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「2泊3日でワーケーションしてきました」と投稿する人の仕事が中途半端な理由

プレジデントオンライン / 2020年11月24日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/LiuNian

ワーケーションに挑戦するビジネスパーソンが増えている。ワーケーションプランナーの児玉真悠子さんは、「うまく満喫できる人と仕事も遊びも中途半端になる人に分かれる」と指摘。その明暗をわける、ワーケーションの3大落とし穴とは——。

ここ数カ月、Go Toトラベルキャンペーンで遠方に行きやすくなったせいか、ワーク(仕事)とバケーション(休暇)を組み合わせた「ワーケーション」を実践する人たちが増えています。コロナ感染拡大対策の一環で、「オフィスにいなくても仕事しやすくなった」「巷で謳われているような仕事の生産性向上やストレス軽減などの効果を試してみたい」という理由が、人気を後押ししているようです。

とはいえ、実際にワーケーションをした人たちからは「滞在先で仕事がはかどらない」「現地でのレクリエーションを思うように満喫できない」といった声も少なくありません。

筆者はこれまで、普段住んでいる首都圏を離れ、山口県萩市や長崎県五島市などで子連れワーケーションを、締め切り前には単身で近場ワーケーションを実施。「ワーク」と「バケーション」の理想的なバランスについて試行錯誤しながら改善してきました。そんな筆者自身の経験に加え、ワーケーションを生活の中に取り入れている実践者たちから集めた声をもとに、ワーケーションを満喫できない人の“落とし穴”とは何か、探っていきます。

■初心者がはまりやすい落とし穴3つ

結論から言うと、ワーケーションを満喫できない人の落とし穴は、大きく3つあります。

①何となく滞在先を決めてしまう
②観光オンリーとなり仕事が手につかない
③結局ワークオンリーになる

いずれも新型コロナ流行の前から日常的にワーケーションを実践してきた達人たちよりも、初心者がはまりやすい落とし穴です。順に解説していきます。

■落とし穴①何となく滞在先を決めてしまう

1点目は、ワーケーションの目的を考えずに、何となく滞在先を決めてしまうこと。例えば「目の前にビーチが広がっていたら、仕事に集中できそう」「人に邪魔されない山の中だと、仕事がはかどりそう」などと、イメージで選んでしまうケースです。もちろん、そうした非日常を味わうことはワーケーションの醍醐味です。ただ、結果的に仕事がはかどらなかったら、ワークの要素を含まない、単なるバケーションになってしまいます。

私は以前、ワーケーションの最中、ビーチにテントを立てて原稿を書こうと試みたことがあります。子どもを海で遊ばせながら、仕事ができると期待したのです。しかし、実際には数行書いたところで、断念しました。まず、砂がパソコンのキーボードに入り込みそうになる。夏だったので暑くて仕事に集中できない。何よりビーチで机を広げるわけにもいかず、快適な椅子にも座れず、腰や肩が痛い!

砂浜でPCワークを試みるも、集中できずに断念する筆者。
砂浜でPCワークを試みるも、集中できずに断念する筆者。(写真提供=筆者)

結局、その日はパソコンを閉じて、iPadやスマホでの仕事に切り替え、仕事内容も原稿執筆から、構成作成などの企画寄りのものに変更しました。そこで普段は望めない海岸線を眺めていると、アイデアが膨らみ、結果的に構成をスラスラまとめることができたのです。

ここで気づいたのが、ワーケーション先での仕事には、場所によって向き不向きがあるということ。つまり、「どんな仕事をしたいのか」を考えてから、滞在予定を組むことが重要だったのです。

海岸や山中など、ワーケーションならではといえる自然に囲まれた環境で仕事するのであれば、比較的向いているのは新事業の構想を練ったり、文章の構想を考えたりといった、企画や考察を中心とする仕事です。一方、パソコンを使った事務作業や遠隔会議などは、疲れにくい机と椅子、さらにWi‐Fi環境も完備したコワーキングスペースなどの施設面を重視すべきでしょう。事務作業をリモートで片付けたいのか、あるいは普段は浮かばないような新しい構想を練りたいのか。目的によって、滞在先に求めるべき環境は全く異なるのです。

■都内の模擬ワーケーションがおすすめ

コロナ前からワーケーションを実践してきた達人は、実体験を踏まえ、そうした場所による仕事の向き不向きを知っています。片やそうした向き不向きに鈍感なのが、コロナ禍で初めてワーケーションを試みる初心者です。確かに都心のオフィスでしか働いたことのない人が、屋内外のどんな場所で仕事をするのが最適か、判断するのは難しいでしょう。

そこでお勧めしたいのが、都心で“模擬ワーケーション”を試行することです。例えば落ち着いて作業できるカフェやコワーキングスペースで仕事をしてみると、意外と椅子が重要だったことや、適度にざわざわしているほうが集中できることなどに気づくはずです。普段から自分の仕事内容に合うベストな環境はどこかを意識すること。それがワーケーションの落とし穴にはまらない一つの方法なのです。

