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20年前の大不況を食らった実業家が「ピンチの時に徹底的に見直したこと」

プレジデントオンライン / 2021年1月8日 9時15分

写真=筆者提供

高い生活費を稼ぐために、一生懸命働く人は多い。しかし、実業家の本田直之氏は「本当にそこまでの生活費をかける必要があるのか。支出をいかに選択して絞り込めるかが幸せなライフスタイルを作るためには必要だ」という――。

※本稿は、本田直之『パーソナル・トランスフォーメーション コロナでライフスタイルと働き方を変革する』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■ピンチの時こそ最も大事なベースができる

コロナがやってきて、危機的状況になっている、という人もいるかもしれません。会社や業界がピンチを迎えている、というケースもあるでしょう。

私がバックスグループという会社の常務取締役として、会社を上場に導いた話はすでに何度もしていますが、2001年に上場してすぐに、会社の業績はおかしくなってしまったのでした。

アメリカ同時多発テロ事件が上場一週間前に起こり、そこから景気が一気に後退し、日本中が景気後退の暗いムードに覆われていました。ここから2004年の終わり頃まで、会社は極めて厳しい時期を迎えるのです。

上場時に売上高41億円、営業利益2億円だった会社は、翌年の売り上げが横ばい、販管費をとにかく削って、ようやく利益が出せるような状況になりました。株主に迷惑がかからないように、と役員報酬をかなりカットして、それを投資に回していきました。

この厳しい時期に学んだことは、とても大きな教訓でした。今のコロナのタイミングも同じですが、ピンチのときこそ、最も大事なベースができるということです。筋肉であったり、体力であったり、文化であったり。そしてそれは、ピンチのときに、どんな行動をしたかによって変わってきます。会社でも個人でも。

■お金の流出を徹底的に見直した「3つの使い分け」

実際、バックスグループでは、会社の業績が悪くなって、いろんなことが見えてきたわけです。それまでも無駄な経費などは使っていないと思っていましたが、このときに徹底的に経費を見直し、極限まで削っていきました。

何かにお金を使うときには、それが投資なのか、消費なのか、浪費なのかを徹底的に考えました。この3つの使い分けは、後に私の経営の考え方の根幹の1つになっていきます。

ただお金を使わない、というだけでは会社はうまくいかないのです。投資がまさにそうです。投資をしなければ、その先のポテンシャルがなくなってしまう。だから、やらなければいけない。

しかし、今そこにお金を投資してもリターンがない、というものに対しては、とことん削るべきです。単なる消費、もっといえば浪費をやめる。これだけで、会社のお金の使い方はずいぶん変わります。

このとき、幹部のみんなで考えて、経費を徹底的に見直していきました。苦しかったですが、厳しいときにやるべきはこれだと思いました。

その後、だんだん業績が戻ってきたとき、その効果が現れました。会社は、筋肉質になっていて、売り上げが上がれば大きな利益が出る体質に変わっていたのです。厳しいときに真正面から向き合って、課題に対峙していったからこそ、強い会社になれた。もっといえば、ピンチがやってきたからこそ、筋肉質の会社になれたのです。

■苦しい時に何をしたかで10年後の自分が決まる

さらに、売り上げが上がらない中、同じことをやっていてもダメだということで、新たなビジネスチャンスを作っていこうと、いろんな種を蒔(ま)きました。

当時の事業は営業のアウトソーシングでしたが、お客さんは携帯電話業界やパソコン業界など、デジタル家電の業界が多かった。だから、ITバブルの崩壊の影響をもろに受けたわけですが、そのノウハウを使って横展開していくことを考えました。

クレジットカードや付加価値サービスなど、これもまたうまくいきました。新しい領域で売り上げを大きく上げることができ、後に100億円を超える売上高を記録することになるのです。

コロナの余波は、しばらく続いていくことになるでしょう。しかし、この苦しい時代に何をしたかが、後に大きく影響してきます。会社でも、個人でも。この1~2年のアクションが、この先10年後の自分を大きく変えることになるということです。ピンチのタイミングというのは、とても大事な時期なのです。だから、しっかり考えて動いていくべきなのです。

