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「仕事に集中できなくなるほどの便秘と下痢」が自然と解消した産業医の"あるひと言"

プレジデントオンライン / 2022年5月10日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kuppa_rock

働く世代の便秘には、どんな原因があるのか。年間1000人以上の社員と面談をしている産業医の武神健之さんは「飲食生活、運動、心理的要素の3つが主な原因だ。だが、知識をつけることで自分なりに解決できる人も多い」という――。

■通勤が怖く、業務にも集中できない

私は毎年1000件以上の産業医面談を行っていますが、約4割は体の健康についての相談です。その中でも、時に、人に相談しにくいが切実で、しかし知識をつければ自分なりに解決できる人が多いのが、便秘に関する相談です。

今回は、私が産業医面談でお伝えしている便秘の話を共有させていただきます。あなたの快適快便生活のお役に立てば光栄です。

数年前Aさんは、業務中にトイレが我慢できなくなるといい産業医面談にこられました。

数年間便秘がちで定期的に市販の下剤を飲んでいるが、だんだん下剤の効き具合が悪くなってきた。最近は、突然の下痢もあって困っているとのことでした。

よく聞いてみると、便秘が続きお腹が張るとつらいので排便のなかった日は夜に下剤を飲むようにしているが、飲んでもすぐに便意を催すわけでもなく、翌日通勤中や業務中などに我慢できなくなってしまう。なので、下剤を飲んだ翌日は、快速列車は使わずいつでも下車して駅のトイレに駆け込めるように普通列車で通勤している。会社では、ひどい時はトイレから席に戻ってもまたすぐトイレに戻ることがあり、周囲の目が気になってしまう。そうすると、もう出し切ってお腹は空っぽのはずなのにまたトイレに行きたくなる。しかし、トイレに行っても何も出ない。

このように、お腹の具合のせいで通勤時間が怖く、また、会社でも業務に集中できないでいるようでした。

■「何日出なければ便秘」という明確な定義はない

そもそも、便秘とはどのような状態を言うのでしょうか。

実は、便秘には明確な定義はありません。日本内科学会では「3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態」と定義していますが、実際は、毎日排便がないことを便秘と訴えてくる人や、排便してもすっきりしないことを訴える人、週末に出るだけなのに困っていない人等もいます。

Aさんの場合、毎日排便がなければならないと本人が気になりはじめたことが、全ての始まりのようでした。排便がない日は毎回お腹が張ってつらいのか聞いてみると、実際につらい時があったので、今後もそうなると怖いと思うが、冷静に考えてみればつらくない時もあったとのことでした。排便は、必ずしも毎日ある必要はない。お腹が張ったりしてつらくならないのであれば、数日ごとの排便を普通として過ごしている人も多数いるとお伝えすると、Aさんは安心したようでした。

■下剤を飲む頻度が減り、トイレへの不安も減っていった

私の産業医面談では、40歳以上であったり、大腸癌などの家族歴があったり、若くても排便に伴い出血がある人や過去数カ月間での体重減少が見られる人には、消化器内科を受診し大腸内視鏡検査について主治医に相談することを提案しています。

Aさんにその旨をお話ししたところ、大腸内視鏡検査は以前受けたことがあり、出血もないし大腸癌がとても心配とは思わないということで、消化器内科の受診には消極的でした。

ですので、しばらくは「毎日は出なくていい」として様子を見ることとなりました。その結果下剤を飲む頻度が減り、通勤時や業務中に催すことも減り、トイレの不安と恐怖が減り、再び業務に集中できるようになりました。

その後、Aさんは産業医面談には来ていません。今でも気にならない程度にコントロールできていると信じています。

ボール紙で作られた大腸を持つ女性
写真=iStock.com/LightFieldStudios
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/LightFieldStudios

■自律神経の乱れが、大腸の動きの乱れを招く

口から食べたものが便になり排泄されるには大抵24〜72時間かかると言われています。食べたものは、口から小腸までの間に消化や吸収されます。そして、通り道の最後の臓器である大腸で、水分が吸収され“便”となります。

ざっくり言えば大腸には、食べ物の残りから水分を吸収して適度な硬さの便を形成する役割と、便をお尻の方に送り出す役割があります。大腸の動きが鈍ると、つまり便の通過速度が遅くなると、水分が吸収されすぎて便は硬くなり便秘になります。大腸の動きが活発すぎると、つまり便の通過速度が早すぎると、水分の吸収が不十分になり、軟便や下痢になります。

この役割をつかさどるのは自律神経といって、人間が意思ではコントロールできない神経です。繊細な人は、ちょっとした緊張やストレスで、自律神経の働きが崩れてしまい、結果として、大腸で流れが停滞して水分を吸収しすぎる「便秘」や、十分な水分吸収が行われない「下痢」となってしまいます。人によっては、便秘と下痢を交互に繰り返す場合もあります。

■食物繊維をしっかりとること、1日2リットルの水を飲むこと

働く世代の便秘の原因は、1.飲食生活、2.運動、3.心理的要素に起因することが多いです。

私の経験上、働く人の便秘の原因で多いのは、やはりしっかりとした食生活を送っていないことです。不規則な食生活、過度なダイエット、偏った食事などで、全体としての食事のボリューム、特に食物繊維が足りない人は、出すものが少ないために、便秘になってしまいます。一方、排便のことをよく考えた結果、食物繊維をかなりしっかり摂取している人でも、水分を十分にとれていないために満足な排便ができていない方もいらっしゃいます。

