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「目がかすむけど少し様子を見よう」そこから失明に至った人たちの共通点

プレジデントオンライン / 2021年7月30日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Dean Mitchell

目の病気に早く気付くにはどうすればいいのか。眼科医の梶原一人さんは「サインを見逃さないことが大切だ。例えば、モヤがかかって見えるときは眼底の動脈が詰まっているサイン。一刻も早く対処しないと失明する可能性が高い」という――。(第2回/全2回)

※本稿は、梶原一人『ハーバード×スタンフォードの眼科医が教える 放っておくと怖い目の症状25』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。

■1 目がかすむ

Q 長時間仕事に打ち込んで「目を酷使したな」と感じたときなど、ときどき目がかすむことがあります。

A 「目がかすむ」と訴える患者さんで一番多いのが、これも「ドライアイ」なんです。かすんで見えても、数回、まばたきするとピントが合うようであれば、ドライアイと考えていいでしょう。対策としては、まばたきをこまめにしたり、15分に1回程度、手を休めて目を10秒ほど閉じたり、保湿成分の入った目薬を指定の回数さしてみたりしてください。

あとは、メガネやコンタクトレンズの度数が合っていない人も、ときどきいます。遠くはかすむけれど、近くのテレビ画面は見える。または、テレビ画面がかすんで見えるけど、ちょっと近寄ると見えるのであれば、よく見えるように設定した度数と見たいものがズレているだけでしょう。

Q 「目がかすむ」というのは、何かの病気の可能性もあるのでしょうか?

A 白内障でも「視界が全体的にかすむ」といった症状は現れます。白内障は、目のレンズである水晶体が濁って見えにくくなる病気ですが、アトピー性皮膚炎や糖尿病などが原因の場合を除くと、ほとんどが加齢によって起こります。そのため、45歳以上の人に多く、80歳を超えるとほとんどの人が白内障を経験します。

しかし、白内障は決して怖い病気ではありません。なぜなら、どんなに症状が進んでも失明に至る病気ではなく手術で治るため、特殊な場合を除けば手遅れにはならないからです。手術では、濁った水晶体を超音波で砕いて吸い出し、その代わりに人工の眼内レンズを入れます。手術は日帰りも可能です。

「白内障はどのくらい悪くなったら手術を受ければいいですか」とよく聞かれますが、見え方に不自由していなければ、ご自身で決めていただいて構いません。クルマを運転する人は、免許を更新できる視力がなくなる前に手術を受けたほうがいいでしょう。

■「目のかすみ」で一番恐ろしいのが緑内障

Q 目のかすみで白内障以外の病気も考えられますか。

A はい、考えられます。白内障より恐ろしいのが、失明原因ナンバーワンの「緑内障」です。一般的に緑内障は、よく「視野が欠ける」病気だといわれますが、そう聞くと多くの人は、お皿の端が欠けるように、常に見えない部分が存在すると想像するでしょう。

しかし実際は、ときどきかすんで見えると感じることや解像度が徐々に落ちるように全体的に見えづらくなることが多く、はっきりとした視野の欠けを自覚する頃には、緑内障が相当進んでしまっています。「目がかすむ」と感じる原因がもし緑内障であれば、すでにある程度進行している可能性が高いです。

目がかすむと感じたら
・まばたきを数回するとピントが合うようであれば、ドライアイの可能性大。
・ドライアイの症状を軽減するため、こまめにまばたきしたり目を閉じたり、防腐剤の入っていない涙に近い成分の目薬を使ってみる。
・メガネやコンタクトレンズを装用している人は、度数が適切か確認。
・白内障が疑われる場合は、レンズの濁りがひどくなる前に眼科を受診。
・白内障は急ぐ必要はないものの、見えにくくて困る場合は手術を検討。
*目がかすむ場合、緑内障の可能性もあるので必ず眼科を受診

■2 ぼんやりとモヤがかかったように見える

A 「モヤがかかったように見える」と訴える患者さんは、どんな原因であれ「目がかすむ」場合よりも重症なことが多いです。モヤがかかったように、ぼんやりとしか見えない場合、白内障や緑内障、それも“末期”であることが疑われます。

