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「予備軍含め2000万人」日本で糖尿病が激増した最大の原因は国の失策にある

プレジデントオンライン / 2021年6月25日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/vgajic

なぜ糖尿病は治らない病気とされているのか。医師の水野雅登さんは「国や専門家が作った糖尿病の標準治療のガイドラインに原因がある」という――。

※本稿は、水野雅登『糖尿病の真実』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

■ガイドラインを守った治療をした結果、悪化した

私が医師になるべく研修を終え、ようやく外来診療を一人で始めた頃、「あること」を実感するようになりました。それは、糖尿病の患者さんだけ、かなりのスピードで悪化していくということです。

当時の私は、「ガイドライン至上主義」といえるほど、治療のガイドラインの内容を守っていました。そして、その悪化していった患者さんたちも、その内容に沿った運動や食事をしていました。それなのに、改善するどころか、どんどん悪化していったのです。

私の実感は、実際に数字にはっきりと表れています。現代は日本国内の、糖尿病が疑われる人と可能性を否定できない人を含めると、2000万人にもなる時代です(平成30年版厚生労働白書より)。1997年には1370万人でしたので、いかに急激に増えているかが、よくわかります。

そして、糖尿病と診断されたときに、患者さんから最もよく受ける質問が「一生、薬をやめられないんですよね?」です。これだけ糖尿病患者や、その可能性がある方が増えている状況なので、身近に糖尿病の人がいて、ずっと薬を飲み続けているのを見聞きしてきたのでしょう。

「薬をやめられない」ということは、「治らない」ということです。このため、よく「糖尿病は治らない病気」「一生付き合っていく病気」といわれます。それはその通りで、現代の標準治療では治らないし、薬もほとんどやめられません。とはいえ、「落ち着いた状態にする」ことも非常に大切なので、従来の標準治療が果たす役割は大きいものがあります。また、糖尿病が悪化したときの救急対応でいえば、新旧の治療法はあまり違いがありません。

つまり、糖尿病に関する従来の標準治療は、急性期に関しては非常に優れた治療法だということです。逆に、慢性期や予防に関しては、非常に限定された効果であるといえます。

■糖尿病患者が増え続ける、一番の要因

治せない、薬がやめられない標準治療だけが、糖尿病人口の増加に影響したわけではありません。むしろ、標準治療を含めた治療は、病気になってからの話です。糖尿病人口が増えたのにはその他の要因があります。その一つが、ここまでにも何度もお伝えしたように、世の中に糖質があふれていることです。

テレビやSNSには、常に美味しそうなスイーツやスナック菓子、ラーメン、パスタなどの写真や映像が流れています。コンビニやスーパーへ行けば、それらの商品がずらりと陳列されています。思わず目が留まり、手に取り、買い物かごに入れてしまう、という経験は誰もがあることでしょう。

人間には「見たら欲しくなる」という性質があります。脳内では糖質を見ただけで、ドーパミンがドバドバ分泌され、「欲しくてたまらない!」と、なります。人間のこの性質を利用して、企業は日々、宣伝を行っています。マーケティングのプロたちが、あの手この手で買わせるための策を次々に打ち出してくるのですから、一度目にしたらまんまと乗せられる、と思っておきましょう。目にしないのが根本対策です。

そもそも、糖質は依存性の強い栄養です。購入するコストはさほど高くなく、摂取することである程度の満足が得られ、さらにまた欲しくなる。企業が売り上げを伸ばすには、格好の条件が揃っています。

こうした条件が揃う中、従来の標準治療は、糖質の摂取を止めるどころか、むしろ「とれとれ!」と言ってきました。従来治療の食事指導は「全エネルギーのうち6割は炭水化物からとりなさい」という内容になっています。血糖値を直接的に上げるのは、糖質だけです。それにもかかわらず、食事の半分以上を糖質にせよ、と指導しています。

糖質オフが普及した近年では、さすがに「スイーツやジュースは控えましょう」となってきましたが、まだその程度です。

公園でヨガのポーズをとる女性
写真=iStock.com/maruco
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maruco

