吉川明日論の半導体放談 第300回 戦艦「三笠」と日本海海戦
マイナビニュース / 2024年5月8日 7時13分
かつて日本海軍の軍港があった都市を回ってみようと思いついたのが、昨年の今頃であった。
2023年は広島の呉を訪れ戦艦大和ミュージアムを見学したが、今年は連休を利用して、横須賀にある三笠公園に設置された戦艦「三笠」を訪ねた。20世紀初頭、隆盛を誇ったロシアのバルチック艦隊との日本海での一戦で連合艦隊を勝利に導いた東郷平八郎大将(当時。後に元帥)が乗り込んだ旗艦である三笠は、退役した後も平和への祈りを込めて横須賀港の三笠公園に設置され、現在では横須賀の重要な観光スポットとなっている。戦艦 三笠は当時のまま保存されていて、乗船も可能である。
横須賀は現在でも米海軍、海上自衛隊の基地がある現役都市で、街のいたるところにそれらしき雰囲気が感じられる。こうした場所を訪れると、現在置かれた複雑な世界状況を再認識する点で大きな意味があるという印象を持った。
戦艦三笠と日本海海戦
1905年、日本(当時は大日本帝国)とロシア(当時はロシア帝国)の間で勃発した日露戦争での大きな転換期となった日本海海戦については、歴史の教科書などで取り上げられることが多く、当時連合艦隊を指揮した東郷平八郎元帥の名前も知っている方も多いと思う。
日露戦争の要衝だった港湾都市ウラジオストクを抑えるために、遥か北ヨーロッパのバルト海の軍港を出港したロシア艦隊は、アフリカの最南端の喜望峰を回る本隊と、スエズ運河を回る支隊が東シナ海で合流し、日本海を突っ切ってウラジオストクに向かう事になっていた。それを対馬海峡で迎え撃った日本連合艦隊との総力戦となったのが日本海海戦である。両艦隊とも持ちうる主力艦を集中させた大艦隊で、この海戦の指揮に当たった東郷平八郎元帥はこの一戦でバルチック艦隊を撃破し、日露戦争の趨勢を一気に日本有利に持っていく決意だった。
「皇国の興廃、この一戦に在り。各員一層奮励努力せよ」、という東郷が全艦乗員に発した発砲開始の号令はその決意を物語っている。
日本海でのこの大海戦は、結果的に戦闘開始から30分ほどの激しい戦いで日本側の一方的勝利に終わった。この勝利には、東郷の大胆な戦術があった。南方からウラジオストックを目指すバルチック艦隊の進路と交叉して三笠を先頭とする隊列を縦列させて、敵艦の先頭艦と対峙するいわゆる「丁字戦法(T字戦法)」である。この戦法では先頭となる艦船から砲撃が始まるが、東郷が乗船した旗艦 三笠は、射程距離が充分になるまで発砲せず相手をぎりぎりに近づけて発砲を開始するという一極集中の戦法であった。まさに乾坤一擲の大胆で見事な戦術だった。
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