「49%の日本人が機械にとって代わられる」10年後に自動化される職業、生き残る職業10選
プレジデントオンライン / 2022年2月11日 8時15分
※本稿は、宮本弘曉『101のデータで読む日本の未来』(PHP新書)の一部を再編集したものです。
■テクノロジーの進歩で働き方はどう変わるか
いま世界では、①人口構造の変化 ②地球温暖化対策によるグリーン化 ③テクノロジーの進歩という3つのメガトレンドが進んでいます。これらも変化が今後、私たちの働き方や労働市場にどのような影響をもたらすのかを考えてみましょう。
長寿化した社会では、私たちはこれまでより長期にわたって働く可能性が高くなります。そして、職業人生が長くなると、労働環境の変化に直面する機会がおのずと増えます。特に、今後、労働環境を大きく変化させると考えられるのが、テクノロジーの進歩と経済のグリーン化です。
まず、テクノロジーの進歩が労働に与える影響を考えてみましょう。技術革新により、人間がこれまで携わってきた作業が軽減されたり、置き換えられたりしています。
■1970年代以降は銀行や空港の仕事を大きく変えた
技術革新と雇用の問題は、1810年代、織物工業の労働者が機械を破壊するなどした「ラッダイト運動」に遡ります。これは産業革命による機械の普及が、人々の仕事を奪うのではないかという懸念から発生したものです。1930年代に経済学者のジョン・メイナード・ケインズは、新技術は人々から雇用を奪い、技術的失業が増えると警告しました。
その後の技術進歩も目覚ましく、人々の働き方を変えてきました。例えば、1970年代以降は、銀行窓口の仕事がATM(現金自動受払機)に置き換えられたり、空港のカウンター係の仕事が自動チェックイン機に置き換えられるなど、人手を要した仕事が自動化によって機械に代替されてきました。
■日本の労働人口49%が関わる職業が機械に代替される
このように過去を振り返ってみると、たしかに新しい技術は人々から特定の職を奪ってきました。しかしながら、経済全体でみると、技術革新は雇用を減らし、技術的失業を増やしてはいません。
しかし、最近では雇用へのマイナスの影響が懸念されています。イギリスのオックスフォード大学のカール・フレイ博士とマイケル・オズボーン准教授は、今後10~20年間に、技術進歩により、アメリカ国内の労働者の47%が仕事を機械にとって代わられるリスクが高いとし、雇用の未来について世界で研究ブームが発生しました。
日本を分析対象としたものとしては、野村総合研究所による研究があります。野村総合研究所は2015年に前述のフレイ博士とオズボーン准教授の研究と同じ手法で、国内601種類の職業について、それぞれAIやロボット等に代替される確率を試算しています。
分析結果は、10~20年後に、日本の労働人口の約49%が就いている職業が機械によって代替される可能性が高いとしています。
■自動化される可能性が最も低い職業とは
図表1は、日本で自動化される可能性が高い職業と低い職業を示したものです。自動化の可能性が高い仕事は、コンピュータが比較的得意としている情報管理や処理に関連する作業が多いものとなっているのに対して、自動化の可能性が低い仕事は、創造的作業を伴っていたり、複雑な社会的交流が必要とされる作業を必要とするものとなっています。
■技術革新で新たに生み出される仕事もある
これに対して、OECDは2016年の研究報告で、機械に置き換えられる可能性が高い仕事の割合はアメリカで9%、OECD平均で9%、日本では7%としています。
仕事が機械によって将来どの程度置き換えられるか、という予想は、このように研究ごとに差があり、割り引いてみる必要があります。なぜなら、こうした予測は試算方法によって数字が大きく変わるからです。
また、自動化されるリスクが実際にAIやロボットに置き換えられるという保証はありません。さらに、技術革新は、生産性の向上やコストダウンを通じて、企業の利益を高め、その結果、労働需要を引き上げる可能性があります。現時点では想像しえない仕事が技術革新によって生み出される可能性もあります。
■技術革新で生産性が上がると失業率は下がる⁉
技術革新が雇用全体に与える影響を分析した実証研究では、長期的に生産性の成長率(技術革新の尺度)と失業(雇用の尺度)に正の関係、つまり、「技術革新が進めば失業が増える」という関係を見出すことは難しく、むしろ、技術革新は失業を低下させる可能性が高いとしています。実際、図表2に示したように、アメリカでは生産性成長率と失業率の間にはマイナスの関係があることがわかります。
もっとも短期的には、機械に置き換えられた業務にそれまで携わっていた労働者が余剰となり、退職をせざるを得ない場合には、雇用にマイナスの影響を与える可能性は否定できません。
■機械に代替されにくいのは中スキル職より低スキル職
理論的には技術革新が雇用に与える影響は、労働者が新技術にどれだけ適応できるかに依存します。
この点において、マサチューセッツ工科大学のデイビット・オーター教授の研究は示唆に富んでいます。オーター教授は、アメリカにおける職をそれに必要となるスキルに応じて、低スキルの職、中スキルの職、高スキルの職の3つに分け、その変遷を分析しています。その結果、中スキルの職が全体に占める割合は低下し続けているのに対して、低スキルと高スキルの職は、その割合が上昇傾向にあることがわかりました。
この理由は、中スキルの職はルールや手順を明示化できる定型的なものが多く、機械に代替されやすいからです。一方、低スキル、高スキルの職務はそれぞれ肉体労働、頭脳労働を必要とし、明示化がしにくいため、新技術の影響を受けにくいとされます。
技術進歩によって仕事を失うリスクは、男女で異なることも明らかにされています。IMFの研究によると、自動化によって男性が仕事を失うリスクは平均9%であるのに対して、女性が仕事を失うリスクは平均11%となっています。これは男性よりも女性が、低スキルや中スキルのルーティン業務を伴う自動化されやすい仕事に従事している割合が高いからです。
■男性と比較して女性が仕事を失うリスクが最も高い国は日本
また、IMFの研究では、仕事を自動化で失うリスクの男女差は、国ごとに異なり、中でも日本はその差が最も大きく、女性の仕事が男性の仕事よりも自動化のリスクにさらされやすいとしています。この背景には日本では企業活動の中心は依然として男性によってなされており、女性はその補助役という労働慣行が根強く残っていることが挙げられます。
最近、民間企業や自治体でロボティック・プロセス・オートメーション(RPA, Robotic Process Automation)が導入され始めています。RPAは、事務作業を担うホワイトカラーがパソコン等で行っている一連の作業を自動化できるソフトウエアロボットです。こうしたデジタル技術は、特に女性の仕事に強く影響を与えると考えられます。
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東京都立大学 経済経営学部 教授
1977年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業、米国ウィスコンシン大学マディソン校にて経済学博士号取得(Ph.D. in Economics)。国際大学学長特別補佐・教授、東京大学公共政策大学院特任准教授、国際通貨基金(IMF)エコノミストを経て現職。専門は労働経済学、マクロ経済学、日本経済論。日本経済、特に労働市場に関する意見はWall Street Journal、Bloomberg、日本経済新聞等の国内外のメディアでも紹介されている国際派エコノミスト。著書に『労働経済学』(新世社)、『101のデータで読む日本の未来』(PHP新書)がある。
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(東京都立大学 経済経営学部 教授 宮本 弘曉)
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