■妊娠糖尿病の入院食にスイーツが出されている

インスリン抵抗性が高まる妊娠中の場合、糖質過多な食事の影響は、さらに深刻になります。妊娠中は血糖値が高くなりやすいことは知られています。実際に、それまで問題がなかったのに、妊娠してから血糖値が上がりやすくなり、妊娠糖尿病と診断される妊婦さんも少なくありません。

ところが、妊娠糖尿病で入院中の妊婦さんには、血糖値を下げるためのインスリン注射が投与されると同時に、血糖値を上げるスイーツやお菓子などが出されています。間食として、クッキー、プリン、フルーツ、砂糖入りヨーグルト、パン、おにぎり、せんべいなど……中には、ミニカップラーメンが出る病院もあるといいます。

当然ながら、食事のたびに血糖値はガツンと上がります。そして、入院中なので「食べたかどうか?」の食事摂取量が病院のスタッフから毎食チェックされ、残すと苦言を呈されます。「食べることも治療のうちですよ」といった説明がなされます。そして、食べて血糖値がガツンと上がれば、インスリン注射を打たれます。そのようなことが積み重なり、妊娠中に大量のインスリン注射を打つと、巨大児や流産のリスクも高まります。

最近では、こうした治療を見直す医療機関も出てきましたが、いまだに、こうした従来治療の方針で提供される治療と入院食を行っている病院が多勢を占めています。

このように、生理的にも、社会的にも、経済的にも、「糖質過多の土台」ができあがっています。その結果、糖尿病になると、従来の標準治療によって「糖質を抜くな、しっかりとれ」という指導がなされます。

その指導に従い、糖質をとればとるほど、血糖値は上がり、薬は増えていくのです。

■国が糖尿病をつくっている

先のように「多くの場合で薬は増えるし、治らない」という従来の標準治療の方針を決めたのは、いったい誰? というと、それは国です。つまり、「糖尿病とその予備軍2000万人」という現状をつくった責任の一端は、国にあるといえます。

たとえば、「日本人の食事摂取基準」は厚生労働省が公表している基準です(厚生労働省、日本人の食事摂取基準、2020年版)

そこでは「エネルギー量」として「kcal(キロカロリー)/日」が採用されています。つまり、いまだに「カロリー理論」などという時代遅れの概念が採用されているわけです。人体では食べ物をとったときに「酵素的な代謝・消化」が行われているのに、「食べ物を燃やして水をどれだけ温めるか?」という見当違いの考えが使われています。

そして、この「日本人の食事摂取基準」は、保健施設や事業所、学校給食など、日本国内のあらゆる所で使われています。そして、糖尿病の標準治療で行われる食事指導でも採用されています。

しかし、エネルギーは「PFC量」でみるのが妥当だと私は考えています。Pはタンパク質、Fは脂質、Cは炭水化物もしくは糖質です。これらは、お互いに交換できず、互換性がほぼない栄養素です。

100kcalの肉、100kcalのバター、100kcalのパンは、同じカロリーですが、食べた後の人体での働きは全く違います。カロリーという見当違いな考えで乱暴にひとまとめにするのは、大きな間違いです。ナンセンスかつ、誤解を生みます。

食品表示も「~kcal」ではなく、「タンパク質~、脂質~、糖質~」と表示すべきだというのが、私の考えです。

PFC量での考え方が広まれば、こうした「間違いが判明した旧時代の考え」がいかに時代遅れなのかが、理解されていくでしょう。

■「炭水化物6割」はどこからきたのか?

