1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 政治

併合時代の親日派を今さら断罪する…そんな「親日清算」を文在寅大統領が声高に掲げた本当の理由

プレジデントオンライン / 2022年3月8日 18時15分

白凡・金九記念館で講演する文在寅大統領 - 写真=EPA/時事通信フォト

反日思想とはどのようなものなのか。韓国生まれの作家・シンシアリーさんは「一口に『反日』といっても種類がある。日本に対するネガティブな感情という点は同じだが、それぞれ微妙にニュアンスが異なる」という――。

※本稿は、シンシアリー『卑日』(扶桑社新書)の一部を再編集したものです。

■日本を利用して韓国が得する「用日」

韓国社会を支配する、反日思想。しかし、一般的に「反日」といっても、種類があります。どうせ全部反日思想の「発現」に過ぎませんが、以下、有名なものをいくつか並べてみます。

日本のネットでもよく目にするのが、日本によって韓国が何かを得るという意味の「用日」です。用日は、日本のネットでは「ただ日本を利用して韓国が得をしようとする」と認識されていますし、確かにそういう側面が強いのも事実です。しかし、発言または提案する人にもよりますが、実「用」路線での対「日」外交を主張する場合もあります。

例えば、韓国が「日本が要求している事項」で何かを譲ることで、日本を介して別の案件で得ができるなら、それが全体的に韓国という国にとってプラス要素になる、そんな主張を用日のカテゴリーとする、いわば、「WIN-WIN用日」の場合もあります。

有名なのが、「日本と歴史問題でもめていては、米国との関係が悪化する。部分的に日本に負けることがあっても、関係を改善したほうが、韓国にとって得になる」などです。

■反日思想に外交の基本である「ギブアンドテイク」はない

もちろん、日本は何一つ得しそうにない内容を言い出して、「これで日本も韓国の要求を聞いてくれるはずだ」と自信満々に話す人がほとんどで、彼らは悪質な用日主義者にすぎないでしょう。でも、「バボ(韓国語でバカ)」はどのカテゴリーに入れてもバボです。

「韓国が何かを失う必要がある」という論調の人が少数でも存在する、すなわち「ギブアンドテイク」たる外交の基本が垣間見えているだけに、少なくとも、小学生に残酷な絵を描かせるよりはマシかもしれません。

用日は、韓国側の記事でもよく目にする用語で、主に右派(保守派)とされる人たちから出てきます。悪質なものは日本から叩かれ、バランスを取ろうとするものは韓国から叩かれます。韓国の反日思想は「善悪論」にもとづいて一方的な上下関係を基本とするので、そもそも「ギブアンドテイク」は反日とは共存できません。

■併合時代に日本に協力的だった人を断罪する「親日清算」

「◯日」ではないので単語として並べるには違和感もありますが、「親日清算」という名の反日もあります。大韓民国の建国時点(一九四八年)からありましたが、最近の数年間で急激に強くなりました。親日清算とは、反日だと言われることに外交的な負担を感じた韓国の政治家、自治体長たちが流行らせた言葉で、反日とは言わず、あくまで韓国内で併合時代に日本に協力的だった人、いわゆる「親日人士」を見つけ出して、いまからでも断罪するという概念です。

白人の怒りと積極的な男の拳と脅す
写真=iStock.com/Andranik Hakobyan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Andranik Hakobyan

例えば、韓国の現代史に功績を残した人でも、併合時代に日本に協力した記録などが見つかれば、その人の記念碑を撤去したり、記念碑の隣に「この人は民族に罪を犯した」とするプレートを作ったりします。韓国の一部の鋳貨に使われている偉人の肖像画も、親日だった人が描いたとして、変更することが決まっています。反日とは言わず親日清算と言っているだけで、中身は「日本こそが元凶」という考えから始まっており、ほとんどは各自治体や市民団体の反日運動にすぎません。

本稿ではこれ以上は取り扱いませんが、その矛先が子孫にまで向けられることも少なくなく、親日という名の連座制のような、そんな雰囲気になっています。戦後北朝鮮でも似たような雰囲気があったと聞きます。親日清算は、ほとんどの韓国民から絶対的な支持を得ていますが、学者の中には、「すでに韓国は独立国なのに、なんで独立運動家を演じているのか」と皮肉る人もいます。

■手段を選ばず日本に被害を加えたい「嫌日」

「小学生に『日の丸に唾を吐く絵』を描かせる……韓国の徹底した反日教育のおぞましい内容」の絵のように、とにかく無条件で日本が嫌いで、手段と方法を問わずに日本に被害を加えたい、日本が被害を受けてほしい、そういう極端な反日思想を、「嫌日(ヒョミル、혐일)」とします。この単語は結構マイナーで、個人ブログ、または一部のネットメディアでたまに目にします。

韓国は、「日本は、韓国に対して悪い感情を持つ理由がまったくない」と思っています。少なくとも日韓関係においては、韓国はただ被害者なだけなので、絶対善のような「無謬さ」を持っていると信じているからです。よって、日本が韓国と違う意見を出すと、例えば「竹島は日本の領土だ」と話すだけでも、韓国はそれを「嫌韓助長」「韓国叩き」などに分類します。