振り返ってみれば、私の場合は厳しい時代に立ち上げたもののほうが、明らかにうまくいっている印象があります。景気のいいときに始めたものではなく、不況のときや危機的状況のときに始めたものこそ、うまくいく。

その意味でも、今は大きなチャンスの時期がきていると思っているのです。

晴海埠頭から見た竹芝桟橋側面
写真=iStock.com/Moarave
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Moarave

■「やみくもにやるのはどうなのか」と考える人へ

時間もできて、何かをしたい。でも、やみくもにやっても、どうかと思っている。何か将来の方向性を定めて、それに向かって実験なりをしていったほうがいいのではないか。

こんな質問をよく受けることがあります。もちろん、方向性が定まっていれば、それにこしたことはありません。しかし、何度も書いているように正解のない時代になってしまった。今は方向を定めようにも、定めるのはとても難しいと思うのです。

あまりに決めつけてしまうと、むしろそれはリスクになってしまうかもしれない。その意味では、自分の本質、一番大切にしたいものは変えてはいけないけれど、手数はいっぱい打てばいいと思っています。

実験には失敗もあります。こだわり過ぎてしまうと、これが失敗したら、もうすべておしまい、などということにもなりかねない。賭けすぎると、こういうことが起きるのです。だから、手数はいっぱい打っておく。

バックスグループ時代にも、何か新規事業をスタートしたら、その新規事業を伸ばすための施策をとにかくたくさんリストアップして、それを次々に打っていきました。

最初から、これをやればうまくいく、ということがわかっていればいいですが、そんなことがわかるはずがない。だから、とにかく手数を打った。どれかがうまくいけばいいや、とやっていったのです。

■手数を打たないと、本当に向いているものはわからない

そして、うまくいきそうなことがわかると、そこにパワーをつぎ込んでいった。手数を打ってみないと、やはりわからないのです。自分たちに向いているかどうか、ということも、やってみないとわからない。

こんなのうまくいくのかな、と一見、思えるものも、やってみたら思ったよりも面白いことになりそうだ、というものもあった。

個人での取り組みもそうです。手数をたくさん打ってみないと、何が本当に向いているのかは、わからない。それが現実だと思うのです。

私はずっと本を出したいと思っていて、翻訳書として初めての本『パーソナルブランディング 最強のビジネスツール「自分ブランド」を作り出す』(東洋経済新報社)を出す2年ほど前に、別の出版社の有名編集者とやりとりをする機会がありました。いろいろ話しましたが、私の言いたかったことは伝わらなかった。それで、別の出版社の別の編集者に当たってみた。手数を打ったわけです。

テーブルの上にペンと手帳とノートパソコン
写真=iStock.com/undrey
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/undrey

そして1冊目が出た後、たまたま雑談で本の読み方の話をしたら、「それは面白いですね」ということになりました。こうして出たのが、『レバレッジ・リーディング 100倍の利益を稼ぎ出すビジネス書「多読」のすすめ』(東洋経済新報社)です。私の中では、本の読み方が本になるなんて、まったく想像もしていなかった。

多くの人が、きっと私のような本の読み方をしていると思っていたのです。ところが、違った。そして、私の本の読み方は支持されて、本は思わぬ大ヒットになったのです。

■なぜプロデュースがうまくいくのか

何が評価されるのか、何に向いているのか、などと簡単に決めるべきではない、と改めてこのとき思ったのでした。思ってもみないことが他人に評価されることもあるし、自分では大したことがないと思っていることが他人には驚くべきことだったりもする。

だから、私は本のプロデュースをするときには、これまでに本を出したことのない人ばかり担当しています。ミリオンセラーになった『伝え方が9割』(ダイヤモンド社)の佐々木圭一さんもそう。

