないでしょうか?

そして、このED治療に関してかかった費用は、医療費控除の対象となるのです。

このことは、実はほとんど広報されていません。確定申告のマニュアル書などでも、これが記載されているのは見たことがありませんし、国税庁のホームページなどにも載っていません。

EDは、医療関係的には病気として扱われ、治療の対象となっているわけなので、医療費控除の対象になるわけです。これは筆者の勝手な解釈ではなく、東京国税局に確認済のことですので間違いありません。

ED治療もけっこうなお金が必要なようですが、医療費控除の申告をすれば若干でもそれが取り戻せるわけです。ED治療を受けられた方、これから受けようと思っておられる方、ぜひ医療費控除を忘れずに。

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大村 大次郎(おおむら・おおじろう)
元国税調査官
1960年生まれ。大阪府出身。元国税調査官。国税局、税務署で主に法人税担当調査官として10年間勤務後、経営コンサルタント、フリーライターとなる。難しい税金問題をわかりやすく解説。執筆活動のほか、ラジオ出演、「マルサ!! 東京国税局査察部」(フジテレビ系列)、「ナサケの女~国税局査察官~」(テレビ朝日系列)などの監修も務める。主な著書に『あらゆる領収書は経費で落とせる』(中公新書ラクレ)、『ズバリ回答! どんな領収書でも経費で落とす方法』『こんなモノまで! 領収書をストンと経費で落とす抜け道』『脱税の世界史』(すべて宝島社)ほか多数。

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(元国税調査官 大村 大次郎)

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