脳科学が教える、逆境で心折れる人と平常心を保てる人の決定的な違いとは

プレジデントオンライン / 2020年10月12日 6時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Asia-Pacific Images Studio)

虐待や災害、貧困……。強いストレスにさらされても、そこから立ち直っていける人は何が違うのでしょうか。そして私たちは、どうすれば立ち直る力を鍛えることができるのでしょうか。脳科学の専門家が解説します。

■同じストレス下でも折れる人と折れない人がいる

誰しも、苦しいことや悩みを抱えながら人生を歩んでいます。恵まれているように見える人でも、逆境にいるように見える人でも同じです。

そして同じようにストレスフルな体験をしても、大きな精神的打撃を受けて立ち直れなくなってしまう人と、立ち直れる人がいます。これは年齢を問わず、大人でも子どもでも当てはまります。実際に、研究上、同じネガティブな環境(虐待や災害、貧困など)の下に育っても、心理的な不適応に陥ってしまう人とそうでない人がいることが明らかにされています。

逆境にさらされたり、ストレスフルな出来事が起きたりして、精神的な傷を受けて一時的に落ち込んでも、そこから立ち直り、環境に適応していくことができる人の特性のことを「レジリエンス」と言います。このレジリエンスは、逆境からの立ち直りだけでなく、内的な成長にもつながることがわかっています。

■レジリエンスが強い人の10の特徴

過酷な環境下にいながらも、PTSDなど精神的に崩れることのなかった人の特徴などから、レリジエンスの高い人の10の特徴が明らかにされています。

①楽観主義、②利他主義、③確固とした道徳的基盤をもつ、④信仰心やスピリチュアリティを持つ、⑤ユーモアがある、⑥自分の役割のモデルを持っている、⑦他人の社会的なサポートを受けられる環境を持つ、⑧恐怖を直視できる、⑨使命感が強い、⑩メンタルトレーニングを受けている。

また、脳科学の研究からは、レジリエンスの強い人は、幸福感に関わるオキシトシンやセロトニンなどが多く分泌されていることがわかっています。さらに幸福感と関連している左眼窩前頭皮質の体積が大きいこともわかってきています。

米国心理学会は、レリジエンスを高める方法として以下の10個を挙げています。

① 家族や友人・他人と良い関係を作ること
② 克服できない問題と捉えてしまわない
③ 変化を生活上での一部分としてきちんと受け入れる
④ 何かしらの目標に向かって進むこと
⑤ (流されず)断固とした行動を取ること
⑥ 自己発見のための機会を探すこと
⑦ 自分に対する肯定的な見方(自己効力感)を持つこと
⑧ 物事の捉え方についての展望を持つこと
⑨ 希望に充ちた見方を持つこと
⑩ 自分自身を大切にすること

ただ、おそらく多くの悩める人にとっては、この項目が成立しないから悩んでいる、苦しんでいるのだと思います。

■マインドフルネスは科学的に効果があるのか

上記10個ができずに苦しんでいる人にとって、レジリエンスを高める方法としてのマインドフルネス瞑想があります。マインドフルネスは、さまざまな媒体で取り上げられ広く一般認知されている反面、その伝わり方から、怪しい印象を持っている人もいるかもしれません。でも実際、科学的にもその効果が検証されているものです。ここでは、心理学、科学的に沿った正しいマインドフルネスの説明をしてみたいと思います。

マインドフルネスとは、「意図的に今この瞬間に、価値判断をすることなく注意を向けること」で、仏教にその起源をもつ概念です。ここで最も大事なことは、今の経験を過去の記憶や未来への期待と関係づけず、今起きていることに注意を向けることです。そして良い・悪いといった評価をせず、ありのままに観察することです。そしてこれは、瞑想(マインドフル瞑想)を通してできるようになります。

■感情に左右されない力を鍛える

マインドフルネス瞑想によって、①注意制御(今だけに意識を向ける)、②感情調整(感情をのせずに事実だけに目を向ける)、③自己知覚(正しく自分を知る)が導かれ、結果的に自己コントロールができるようになり、効果を得られるとされています。

人は、他人と比較し安心感や不安感を行き来したりしがちです。けれども、置かれている環境・状況について、良い悪いといった価値判断をしたり、不快だ、と感情的に反応したりせずに、自分の状態や思考の癖について俯瞰することが重要です。そこで初めて、感情にとらわれずに選ぶべき選択や、とるべき行動をとることができるのです。その結果、問題を大きく考えすぎてしまったり、破局的な解釈(何もかも終わりだ、等)といった、悩んでいる時に起こりがちなことも避けられます。

近年、“マインドフルネスをすると集中力が高まる“といった言葉だけが独り歩きしています。マインドフルネス瞑想によって鍛えられるのは、「自分を俯瞰し目の前の事実のみに着眼する力(感情のコントロール)」で、それにより、自分自身も自身を取り囲む周囲についても、肯定的に受け入れられるようになります。

この「状況を俯瞰し感情に左右されない力」が、ビジネスや人間関係といったあらゆる場面で効力を発揮してくるのです。

理不尽なことも多く、それをなぜ自分が受け入れなければいけないのか? と受け入れられず苦しむ時、マインドフルネス瞑想などを活用しながら、感情コントロール訓練をし、レリジエンスを高めることができれば少し生きやすくなるでしょう。

<参考文献>
・Adler, A. B., Williams, J., McGurk, D., Moss, A., & Bliese, P. D.(2015). Resilience training with soldiers during basic combat training: Randomisation by platoon. Applied Psychology: Health and Well-Being, 7, 85–107.
・Southwick,S.M., Vythilingam,M., & Charney, D.S.(2005). The psychobiology of depression and resilience to stress: implications for prevention and treatment. Annual Review of Clinical Psychology 1: 255-91.
・American Psychological Association. “10 Ways to build resilience ” in The road to resilience.
佐伯年詩雄 2007.「スポーツ・野外活動・自然体験が育むもの」『児童心理』第61巻,pp.254-258. 52
・Hölzel, B. K., Lazar, S. W., Gard, T., Schuman-Olivier, Z., Vago, D. R., & Ott, U. (2011). How does mindfulness meditation work?: Proposing mechanisms of action from a conceptual and neural perspective. Perspectives on Psychological Science, 6, 537–559.
・Tang, Y. Y., Hölzel, B. K., & Posner, M. I.(2015).The neuro science of mindfulness meditation.Nature Reviews Neuroscience, 16, 213–225.

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細田 千尋(ほそだ・ちひろ)
博士(医学)
東京大学大学院総合文化研究科研究員/科学技術振興機構さきがけ研究員/帝京大学医学部生理学講座助教。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科認知行動医学卒業後、英語学習による脳の可塑性研究を実施し、研究成果が多数のメディアに紹介。その研究をきっかけに、「目標達成できる人か?」を脳構造から判別するAIを作成し特許取得。現在は、プログラミング能力獲得と脳の関連性、 Virtual Realityを利用した学習法、恋愛と脳についても研究をしている。

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(博士(医学) 細田 千尋 写真=iStock.com)

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