彼らは、どんなものが売れるか、本を出したことがないので知らないのです。私はずっと本の仕事をしてきて、この人のコンテンツで売れるのはここだな、というツボがわかる。だから、プロデュースがうまくいくのだと思っています。

その代わり、驚くほど時間をかけて話を聞きます。何十時間も聞く。そこから、売れそうな内容を見つけてきて、切り口を考え、骨子を考え、編集者とマッチングさせる。

この方法はとても有効だと思っています。なぜなら、初めて本を出す人には自分の何が売れるコンテンツなのか、わからないから。書きたいと思っているようなものは、だいたいうまくいかないものです。自慢話になってしまったり、自伝のようになってしまったり。これでは誰の役にも立たない。

読者にとって、何が最も魅力になるのか。それは第三者だからわかる。このくらい、事業や企画の方向というのは、難しいということです。だから、手数を打っていったほうがいい。いろいろな実験を、していくことです。

■「仕事をハードにやらなくていい」という価値が支持されている

アメリカでは、20代、30代でリタイアする生き方「FIRE(Financial Independence Retire Early)」ムーブメントが注目されています。経済的に独立して早期退職することを目標とするライフスタイルです。

昔から、ウォール街で大きく稼いでリタイアして、フロリダで遊んで暮らす、などという生き方がありましたが、今のリタイアはそうではない。大きく稼いでリタイアする、というのとは違います。

無駄遣いを一切しないでお金を貯め込み、ある程度まとまったら、その運用利回りを生活費にあてる。仕事は辞めてしまうか、ライトなものにする。

大きな収入があるわけではありませんから、ここでは支出をとにかく抑えることがポイントです。派手な暮らしをしたりしない。その代わり、それによって経済的な自由を手に入れることができる、というわけです。

もうこれで、何かにとらわれることがない。無意味に思える仕事をしなくていい。リタイアが目的主体というよりも、仕事をハードにやらなくていい、という価値が支持されているのではないかと思っています。

■高い生活費のために無駄に働いていないか

その意味で、見直さなければいけないのは、支出の部分です。支出をいかに選択して絞り込めるか。できるだけそれをミニマルにしていくことが、幸せなライフスタイルを作っていくためには、とても大事になってきています。

それこそ、現実的に大変な資産家になってリタイアすることができる人というのは、世の中の1%もいないでしょう。そんな中で経済的な自立を実現させるには、やはり支出を徹底的に考えた上でコントロールできるか、にかかってきます。

本田直之『パーソナル・トランスフォーメーション コロナでライフスタイルと働き方を変革する』(KADOKAWA)
本田直之『パーソナル・トランスフォーメーション コロナでライフスタイルと働き方を変革する』(KADOKAWA)

そしてそのためにも、自分にとって何が大事なのかを明らかにし、ライフスタイルをしっかり考えて生活することが大事になるのです。

私が主宰するオンラインサロン「Honda Lab.」でも、メンバーから「収入が減っても、あまり影響がなかった」というコメントがありました。しっかり自分を見つめることで、本当に必要なものが見えてくるのだと思っています。そして、実はそれさえ手に入ればいいのです。

実際のところ、無駄に高い生活費をキープするために、一生懸命、無駄に働いている人がものすごく多い印象があります。それは多くの人が、実は自身で感じているところなのではないでしょうか。本当にそこまでの生活費をかける必要があるのか。無駄に振り回されていないか。無駄に嫌な思いをしていないか。無駄に働かされていないか。

コロナの到来は、そうしたライフスタイルを根本的に見直す、いい機会をくれたのではないかと思うのです。

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本田 直之(ほんだ・なおゆき)
レバレッジコンサルティング代表取締役
日米のベンチャー企業への投資育成事業を行いながら、年の5カ月をハワイ、3カ月を東京、2カ月を日本の地域、2カ月をヨーロッパを中心にオセアニア・アジア等の国々で過ごし、各地で食およびサウナを巡る旅をしている。食やサウナのイベントのプロデュースも行う。

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(レバレッジコンサルティング代表取締役 本田 直之)

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