「嫌いな人にまで好かれようとする」いつか"爆発してしまう人"の特徴
プレジデントオンライン / 2021年4月19日 8時15分
■「人間関係の悩み」2パターン
働く人にとって、人間関係の悩みはつきません。確かに「会社に行きたくない」というほど会社に嫌いな人がいるという人も少なくありません。
人間関係の悩みのパターンは2つ。ひとつは上司との関係で、上司が攻撃的だったり、ネチネチ揚げ足をとったりするようなタイプで、自分が傷つくパターン。それで「もう会社に行きたくない」という人はけっこういますね。
もうひとつのパターンは、時間を守らない、期限をスルーするといった、ルーズな人がいて、ストレスがたまるというパターン。そういうタイプに対しては、こいつとは関わりたくないという気持ちが強くて、会社に行きたくないというほどではないかもしれません。
■自分を変えたほうが楽
こういった職場の人間関係で悩まされている人に、大前提としてお伝えしたいのは、相手を変えようとしたり、相手が変わることを期待したりしないこと。これは絶対にやめたほうがいいです。
攻撃的な人にそれがパワハラであることに気づかせるのは時間がかかりますし、時間を守らない人に時間を守りなさいと正論を振りかざしても、変わらない人は変わりません。相手を変えようと、こちらが時間やエネルギーを注いでも、ムダに終わることが多い。ここは自分の受け止め方を変えるほうが正解です。変わるなら相手ではなく自分。そのほうが、よほど楽です。
■意外に多い「嫌いな人に好かれようとしてしまう人」
しかし、自分の受け止め方を変えるときに、その変え方を間違うことがあるので注意が必要です。たとえば、攻撃されたり、揚げ足をとられたりして、自分が傷ついているのに、それを乗り越えようとして、相手のいいところを探そう、仲良くしようと思う人がいます。
嫌いなのに好かれようとするのは、おかしな話。しかし会社の人間関係においては、そうしないと生き残れないという側面もあるせいか、そういうことをしてしまう人は少なくありません。これは明らかに変え方が間違っています。
なぜ、そういうことをしてしまうのか。理由の一つは、もし相手と仲良くなれば、自分への攻撃がなくなるのではないかと淡い期待を抱いてしまうこと。もう一つは相手を拒否したり、嫌ったりすることがいけないということが考えの根っこにあることです。もともと僕たちは、小さい頃から人を差別してはいけない、人の好き嫌いはなくせ、人と仲良くしなさい、と言われて育ってきているので、人に対して嫌な思いを持つことや拒否することはダメという思考回路になってしまっています。
■いつか、どこかで爆発してしまう
しかし、それは自分の「嫌い」という気持ちにふたをし続けているだけですから、自分の中に負のエネルギーはたまる一方です。結局、いつかどこかで爆発してしまうでしょう。それが本人の前なのか、ひょっとしたら家で自分のパートナーや子どもの前かもしれません。爆発まではいかなくても、イライラしたり、怒りやすくなったり、何かしら弊害が出てしまうので、そういう方法で自分の変えるのは、絶対にやってはいけないことなのです。
自分の気持ちを抑え込みやすい人は、もともと自信がない、自己肯定感が低いといった特徴があります。でも人が人を嫌いになることは、全く悪いことではありません。嫌いなものは嫌いで、それ以上でもそれ以下でもない。相手が嫌いなら嫌いと認めて、変な加工はしないことが大切です。
そのうえで、物理的にも心理的にも距離をとりましょう。物理的な距離をとるには、とにかく「近づかない」。心理的な距離は、自分が鳥になったつもりで空から、その人と自分との関係を見る「メタ認知」がおすすめ。メタ認知を行うと、相手のことがちっぽけな存在に見えて、何を言われても受け流すことができるようになります。
■何もしない時間を持とう
とはいえ職場の人間関係は、すぐに変わるものではありませんから、自分なりの乗り越え方を知っておくことが大切です。それは自分の価値観で「幸せだな」という時間をなるべく多く持つこと。もちろん仕事以外のプライベートでもOKです。幸せだなと思えることを生活の中でどんどん足す。加点方式で幸せポイントを増やして、会社がいやだ、行きたくないという濃度を薄めていくしかありません。
脳が幸せと感じるポイントは、次の3つです。
①ワクワク楽しんでいるとき
仕事でも趣味でもワクワク楽しんでいると自分が感じていると、脳が幸せを感じます。
②自分の存在が認められているとき
自分が認められている、そのままでいいんだ、と承認欲求や存在欲求が満たせていると、誰もが幸せを感じます。
③リラックスしているとき
寝る瞬間やペットと遊んでいるときなど、穏やかにリラックスして過ごしているときは幸せを感じます。
いちばん手軽なのは③。睡眠時間をたっぷりとったり、何もしない時間を過ごしたりといったことは、手軽に幸せになれるおすすめの方法です。ぜひ積極的に取り入れていきましょう。①や②については、趣味のサークルや資格の学校など、仕事とは別のコミュニティで居場所をつくると、満たされるでしょうね。
この3つのどれかで自分の幸せポイントを加算していけば、嫌な人間関係も相対的に気にならなくなり、会社に行きたくないという気持ちも少しずつ薄れていくはずです。
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産業医・精神科医
島根大学医学部を卒業後、様々な病院で内科・外科・救急科・皮膚科など、多岐の分野にわたるプライマリケアを学び、2年間の臨床研修を修了。その後は、産業医・精神科医・健診医の3つの役割を中心に活動している。産業医として毎月約30社を訪問。精神科医・健診医としての経験も活かし、健康障害や労災を未然に防ぐべく活動している。また、精神科医として大阪府内のクリニックにも勤務
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(産業医・精神科医 井上 智介)
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