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「長男の嫁だから介護して当たり前でしょ」そんな義理の親の言葉を封じる法律がある

プレジデントオンライン / 2022年1月29日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/KatarzynaBialasiewicz

親に介護が必要になったらどうすればいいのか。弁護士の森公任さんと森元みのりさんの共著『妻六法』(扶桑社)より、両親の介護義務について紹介しよう――。

■「同居している嫁が介護するべき」という定めは法律にはない

昔に比べると減りましたが、「妻」になると夫の家族の世話を一手に任されることも、決して珍しくはありません。特に、長男の妻は、義理の両親との同居を求められた挙句、家族の介護を任されることも多く、困っている方もいるかと思います。

では、法律上、妻の義理の両親への介護義務はどう扱われているのでしょうか?

民法877条1項では「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定められています。「直系の血族」とは、祖父母や父母、子どもや孫などを指します。

親の介護の必要性が発生したとしても、その義務を負うのはあくまで血のつながった息子や娘たちです。子どもの配偶者であり、あくまで「姻族(婚姻によってできた親戚)」である嫁には、義理の両親を介護する義務はありません。

「長男の嫁が義父母の介護をするのは当たり前」、「同居している嫁が介護するべき」などという考え方は、法律上は存在しないのです。

一方で、民法第752条では「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定められています。夫婦間の「協力」を考えるのであれば、夫が義理の両親の介護で困っている場合は、妻がその介護を手伝う必要もあるかもしれません。

■妻が義理の親の介護を抱え込む義務はない

しかし、あくまでも義理の両親の介護の主体は夫とその兄弟姉妹です。

妻が介護を一手に担う義務はないので、「嫁である自分が義両親の介護をすべて担わなければならない」などと、自分を追い込む必要はありません。夫に手を貸す場合は、きちんと自分が納得できるような状況になるように、事前に夫やその兄弟姉妹とも話しあいをして、責任の所在や役割分担を明確にしておきましょう。

義実家とのモヤモヤを晴らす法律
民法第877条
1)直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
2)家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
3)前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。
解説 法律上は、妻は義理の両親を扶養しなくてもいい
関連法律
民法第730条(親族間の扶け合い)
直系血族及び同居の親族は、互いに扶け合わなければならない。

■生活が苦しければ実の親でも援助する必要はない

Q.別居している義理の父が要介護認定を受けたのですが、「介護費用がないので、出してほしい」と頼まれました。私達夫婦もぎりぎりの生活費で生活をしているし、共働きなので時間的な余裕もないのですが、どうやって介護すればいいのでしょうか?

女性と介助者
写真=iStock.com/byryo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/byryo

A.親の援助は、あくまで「援助する余力がある場合」だけ。

親側には、自分の子どもをしっかりと育てる扶養義務が発生しますが、子どもが親に対して負うべき扶養義務は、あくまで、「自分の社会的地位や収入などにふさわしい生活をした上で、余力のある範囲」です。

ごく端的に言えば、生活が苦しかったり、何かしらの事情があったりと、子どもが親を援助するだけの余力がない場合は、仮に実の親であっても援助しなくてもよいということです。

自分たちの生活基盤を崩して、親の面倒を見ようとしても、共倒れになってしまうかもしれません。それよりは、役所をはじめとする適切な福祉の相談窓口に連絡をして、できる限りの公的サポートを受け、自分の負担を減らすことを考えてください。

■親が元気なうちに介護について相談を

Q.義理の母が在宅では面倒が見きれなくなったため、介護施設に入ることになりました。この場合の費用は、長男である夫が全額負担すべきなのでしょうか?

A.親に対する義務は、兄弟誰であっても平等です。

生まれた順番や性別に関わらず、親に対する扶養義務はすべての兄弟・姉妹の間で平等に発生します。そのため、親の介護費用が必要な場合は、親の財産から支払い、足りない分を兄弟姉妹で折半するべきです。

森公任、森元みのり『妻六法』(扶桑社)
森公任、森元みのり『妻六法』(扶桑社)

かかった介護費用を払ってくれない兄弟がいた場合は、家庭裁判所に「扶養請求調停」を申し立て、調停委員を交えて、話しあいをすることも可能です。調停で取り決めた義務が果たされない場合は、財産の差し押さえなどの強制執行が行われることもあります。

調停でも合意ができなかった場合は、裁判所での「審判」で、最終的な判断が下されます。

ただ、調停や審判に持ち込むことになれば、時間も費用も発生してしまいます。できれば、親が元気なうちに、事前に親の経済状況や介護費用の相談を、親や兄弟姉妹間で話しあっておくほうが、後のトラブルを回避することができるでしょう。

■自分の親に介護が必要になった場合は……

1.地域包括支援センターへ連絡を

各市区町村に設置されている高齢者の暮らしをサポートするための総合相談窓口です。介護・医療・保険・福祉などの分野において、保健師や社会福祉士、主任ケアマネージャーといった3つの専門職、またはそれに準ずる人材が対応してくれます。幅広い相談が可能なので、「まず、何をしたらいいのかわからない!」というはじめての介護に直面した人におすすめ。

連絡先はHPなどにも掲載されています。もしくは、各市区町村の役所にある「介護保険課」や「高齢者福祉課」へ問い合わせると、地域包括支援センターの連絡先を教えてもらうことができます。

早くから相談しておくと安心感も生まれるので、介護が必要ではない段階から、親が高齢者になったタイミングで、一度連絡しておくのもいいでしょう。

2.親の現状を把握すべく、主治医へ相談を

現在、自分の親がどんな状態なのかを知るために、親の主治医に相談してみましょう。また、介護保険サービスを利用する際に、担当する主治医の意見書が必要になるため、「介護が必要になるかもしれない」という旨を、親の主治医に伝えておきましょう。

■ケアプランはさまざまな条件によって変わってくる

3.市区町村に連絡し、要介護認定を取得

介護保険サービスを利用するために必要なのが、要介護認定の申請です。「どのくらいの介護を必要とするか」という要介護認定の区分によって、受けられるサービスや支援限度基準額の限度額なども変わってきます。調査員による訪問調査や主治医の意見書に基づいて行われる、要介護認定審査会で、要介護認定の区分が決定します。その中で、「要支援1~2」、「要介護1~5」までの7段階のどこかの区分に認定されます。

【区分】
・要支援
日常生活はほぼ自力で行うことができるが、部分的な介助を必要とする状態。
・要介護
日常生活に支障をきたす状態。運動機能のほかに、思考力や理解力の低下が見られる場合もある。
4.ケアプランの作成

要介護認定を受けた後、実際にどのような介護サービスを利用するべきかを記した「ケアプラン」を作成しましょう。本人や家族が作成することも可能ですが、一般的には介護のプロであるケアマネージャーが作成します。

経済状況や介護レベル、家族の状況、本人の希望などによって、ケアプランは変わっていきます。

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森 公任(もり・こうにん)
弁護士
1951年新潟県生まれ。中央大学法学部卒業。1981年弁護士登録(東京弁護士会)。1983年森法律事務所設立。離婚、相続などの家事事件を数多く取り扱っており、家事事件の受任件数は全国トップレベルを誇る。

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森元 みのり(もりもと・みのり)
弁護士
東京大学法学部卒業。2006年弁護士登録(東京弁護士会)。2006年森法律事務所入所。森法律事務所でおもに離婚案件を担当しており、数多くの女性の悩みに応えている。

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(弁護士 森 公任、弁護士 森元 みのり)

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