また、糖尿病が原因で起こる「糖尿病性網膜症」も多いです。糖尿病になると、血液中の糖が増えて血管がもろく、破れやすくなります。目の奥の網膜にある血管は、特に高密度に張り巡らされているので、詰まったり出血したりしやすくなります。「糖尿病性網膜症」は放置すると永続的な視力低下の原因となり、受診をためらっているうちにあれよあれよという間に進行し、最悪の場合、失明に至ることもあります。

出血以外でも、血管から水分が漏れ出して、大切な網膜がじわりじわりと弱っていく黄斑浮腫」という状態になると、「モヤがかかったように見える」ようになり、こうなるとなかなか回復することがありません。

さらに血管が障害を受けて機能しなくなると、体は酸素や栄養を届けようとして別に新しい血管をつくり始めます。この「新生血管」はとてももろく、出血などが起こりやすいため、しばしば大出血を起こします。その結果、急にぼんやりとモヤがかかったように見えるようになります。

■モヤがかかって見えるときは眼底出血のケースが多い

Q なるほど、ぼんやりとしか見えないときは、重篤な病気が隠されている可能性が高いのですね。

A そうです。モヤがかかったように見えるのは、眼底に出血しているケースが多いです。眼球の一番奥にある網膜と、そのさらに後ろ側にある構造を総称して「眼底」と呼びますが、網膜の手前にあって眼球内を満たす透明なゼリー状の「硝子体」を含めて、広い意味で「眼底」と呼ぶこともあります。そのため、網膜や硝子体に出血が起こることを「眼底出血」といいます。

出血が少量であればまったく症状が出ないこともあります。しかし、網膜の中心にあって、モノを見るための視細胞が集中している「黄斑部」が出血でおおわれると、真っ黒で見えない部分が出ます。

また、卵の白身のようなゼリー状の物質である「硝子体」に出血が及ぶと、黒いもやもやした影が見えたり、墨汁を流したようにぼんやりとしか見えなくなったりします。

「糖尿病性網膜症」で網膜が出血するのは、代表的な眼底出血の1つです。

目を診る医師
写真=iStock.com/FG Trade
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/FG Trade

■眼底の動脈が詰まったら一刻を争う

Q 眼底出血以外でも急に見えなくなることはありますか?

A 眼底出血の主な原因の1つは、目の奥の血管が詰まることです。「血栓」(血のかたまり)によって血管が詰まることがありますが、その背景には「動脈硬化」があります。「高血圧」「糖尿病」「高脂血症」などの生活習慣病を抱えていると、動脈の血管壁が硬く厚くなり柔軟性が失われ、動脈硬化が進みます。さらに血管の内側(内皮)に脂肪分が蓄積していくと、血栓ができやすくなるのです。目の外から血流に乗って血栓が流れてきて、目の動脈で詰まると、出血は起きませんが急に見えなくなります。

私のクリニックにも「昨日まで普通に見えていたのに、突然、ぼんやりとモヤがかかったようになりました」と来院された40代の女性がいました。この女性は目の動脈が根本で詰まってしまう「網膜中心動脈閉塞症」という失明率が非常に高い病気でした。私は同じ病気の患者さんを数多く診てきましたが、ほとんどの人は失明しています。失明した人に共通するのは「見えにくいけど少し様子を見よう」と考えて、すぐに眼科を受診しなかったことです。

網膜は脳と同じ神経細胞でできているので、血流が止まると数時間で死滅してしまい、再生不可能となります。様子見をせず、すぐに眼科を受診したうえで、適切な処置を受けても間に合わないことさえ多いのです。

この40代女性の場合、朝症状に気づいて、午前中には私のクリニックを受診。すぐに血栓溶解薬を点滴するなどして治療し、幸いにも視力を失うことはありませんでした。私の眼科医人生の中で、この病気で失明しなかったのは、この女性を含めて3人だけです。この女性は、その後も3人の娘さんとともに、定期検診を受けています。

「急にぼんやり見えるようになった」と、突発的に起こる症状は失明につながる病気が多いです。どうか様子見はせず、症状を自覚したらすぐに眼科を受診してください。

視界がぼんやりとしてきたら
・一刻を争う場合もあるので「様子を見よう」などと思わず眼科を受診。

■3 視界が白く濁る

Q 「目がかすむ」「モヤがかかったように見える」と「視界が白く濁る」は、何が違うんですか?

