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「こまち2両、はやぶさ3両が連結したら何両?」慶大准教授をハッとさせた5歳児の回答【2020年BEST5】

プレジデントオンライン / 2021年12月22日 10時15分

慶應義塾大学准教授・大木聖子さん(地震学者) - 撮影=堀隆弘

2020年(1~12月)、プレジデントオンラインで反響の大きかった記事ベスト5をお届けします。教養部門の第5位は——。(初公開日:2020年10月8日)
コロナ禍でわが子と向き合う時間が増えたという人も多いだろう。慶應義塾大学准教授の大木聖子さんは、鉄道好きの5歳の息子の言葉にハッとさせられる経験をした。それは「こまち2両、はやぶさ3両が連結したら何両?」という質問への回答だった——。

■緊急事態宣言中、息子を肩車しながらオンライン講義した

息子はいま5歳。保育園の年長さんです。緊急事態宣言中も保育園はやっていたんですけど、私も夫も研究者でリモートワークができるので、5月いっぱいは保育園を休ませて、家族3人で過ごしました。

私たちが仕事をしている間、ずっとテレビやYouTubeを見せておくのはいやだったので、夜中の2時に起きて仕事を済ませました。日中はなるべく子供と向き合うようにしたいと思ったのです。

悩ましかったのは、オンラインでの講義や会議の時間。この時間だけは息子の相手ができませんし、夫に見ていてもらっても、気になるのか、書斎に入ってきてしまいます。最初のうちは「邪魔しないでね」と言ったりしていましたが、かえって騒ぎが大きくなってしまうので、私の机の横に椅子と、塗り絵や色鉛筆、プラレールドリルなどを置いて、「一緒にお仕事しよう。その代わりここではアリさんの声(小さな声)でしゃべってね」というふうにしました。

それでも静かにしていてくれるのは最初だけで、結局、息子を肩車した状態で講義をしたり、「ウンチしてくるね」「出たよー」という報告が生配信されたりしていました。そんな親子のやりとりを学生たちはおもしろがってくれたようです。私にとって息子は、生まれたときから“おもしろいボケをしてくる人”。私はそれを拾うツッコミ役。なんでも笑いに変える子育てを心がけていたので、今回も「ネタにするしかない」と思って乗り切りました(笑)。

■「こまち2両とはやぶさ3両が連結したら何両になる?」

育児に関しては昔からあまりナーバスにならないようにしています。たとえば、ミルクの卒業も、トイレトレーニングもなかなかうまくいかなかったんですけど、学生たちとの飲み会で、「オレ、とりあえず、ミルクで!」って言う人はいないし、オムツをしている人もいません。うちの子もなんとかなるだろうと無理はさせませんでした。

現在も、小学校入学に向けた習い事や知育的なことはとくにしていません。4歳のとき、足し算ができるか確かめてみようと、好きな電車に絡めて「こまち2両とはやぶさ3両が連結したら何両になる?」と聞いてみたことがあったんです。

2018年4月21日、仙台駅に停車中の「はやぶさ」
写真=iStock.com/coward_lion
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/coward_lion

そのときに息子は、「はやぶさははやぶさ。こまちはこまちだよ」と答えたんです。ハッとさせられました。私たち大人は、数字だけを捉えて「5両」と思うけど、この子は具体的な新幹線をイメージしている。それって大切にしなきゃいけない感性だと思いました。

学生数や感染者数、死者数等々。数字でひとまとめにしがちだけど、そこには一人一人個性の異なる人がいると教えられたように思いました。

■京急線を「2100形」と、山手線を「E235系」と型番で言う5歳児

息子がやっていることといえば、大好きな電車一筋。好きなら徹底的に極めてほしいと、電車に関する絵本や塗り絵、ドリル、DVDなどを与えています。その結果、息子は京急線のことは「2100形」、山手線のことは「E235系」と型番で言うほど、電車についてだけ異様に解像度が高い子供に育っています。

2019年8月3日、山手線E235系列車、東京駅にて
写真=iStock.com/Laser1987
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Laser1987

これを無駄な知識と思う人もいるかもしれません。それよりも、九九や国名を覚えさせたほうが役に立つだろうという教育が、いまだに主流です。

でも、知識をインプットして、正確にアウトプットするだけの力なら、この先はAI(人工知能)に任せればいい。息子は電車を通じて、用途や機能の違いなど、「分類」を学んでいるのだと思っています。そうして身に付くスキルのほうが、はるかに意味があると信じています。

■息子の脳が何に喜びを感じるのか知りたい

自粛期間中に、気づいたことがありました。日中、息子の様子を観察していたら、NHK Eテレの「ノージーのひらめき工房」を夢中で見ているんです。そこで「私たちも同じものを作ってみよう」と誘ってみたらすごく集中して取り組んでいました。どうやら工作が好きな子だったみたいです。

いまは彼が工作の何にハマっているのか知りたいと思っています。イメージした物が完成するのが楽しいのか、創意工夫が好きなのか? 工作の何に息子の脳が喜びを感じているのかを知りたいですね。

大人はよく「将来何になりたい?」って聞きますけど、この問いはあまり良くないと思っているんです。職業という型に当てはめて考えるのではなく、何に喜びを感じているかがわかればいろんな選択肢を持つことができます。

たとえば、スキルアップが脳の喜びなら、子供時代、サッカー選手を目指していた子が職人になったとしても、夢はかなったといえるわけです。子供には、自分は何に喜びを感じるのかを知って、自分で意思決定できる子になってほしい。息子と過ごす時間が増えた自粛期間は、親として子供を知る良い機会になったと思っています。

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大木 聖子(おおき・さとこ)
地震学者
慶應義塾大学環境情報学部准教授。東京大学大学院理学系研究科卒業。著書に『地球の声に耳をすませて』など。

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(地震学者 大木 聖子 構成=柳橋閑)

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