このように、国が公表している基準が古い考えのものだからといって、「国が全部悪い!」と言うのは間違いです。国が健康や医療に関して方針を決めるときには、それぞれの専門家を招集して「検討会」や「委員会」などをつくり、そこで方針をつくっていきます。もちろん、最終的に決めるのは、大臣や役職のある公務員ですが、その手前のところでは「専門家たち」が大きな影響力を持っているわけです。

たとえば前記の日本人の食事摂取基準の場合は、「日本人の食事摂取基準策定検討会」が報告書を作りますが、ほぼ、その報告書の通りに基準は決定されます。検討会のメンバーはほとんどが大学教授で、他には准教授や、大病院の病院長などの先生方が名を連ねています。

その専門家たちが、「炭水化物で全体の6割を摂取せよ」というエネルギー摂取を推奨してきました。最近になって、4~6割と、少しだけ糖質オフの方向にはなってきています。しかし、長年にわたる「炭水化物6割」の考えは、医療現場に深く根づいていますし、メディアでもそう喧伝されてきました。

この「炭水化物6割」が、肥満、糖尿病、メタボへの大きな影響を及ぼしてきたのです。

つまり、先の専門家たちが、その責任の重さを心する立場といえます。

■ガイドラインが変わるのを待つ必要はない

国内の糖尿病患者とその予備軍2000万人の責任者は、まだいます。それは、健康を他人任せにしてきた人、全員です。

世の中の原理原則として「~のせい」と言っているうちは、不満がたまり、状況は好転しないどころか悪化していきます。なぜなら、「自分では状況を変えられない」と、自分で思い込んでいる、ということに他ならないからです。「思い込む」ことで、よかれ悪しかれ、現実もその通りになっていきます。「国のせい」「標準治療のせい」と言っているだけではいつまでも状況は変わらず、悪化していくだけです。

ではどうすればよいのかというと、解決の方向性は、じつにシンプルです。逆の「思い込み」をすれば状況は変わります。つまり「すべては自分の責任」「状況は変わる・変えられる」という考えです。自分が変わることで、周囲もまた変わっていきます。

これを糖尿病に当てはめてみると、医師が変わるのを待つとか、国の方針が変わるのを待つ、ガイドラインが変わるのを待つ、という「他人任せ」をやめることになります。

ただし、現在、薬を服用している人は、主治医への相談が必須です。血糖値を下げる薬を使いながら糖質オフをすると、命に関わる重篤な低血糖を起こす危険があるためです。必ず主治医と相談してください。

■主治医を変えるのも一つの手

もし、主治医が話を聞かないタイプなら、主治医を変えるのも一手です。幸い、日本の保険制度では、自分で自由に医療機関を選ぶことができます。もし、主治医が紹介状を渡すことをしぶるようなら、「セカンドオピニオンを受けたい」と言うことで、ほぼ100%、紹介状を書いてくれます。「セカンドオピニオン」という単語は、ポジティブなイメージがあり、その言葉を出すだけで、医師の心理的抵抗が大幅に軽減されるからです。

紹介状の発行は、法律的な義務がないため、医師が拒否する場合も多くあります。しかし「セカンドオピニオンを受けたい」とだけ伝えれば、比較的すんなりと書いてもらうことができます。その際には、余計なことを言わないことも大切です。受診先が決まっていない場合には、「まだ決まっていません」と、正直に伝えましょう。

水野雅登『糖尿病の真実』(光文社新書)
水野雅登『糖尿病の真実』(光文社新書)

もし、今現在、どんどん病状が進行している場合は、こうしたアクションをすぐに起こすことをおすすめします。現在の糖尿病の標準治療のガイドラインはすぐには変わりません。10~20年単位の年月がかかってしまいます。

糖質オフは数年前まで、「風変わりなダイエット法に過ぎない」という認識でしたが、その劇的な効果から、徐々に一つの効果的な治療法として認識が広がってきました。日本の学会も当初は「断じて認めない!」という姿勢でしたが、最近は態度を軟化させつつあります。実際、日本もアメリカも、糖尿病学会のトップの医師は、糖質オフへと舵を切りました。

本稿をお読みのあなたも、新しいガイドラインを待つ必要はありません。

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水野 雅登(みずの・まさと)
医師
1977年、愛知県生まれ。2003年に医師免許取得(医籍登録)。日本糖質制限医療推進協会提携医。著書に『薬に頼らず血糖値を下げる方法』(アチーブメント出版)、『医学的に内臓脂肪を落とす方法』(エクスナレッジ)、『糖質オフ大全科』(主婦の友社)など多数。

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(医師 水野 雅登)

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