A 患者さんにうかがうと、それぞれの見え方には違いがあります。「目がかすむ」と訴えるときは、映像の解像度が少し悪くなった状態。「モヤがかかったように見える」という場合は、それよりももっとぼんやりとして見えづらくなっている状態であることが多いようです。「視界が白く濁る」という場合は、その表現の通り視界が白っぽくなっています。

Q 「視界が白く濁る」のは、やはり白内障が多いのでしょうか。

A そうですね、代表的なのは白内障です。でも、白内障以外の病気の可能性もあります。白内障は手術をすれば治るとはいえ、白内障だと決めつけて「手術するまで、このままでいいや」などと放っておかないでほしいです。

Q 白内障以外には、どんな病気が考えられるのですか。

A 高血圧の人は、血管にかかる圧力が高く、眼底にある動脈が硬くなったりくびれたりと変形しがちです。そうやって、もろくなった血管から浸出した成分によって網膜にむくみが生じた場合、白く濁って見えることがあるんです。糖尿病の場合も同様です。血液中にある過剰な糖分が、網膜の血管に内側からダメージを与えることが原因でむくみが起きると、視界が白く濁ります。

■重篤な病気が隠されている可能性も

Q ほかにもまだ視界が白く濁る病気はあるのでしょうか。

A それでは、目の表面から奥のほうに向かって、どんな病気の可能性があるか、おさらいを兼ねて順番に説明してみましょうか。

梶原一人『ハーバード×スタンフォードの眼科医が教える 放っておくと怖い目の症状25』(ダイヤモンド社)
梶原一人『ハーバード×スタンフォードの眼科医が教える 放っておくと怖い目の症状25』(ダイヤモンド社)

まず、目の表面をおおう“涙の膜”に問題があって、白く濁って見えることがあります。この原因はドライアイです。次に、茶目の部分である虹彩が炎症を起こしている「虹彩炎」の可能性もあります。範囲が広い場合は「ぶどう膜炎」と呼ぶこともあります。

さらにその奥にある、目のレンズ「水晶体」が白く濁るのが白内障ですね。そして、高血圧や糖尿病で網膜に問題が起きたり、緑内障が中心部に進行してきたりしても、白く濁って見えたり暗く見えたりすることがあります。最終的に網膜に届いた光の信号を、脳に送るケーブルの役目を果たす視神経に炎症が起きている「視神経炎」でも視界が白く濁ることがあります。

Q どれも重大な病気なのでしょうか。

A ドライアイと白内障以外は、放っておくと失明に至る可能性があります。やはり「白く見える=白内障」と決めつけないことが肝心ですね。

「視界が白く濁る」と感じたら、やるべきこと
・「見え方がいつもと違う」「視界が白く濁る」などと感じたら、すぐに眼科を受診。

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梶原 一人(かじわら・かずと)
眼科 かじわら アイ・ケア・クリニック院長
慶應義塾大学医学部卒。ハーバード大学研究員、スタンフォード大学リサーチ・アソシエート。日本人初のハワード・ヒューズ・メディカル・インスティテュート奨学生。北里賞受賞。1959年東京都品川区生まれ。慶應義塾大学医学部卒業後、臨床眼科学を学び眼科医に。1990年にハーバード大学に研究員として留学。在職中に科学雑誌『ネイチャー』『サイエンス』に論文を発表する。1994年、スタンフォード大学医学部・神経生物学教室にリサーチ・アソシエートとして移籍。1995年、東京大学医科学研究所・化学研究部の客員研究員を兼任し、帰国後は理化学研究所脳科学総合研究センター(神経再生研究チーム・チームリーダー)。2006年、「眼科 かじわら アイ・ケア・クリニック」開設。

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(眼科 かじわら アイ・ケア・クリニック院長 梶原 一人)

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