韓国民が一般的に持っている「嫌韓」というもののイメージも善悪論に基づくものです。「嫌」されるようなことではないのに、一方的に嫌われ、被害を受ける、それが、韓国が漠然と抱いている「嫌韓」のイメージです。実は嫌韓にもいろいろあって、確かに犯罪に走ってしまう人もいますが、ほとんどの場合は「嫌」というより、「失望した」「関わりたくない」などの感情に近いですが、善悪による二分法に慣れている韓国としては、そこがよく理解されていないようです。

よって、先のポスターのように、韓国内でも多少は賛否が分かれるような事案に対しては、「(嫌韓に因んで)嫌日ではないのか」とする人たちがいます。

■「いつか、日本を超えてみせる」という「克日」

最近は聞かなくなりましたが、「克日(グクイル、극일)」というのもありました。一九八六年ソウルアジア競技大会、一九八八年ソウルオリンピック開催の決定などで、未来に対して自信を得た韓国社会は、軍事政権の主導で「いつか、日本を超えてみせる」という意味で克日キャンペーンを展開しました。あくまで逸話ではありますが、「克」は「勝」より勝ち負けのイメージが弱く、自分で自分を乗り越えるという意味があるので、克が選ばれたとも聞きます。

韓国では、「克」の字は、一般的には「克服」と「克己」ぐらいしか使いません。特に軍事政権の頃は、「克己訓練」という言葉が有名でした。強度の強い訓練のことで、例えば高校生、大学生が海兵隊に体験入隊してわざと強い訓練を体験することなどを、克己訓練、または克己体験と呼びました。

一九九〇年代初頭まで、高校にも軍事訓練のような授業(学校訓練、「校練」)がありましたが、先生から適当に「よしっ、授業が終わるまでグラウンドを走れ!」と言われ、授業が終わった後に「先生、これ何の意味があるんですか」と聞くと、ほぼ間違いなく「克己を知らんのか!」と叱られました。いや、いまさらですが、それって「体育」とどう違いますか、先生。

いま思えば、軍事政権の克日というのは、ただ走り続けるだけのものだったかもしれません。努力すると言っても、節約しろ、頑張れ、労働組合などには入るな、そんな内容ばかりで、詳しい「指導」がされていたわけでもありません。でも、少なくとも人々の頭の中には、希望的な何かを植え付けてくれました。当時の軍事政権は、安保・経済面で日本と協力するしかないということを公言しており、そういう側面では、反日思想は邪魔でした。それをうまくコントロールしようとしたのでしょう。

■「克日」とまったく反対の概念である「卑日」

いくつか存在する反日思想のカテゴリーの中でも、この「克(克己)日」は「卑日(ビイル、日本を見下す)」とは、まったくの反対側の概念となります。なぜなら、反日思想から「克己」を極大化させようとしたのが克日で、反日思想から「克己」を極小化させたのが卑日だからです。そう、苦しくても頑張って乗り越える(克)のが克日なら、「日本を乗り越える必要はない。なぜなら、韓国がもっと上にあるからだ」と設定し、自分自身は何もする必要がないシチュエーションを作る。それが、卑日です。

シンシアリー『卑日』(扶桑社新書)
シンシアリー『卑日』(扶桑社新書)

親が、子に対して「徹夜で勉強してテストで良い点数を取れ!」とするのが克日なら(これはこれで息苦しいですが)、「テストなど、人生に何の役にも立たない」とし、テスト自体を否定してしまうこと、それが卑日です。テストという存在を、間違った教育システムの象徴だと「見下す(卑)」ことで、自分自身を、テストで順位を決めるシステムそのものよりも上位の高品格な「何か」に設定するわけです。

嫌日や用日とは違い、日本側のネット用語に慣れている人でもなければ、韓国側で卑日という言葉を使う人は、まずいません。日本側でだけ、たまに目にする言葉です。なぜ韓国に相応の言葉がないのかと言うと、韓国が日本を見下しているという自覚そのものがないからです。

ただ、先の例えだと、現実でテスト拒否した人が卒業できるという保障はありません。同じく、韓国社会でも、一部の人たちが、卑日スタンスに対して「現実とかけ離れている」と指摘することもあります。残念なことに、「韓民族が日本民族より劣っているというのか」「日本が韓国を植民地にしたときと同じ理屈だ」などの反論に潰されるのがオチですが。

----------

シンシアリー(しんしありー)
著作家
1970年代、韓国生まれ、韓国育ち。歯科医院を休業し、2017年春より日本へ移住。アメリカの行政学者アレイン・アイルランドが1926年に発表した「The New Korea」に書かれた、韓国が声高に叫ぶ「人類史上最悪の植民地支配」とはおよそかけ離れた日韓併合の真実を世に知らしめるために始めた、韓国の反日思想への皮肉を綴った日記「シンシアリーのブログ」は1日10万PVを超え、日本人に愛読されている。著書に『韓国人による恥韓論』、『なぜ日本の「ご飯」は美味しいのか』、『人を楽にしてくれる国・日本』(以上、扶桑社新書)、『朴槿恵と亡国の民』、『今、韓国で起こっていること』(以上、扶桑社)など。

----------

(著作家 シンシアリー)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください