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なぜ巨大国家・帝政ロシアは日本に戦争で負けたのか…日露戦争が「日本勝利」で無事に終わったワケ

プレジデントオンライン / 2022年4月15日 12時15分

出所=『バトルマンガで歴史が超わかる本』

帝政ロシアと日本が対決した日露戦争は、世界史においてどういう意味を持つのか。当時の世界情勢の推移を、『バトルマンガで歴史が超わかる本』(飛鳥新社)より紹介する――。(第1回)

■なぜロシア帝国は強大な国家になったのか

登場人物紹介
小太郎:ごくフツーの中学生
つきじい:偉大な歴史家トゥキディデスの生まれ変わり

【つきじい】フィンランド、リトアニア、ラトビア、エストニア、ベラルーシ、モルドバ、ウクライナ、アルメニア、ジョージア、アゼルバイジャン、カザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、キルギス――。

【小太郎】つきじい、それらの国はなんですか?

【つきじい】ロシア帝国に併合された国のリストじゃ。

【小太郎】ええっ! そんなにたくさん……。

【つきじい】シベリアの少数民族を加えれば、何十にもなる。

【小太郎】ロシアってどうしてそんなに強くなったんですか?

【つきじい】ロシアは2世紀もの間、モンゴル帝国に支配された。しかしロシア人はモンゴルの騎馬戦法を学び、やがて独立してモンゴルに代わる大帝国を築いたのじゃ。

【小太郎】遊牧民に負けないように頑張ったのか……。

【つきじい】19世紀になると、鉄道の建設が始まった。馬や徒歩で移動していた軍隊が、鉄道で大量に移動できるようになったのじゃ。

【小太郎】なるほど!

【つきじい】イギリス海軍は蒸気船で世界の海を支配したが、ロシア陸軍は鉄道でユーラシア大陸を支配した。陸のロシアと海のイギリス――両国は、世界中で衝突しはじめた。前回アヘン戦争を勉強したな。

【小太郎】はい。

【つきじい】イギリス・フランス連合軍が北京に攻め込んだとき、ロシア軍も南下して清から領土を奪った。ロシアはここにウラジオストクという軍港を建設し、海に出てきた。

■朝鮮半島と遼東半島の戦略的重要性

【小太郎】あっ、ここ日本海です!

【つきじい】うむ。ロシアの軍艦が日本のまわりを航行し、対馬を要求したこともある。

【小太郎】これってヤバくないですか?

【つきじい】イギリスは日本に「港を開け、貿易をしろ」と迫ってくる。ロシアは「島よこせ」と迫ってくる。イギリスとロシアは敵同士だ。日本はどうする?

【小太郎】島は取られたらおしまい。貿易ならやってもいいかなぁ……ぼくだったら、イギリスと組んでロシアに対抗します。

【つきじい】うむ。明治政府の指導者たちも同じことを考えた。「敵はロシアだ」と。

【小太郎】明治維新を頑張ったのも、ロシアに対抗して国を強くするためだったのか……。

【つきじい】ロシア軍を大陸で迎え撃つため、日本軍の基地をつくる必要がある。日本が注目したのが、朝鮮半島と遼東半島じゃった。

【小太郎】なるほど!

【つきじい】朝鮮は、何百年も清国に朝貢してきた国でな。「日本がいじめます」と清国皇帝に訴えた。この結果、朝鮮をめぐって日本と清国がぶつかった。

【小太郎】これが日清戦争ですね!

■日清戦争から日露戦争に至るまでの経緯

【つきじい】清国に勝利した日本が遼東半島を手に入れ、朝鮮を清国から独立させた。これをロシアから見れば……。

【小太郎】「日本、邪魔すんじゃねぇ!」

【つきじい】だからロシアは日本を脅迫した。「遼東半島を清国に返さないと戦争になるぞ」と。フランス・ドイツもこれに便乗したので三国干渉という。

【小太郎】イギリス、入ってないですね。

【つきじい】鋭い。イギリスはロシアの敵だからのぉ。結局、日本が清国に返還した遼東半島の旅順を今度はロシアが占領し、巨大な軍港を建設した。さらに清国で暴動が起こると、ロシアは暴動鎮圧の名目で満州に大軍を送った。

【小太郎】ずるいぞ、ロシア!

【つきじい】あせったイギリスは日本に軍事同盟を申し込んだ。日英同盟じゃ。その2年後、日本軍が旅順のロシア軍を攻撃し、戦争が始まった。

【小太郎】日露戦争!

【つきじい】日本軍はロシアの旅順艦隊を全滅させたが、ロシアにはもう一つ、バルチック艦隊があった……!

【開戦】日露戦争

ロシア海軍と日本海軍の兵力差は3:1だが、旅順のロシア太平洋艦隊だけなら日本の連合艦隊と互角だった。ロシアはここにバルチック艦隊を投入し、数の力で日本艦隊を圧倒しようとした。

■皇国の興廃、この一戦にあり

シナリオ=茂木誠、マンガ=大久保ヤマト『バトルマンガで歴史が超わかる本』
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シナリオ=茂木誠、マンガ=大久保ヤマト『バトルマンガで歴史が超わかる本』
シナリオ=茂木誠、マンガ=大久保ヤマト

■負傷した敵将を丁重に扱った東郷平八郎

シナリオ=茂木誠、マンガ=大久保ヤマト『バトルマンガで歴史が超わかる本』
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シナリオ=茂木誠、マンガ=大久保ヤマト『バトルマンガで歴史が超わかる本』
シナリオ=茂木誠、マンガ=大久保ヤマト

■敗戦をきっかけにロシアでは革命運動が起きる

【小太郎】東郷さん、負けたロシアの司令官に優しくできるなんて、かっこいい。

【つきじい】戦争にもルールがある。戦時国際法といってな。この時代の日本軍は戦時国際法をきちんと守ってた。日本が文明国であることを認めてもらうためじゃ。

【小太郎】ロシアはもう攻めてこなかったんですか?

【つきじい】来なかった。実は、日本に負けたことを知ったロシアの民衆が、革命運動を起こしていたのじゃ。

【小太郎】革命⁉

【つきじい】うむ。ロシアはロマノフ王朝の専制国家だった。憲法も議会もなく、一握りの貴族が富を独占し、国民の大多数は貧しい農民じゃった。日露戦争が始まると、食糧を戦地の兵隊に送ってしまったため、食糧不足が起こっていた。

【小太郎】お腹がすいていたら、戦争どころじゃないですね。

【つきじい】そういう国民の声が、皇帝ニコライ2世には届かなかった。議会とか、選挙というものがなかったからじゃ。だから革命になった。

【小太郎】日本から見れば、ラッキーですね。

■ロシアに極秘潜入していた秘密工作員

【つきじい】実は日本軍は、ロシア革命をひそかにあおっていた。

【小太郎】ええっ! どういう意味ですか?

【つきじい】日本陸軍は秘密工作員をロシアに潜入させ、革命家に資金を提供していた。

【小太郎】どうしてバレなかったんですか?

【つきじい】ロシアは多民族国家で、アジア系の顔をした国民もたくさんいる。日本人が潜入しても、少数民族と間違えられるのじゃ。

【小太郎】てことは、ロシア革命を起こしたのは日本軍?

【つきじい】少なくとも手助けしていたことは間違いない。10年後の第一次世界大戦では、ドイツ軍がロシアの革命家を手助けした。ロシアの革命家レーニンはこう言った。「戦争を、革命につなげるのだ!」

結局、日露戦争の10年後、第一次世界大戦の最中に、ロシア帝国は革命で滅んでしまった。だから日露戦争は世界の歴史を大きく変えたことになる。

【小太郎】そうだったのか……。

■列強の植民地支配がゆらぐ

【つきじい】もう一つ、日露戦争が世界史に与えた影響がある。

【小太郎】なんです?

茂木誠、大久保ヤマト『バトルマンガで歴史が超わかる本』(飛鳥新社)
茂木誠、大久保ヤマト『バトルマンガで歴史が超わかる本』(飛鳥新社)

【つきじい】19世紀の世界では、西洋人の文明国がアジア・アフリカを植民地として支配していた。日本はアジアの国だが議会を開き、国民軍をつくり、大国ロシアと正々堂々、戦って勝利した。この戦争を見たアジア・アフリカの人たちは考えた。「日本のように議会制度を取り入れれば、オレたちも、西洋人に勝てるかもしれない――」。

【小太郎】おお~っ!

【つきじい】実際、フランス植民地のベトナムやイギリス植民地のインド、半植民地状態のイランやトルコでも独立運動や革命運動が起こり、植民地支配がゆらいだ。

【小太郎】日露戦争って、日本とロシアだけの戦争じゃなかったんですね。

【つきじい】ロシアの革命家レーニンはこう言った。「日露戦争は、遅れたヨーロッパ(ロシア)と、進んだアジア(日本)との戦争だった――」。

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茂木 誠(もぎ・まこと)
駿台予備校/N予備校世界史科講師
ノンフィクション作家、予備校講師、歴史系YouTuber。学習参考書のほか、一般向けの著書に『世界史で学べ! 地政学』(祥伝社)、『超日本史』(KADOKAWA)、『「戦争と平和」の世界史』(TAC出版)、『「米中激突」の地政学』(ワック)、『政治思想マトリックス』(PHP)、『「保守」って何?』(祥伝社)、『グローバリストの近現代史』(ビジネス社)など。YouTubeもぎせかチャンネルで発信中。

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(駿台予備校/N予備校世界史科講師 茂木 誠 シナリオ=茂木誠、マンガ=大久保ヤマト)

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