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カッコよく痩せ続けていたいなら食事制限やサプリに頼ってばかりではいけない医学的な理由

プレジデントオンライン / 2020年11月5日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/recep-bg

健康にやせるにはどうすればいいのか。生活習慣病・循環器系のエキスパートである池谷敏郎医師は「燃費の悪い体を目指すことになるが、そのためには筋肉をつけるのが必須」という――。(第2回/全2回)

※本稿は、池谷敏郎『代謝がすべて やせる・老いない・免疫力を上げる』(角川新書)の一部を再編集したものです。

■「燃費の悪い体」を目指す

代謝というものを簡単に説明すると、「食べたものを処理し、有効に使い、そして効率よくためるために体内で行われる一連の化学反応」です。大きく3種類があり、基礎代謝、活動代謝、食事代謝。このうち、最も消費するエネルギーが多いのが基礎代謝です。

私たちが1日に消費するエネルギーの6割を占めるのが基礎代謝です。だから、代謝を良くするには、基礎代謝をいかに上げるかがカギになります。

では、「基礎代謝を上げる」とはどういうことでしょうか。

端的に言えば「燃費の悪い体」をめざす、ということです。車を選ぶときには、燃費の良い車が好まれますよね。同じ距離を走るのに燃料をたくさん使う古い年代のアメ車よりも、少量の燃料で走れる現代のエコカーのほうが経済的です。

でも、こと体についていえば、エコカーよりも、ふつうに生活をしているだけで無駄にエネルギーを使う、燃費の悪い体のほうが良いのです。

逆に燃費の良い体とは、食べたものをグリコーゲンや中性脂肪に変えて備蓄して、あまり使わずにどんどん体にため込んでしまうような体のこと。一方、燃費の悪い体とは、食べたそばからどんどんエネルギーを消費して、余計な備蓄がたまらず、太らない体です。

めざすべきは、当然、後者ですよね。前者のタイプが得なのは、雪山で遭難したときくらいでしょうか。遭難したときには体内の備蓄を少しずつ燃やすことで生き延びられるわけですが、そんな万が一のことを考える必要はありません。

■メンテナンスで体質は変わる

体が“エコカー”寄りなのか、古い“アメ車”寄りなのかは、生まれ持った体質に左右されます。同じ量の食事をとっても体質的にエネルギーを消費しやすい人もいれば、消費しにくい人もいる。男女でも異なり、男性のほうが総じてエネルギーを消費しやすく、基礎代謝量が高い傾向にあります。

そうした生まれ持った“車の設計図”は変えられませんが、“メンテナンス”次第でエコカーからアメ車に変えていくことはできます。ここで、燃費の悪い体(“アメ車”体質)をつくるメンテナンスの方法をお伝えしていきます。

■基礎代謝のほとんどは臓器からきている

ところで、改めて基礎代謝についておさらいしてみましょう。

基礎代謝とは、何もしない状態で体はどのくらいのエネルギーを消費するかという、生きるために最低限必要なエネルギーのことです。心身ともに安静に、ただボーっと横たわっていても、生きている限り、私たちの体内ではそれぞれの臓器が働いています。

心臓は、絶えず鼓動を続け、全身の細胞に酸素と栄養を送り届けています。ちなみに、全身に張り巡らされた血管をつなげて1本に伸ばすと、なんと9~10万キロメートルほど。地球を2周半ほどできてしまいます。それだけの長さの血管内に血液をぐるぐると巡回させているのですから、エネルギーが必要です。

血液をろ過するフィルター役の腎臓も、単なるフィルターとしてただ存在しているわけではありません。空気清浄機が電気の力で動いているように、腎臓も、血液をろ過して老廃物を尿として排泄するという機能を果たすためにかなりのエネルギーを使っています。

また、機能が低下していても症状がほとんど出ないことから「沈黙の臓器」とも呼ばれ、ふだんはほとんど意識することのない肝臓も、じつは働き者です。よく「化学工場」にたとえられるように、脂肪やタンパク質、糖質を合成・分解するなど、体に必要な栄養素をたくわえて必要なときに送り出したり、薬やアンモニア、アルコールなどの毒性のあるものを解毒したり、代謝にかかわるさまざまな化学反応を休むことなく行っています。

肝臓は、ブドウ糖(グルコース)からグリコーゲンをつくって貯蔵したり、貯蔵していたグリコーゲンを分解してブドウ糖として血中に放出したり、エネルギーをつくる臓器であるとともに、たくさんのエネルギーを使う臓器でもあるのです。