食べるものを食べなければ、出すものも出ない。基本的ですが、とても大切なことです。食物繊維を含む食べ物もしっかり食べることと、1日2リットル以上の水を飲むことを便秘対策の基本として私はおすすめしています。特に、これから暑くなり汗もかくようになりますので、こまめに多めにとるようにしてください。

ペットボトルに入った水に手を伸ばす女性
写真=iStock.com/JohnnyGreig
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/JohnnyGreig

■特別な運動はいらない、毎日しっかり歩けばいい

働く人の便秘の原因として次に挙げられるのは、運動不足です。

コロナ禍で運動不足の人が増えましたが、適度な運動は、腸管を刺激しその働きを活発にします。ストレッチやマッサージは、リラックス効果により自律神経が整います。そして、快適な排便につながります。

しかし、在宅勤務で1日中ほとんど椅子に座ったままでは、消化管は十分に動きません。コロナ禍で通勤もしなくなってしまった運動不足な人に、便秘が増えてきた印象です。

便秘対策として腸を動かすには、特別な運動はありません。何をしたらいいかわからない人は、ぜひ毎日しっかり歩いてみてください。

歩くことにより、身体が上下に揺られることや地面から伝わる振動は、消化管の動きを整えてくれます。病院で開腹手術した人は、50年前はしばらくベッド上での安静を推奨されていました。現在は、翌日から痛み止めを使用して痛みをとって歩くことが推奨されています。歩くことで我々のお腹は刺激され、腸管が動くのです。そして排便が促されるのです。

便秘対策として、歩くこと。ぜひ、覚えておいてください。

■「トイレへの恐怖」に対処するだけでも気が楽になる

働く人の便秘の原因としては、精神的な要素があることも挙げなければならないでしょう。人によっては同じ精神的要素が下痢という症状で出る人もいます。

先に述べたように、食べたものの消化、吸収、排便の一連の流れは、意識的にはコントロールできない自律神経の働きで調整されています。そして、ちょっとした緊張やストレスに敏感な人ほど、この調整が崩れてしまうのです。

自分の緊張やストレスの原因を知り、それに対処できればベストです。しかし、緊張やストレスの原因は必ずしも分かることや、分かったとしても対処できることだけではありません。そのような時は、まずは、トイレに間に合わないかもしれない(漏らしてしまうかもしれない)という不安や恐怖に対処することで、だいぶ気が楽になれます。

上手なリラックス方法を見つけるほか、通勤途中は、どこのトイレが比較的きれいですいているか、社内だとどのタイミングならトイレに行きやすいか。こういったことを把握できるだけで、不安や恐怖は減ります。そのことが緊張を和らげてくれ、症状改善の一歩となることが多いようです。

公衆トイレのピクトグラム
写真=iStock.com/y-studio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/y-studio

■働く世代の便秘薬は「ゆるくする薬」で十分

排便は必ずしも毎日ある必要はありませんし、必ずしも毎回すっきりする必要もありません。

お腹が張ったり重くなったり不快になったりしない程度の期間で排便があるのであれば、薬は飲まず、日頃いろいろ気をつけることで対処することが自然かと思います。つまり、排便が毎日でも、3日ごとでも、1週間ごとでもいいのです。ただし、5日以上出ない人はほとんどが何らかの不快感を感じているのが実情です。

便秘の薬は大きく分けて3つあります。便をゆるくする薬、腸を刺激して便を押し出す(イメージ)の薬、おしり(肛門)を直接刺激して排便を促す座薬です。座薬は主に先の2つのタイプの薬でも効果がない高齢者に使用されることが一般的です。働く世代の多くの大腸は、便を押し出す力は十分に持っていますので、上記の便をゆるくする薬を飲み、飲食生活と運動を気をつけていただければ便秘問題は解消することが多いです。

■下剤との付き合い方はトライアンドエラーから学ぶ

しかし、排便は薬の種類、個々人の体、飲食や運動具合などなどの要因が関与するので、多くの下剤は効果が出るまでに時間差あります。薬を飲んだからといって、いきなり最初から排便具合がちょうどいい具合になるとは限りません。

最初は飲み過ぎて下痢気味に偏り、その反動で薬をやめて再び便秘気味になることを繰り返す中で、多くの人は自分なりのちょうどいい塩梅の飲むペースをつかみます。その間はトライアンドエラーを一喜一憂せずに頑張りましょう。仕事への影響が心配であれば、金曜日の夜から内服を始めるなどしてみるのも、不安を和らげてくれます。

以上、働く人の便秘事情とその対策について書かせていただきました。少しでもお役に立てば幸いです。

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武神 健之(たけがみ・けんじ)
医師
医学博士、日本医師会認定産業医。一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事。ドイツ銀行グループ、BNPパリバ、ムーディーズ、ソシエテジェネラル、アウディジャパン、BMWジャパン、テンプル大学日本校、アプラス、アドビージャパン、Wework Japanといった大手外資系企業を中心に、年間1000件以上の健康相談やストレス・メンタルヘルス相談を実施。働く人の「こころとからだ」の健康管理を手伝う。2014年6月には、一般社団法人日本ストレスチェック協会を設立し、「不安とストレスに上手に対処するための技術」、「落ち込まないための手法」などを説いている。著書に、『職場のストレスが消える コミュニケーションの教科書』や『不安やストレスに悩まされない人が身につけている7つの習慣』『外資系エリート1万人をみてきた産業医が教える メンタルが強い人の習慣』などがある。公式サイト

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(医師 武神 健之)

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