■落とし穴②観光オンリーとなり仕事が手につかず

「2泊3日でワーケーションしてきました!」。最近Twitterでそのような書き込みをする人をよく見かけます。リモートワークが普及したのを契機に、一部の企業ではワーケーションも制度として導入し始めており、会社を休まなくても、数日間地方に出かけることが可能になっているのです。しかし数日間で、仕事(ワーク)と休暇(バケーション)のどちらも充実させることは実はハードルが高いもの。よほど計画的に過ごさない限り、両者のどちらかに極端に偏るか、あるいはどちらも中途半端に陥りかねません。観光地であれば、せっかく来たのだからと有名スポットの散策に明け暮れ、結局仕事が手につかなかったというケースもよく耳にします。

提携先開拓で訪れた兵庫県新温泉町にて。「どこでも仕事をしないといけないかわりに、好きなところにいつでも行ける」
提携先開拓で訪れた兵庫県新温泉町にて。「どこでも仕事をしないといけないかわりに、好きなところにいつでも行ける」

では、どうすればいいか。ワーケーションが好きなあまり、ついには家を持たずに移動しながら生活する“アドレスホッパー”になった、ウェブサイト制作業や定額住み放題サービス「HafH」の新規提携先開拓を請け負う森山真祐子さんがアドバイスするのは、平日の2泊3日で地方に行ってワーケーションするなら、「せめてその前週末から訪れ、休暇を満喫してから仕事モードに切り替える」ことだ。金曜夜か土曜朝に出発し、土日に滞在先を巡ることができれば、月曜からの仕事もはかどりやすい。「オンとオフのメリハリをつけて滞在することが重要」(森山さん)と言います。

もちろん、せっかくワーケーションをするなら、1週間以上滞在できるに越したことはありません。「海外では1カ所に1カ月間滞在しながらリモートワークし、世界各地を渡り歩くツアーも存在します。1カ月とまではいかなくても、1週間でも滞在すれば、その土地での暮らしを味わうことができます。観光客とは違う視点に立てるのも、ワーケーションの楽しみです」(森山さん)。

兵庫県の城崎温泉にて。足湯に浸かりながらワークする森山さん。
写真提供=森山真祐子さん
兵庫県の城崎温泉にて。足湯に浸かりながらワークする森山さん。 - 写真提供=森山真祐子さん

■落とし穴③結局ワークオンリーになる

一方、ワーケーションに来たのについ仕事が気になってしまい、結局「仕事オンリー」で、「わざわざ来た意味は何だったのか」と後悔する人もいます。

起業家として地域コミュニティづくりの事業を手がける柴田大輔さんも、仕事オンリーで過ごしてしまった経験がある一人です。

今はスマートフォンがあれば、仕事ができる便利な時代。「どこでも仕事ができてしまうから、休むことが不便になってきている」と指摘します。特に、柴田さんのような経営者の場合、仕事のことを常に考えてしまう人は多いはず。

柴田さんは、ご自身の経験から、遊びの予定やオフラインの時間を組み込むように意識しているそうです。最近のお気に入りは、ボードに立ってパドルを漕いで進むマリンスポーツ「SUP(サップ)」だとか。マリンスポーツの良いところは、物理的にデジタル機器から遮断されるため、オフモードに切り替えられる点だそうです。。

「休み方が上手になって、しっかりリフレッシュできると、仕事の効率が上がるのを実感できるはず。ワークの環境だけではなく、どんな休み方や遊び方ができそうか、予めリサーチしておくと満足度高く過ごせます」(柴田さん)

以上、ワーケーションを満喫している人は、ワーケーションの目的を明確にして、ワークとバケーションのバランスを意識していることがわかりました。

とはいえ、理想のバランスは人によってさまざまで、十人十色です。理想的な時間配分も居心地が良いと感じる環境も違います。だからこそ、自分は山派か海派か、都市派か田舎派か、などを自分で知っておく必要があります。自己理解こそが、ワーケーションの落とし穴にはまらないための極意なのです。

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児玉 真悠子(こだま・まゆこ)
「新しい働き方」を実践する編集者&ライター、ワーケーションプランナー
1980年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、出版社に勤務。ビジネス系出版社で書籍編集を経験した後、2度の産休を経て「仕事も暮らしも犠牲にしない働き方」を模索し独立。現在、旅行会社勤務の友人と共に、親子向けのワーケーションに特化したツアー企画や情報発信事業を構想中。フリーランス協会「フリパラ編集部」、地方創生チーム所属/キャリアコンサルタント/100人の本屋さん運営委員/2児の母。Twitter:mayukoda

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(「新しい働き方」を実践する編集者&ライター、ワーケーションプランナー 児玉 真悠子)

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