それから、脳もたくさんのエネルギーを消費する臓器です。無数の神経細胞が集まり、情報の送受信を行っています。ちなみに、働いている臓器は、車のエンジンのように熱を生みますが、なかでも脳は熱が出やすい臓器なので、熱くならないように体のてっぺんの頭にあるのだと考えられています。

このように、私たちは生きている限り、生命を維持するためにそれぞれの臓器がエネルギーを使って働き続けています。だからこそ、基礎代謝は大きいのです。

■筋肉が増えれば消費エネルギーも増える

では、安静時には体内のどこで、とくに多くのエネルギーが消費されているのでしょうか。全身に血液を送り届けている心臓でしょうか。あるいは、全身の司令塔の役割を果たす脳でしょうか、脳とともに最大の臓器である肝臓でしょうか。

池谷敏郎『代謝がすべて やせる・老いない・免疫力を上げる』(角川新書)
池谷敏郎『代謝がすべて やせる・老いない・免疫力を上げる』(角川新書)

じつは、心臓よりもずっと多く、脳や肝臓と同程度か、それ以上にエネルギーを消費しているのが、全身の筋肉です。

基礎代謝量の臓器・組織別内訳を見ると、次のようになっています。

・骨格筋(いわゆる筋肉) 22%
・脳 20%
・肝臓 21%
・心臓 9%
・腎臓 8%
・脂肪組織 4%
・その他 16%

骨格筋とは、姿勢を支え、体を動かすための筋肉のこと。一般的に筋肉と言われるのが、骨格筋です(そのほか筋肉には心臓を除く内臓や血管の壁を構成する「平滑筋」、心臓の壁を構成する「心筋」もありますが、本記事では骨格筋の意味で筋肉という言葉を使います)。

筋肉は、伸ばしたり縮めたりして動かすときにエネルギーを消費するイメージがあるかもしれませんが、何もせずにじっとしているときにもじつは結構なエネルギーを消費しています。

まず、基礎代謝には体温維持のために使われるエネルギーが含まれますが、さまざまな臓器のなかでも最も多くの熱を生み出しているのが筋肉です。先ほど熱を出しやすい臓器として脳を紹介しましたが、筋肉は、安静時にも脳以上に熱を生み出しています。

また、筋肉はタンパク質でできていて、そのタンパク質は合成と分解を常に繰り返しています。つまり、筋肉は日々作り替えられているのです。筋肉全体の約1.8%が日々生まれ変わっていると言われています。筋肉(タンパク質)の合成と分解にもやはりエネルギーが使われるので、筋肉を維持するだけでもエネルギーが必要なのです。

筋肉量が増えれば、その分、消費するエネルギーも増えます。

■「引き締まった体」に筋肉は不可欠

基礎代謝量全体のうち、筋肉が消費するエネルギー量は2割強なので、割合としてはそう多くないように感じるかもしれません。でも、「安静時の脳の代謝を上げましょう(消費エネルギーを増やす)」「肝臓の代謝を上げましょう」と言われても、自分でコントロールすることはできませんよね。

筋肉量であれば、増やすことができます。つまり、基礎代謝のなかでも、ほぼ唯一自分でコントロールできるのが、筋肉が消費するエネルギーといっても良いでしょう。

ですから、基礎代謝を高める「燃費の悪い体づくり」の基本は、筋肉をつけることなのです。

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池谷 敏郎(いけたに・としろう)
池谷医院院長、医学博士
1962年、東京都生まれ。東京医科大学医学部卒業後、同大学病院第二内科に入局。97年、医療法人社団池谷医院理事長兼院長に就任。専門は内科、循環器科。現在も臨床現場に立つ。生活習慣病、血管・心臓などの循環器系のエキスパートとして、数々のテレビ出演、雑誌・新聞への寄稿、講演など多方面で活躍中。東京医科大学循環器内科客員講師、日本内科学会認定総合内科専門医、日本循環器学会認定循環器専門医。著書に『50歳を過ぎても体脂肪率10%の名医が教える 内臓脂肪を落とす最強メソッド』(東洋経済新報社)、『「末梢血管」を鍛えると、血圧がみるみる下がる!』(三笠書房)、『血管を強くして突然死を防ぐ!』(PHP文庫)などがある。

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(池谷医院院長、医学博士 池谷 敏郎)

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