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「お金をかけなくても学力は伸びる」高学歴家庭の会話によく登場する"接続詞"2つ

プレジデントオンライン / 2022年5月24日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kohei_hara

子どもの学歴は親の所得で決まるのか。米国公認会計士の午堂登紀雄さんは「所得は1つの要因にすぎない。むしろ親の思考力の差が子どもの将来に与える影響は大きく、それは10年以上にわたる家庭での日常会話の中で引き継がれていくものだ」という――。

■子どもの学歴は親のお金次第なのか

親がお金を持っていれば、子に教育費(塾や予備校、私立中高一貫校など)をかけられる。だから子が高学歴になり、高所得者になる。

一方、親が貧しければ子の教育費を出してやることができず、成績も悪く、低学歴になる。結果として低所得となり、格差が固定する。

このような論調はあちこちで目にします。

むろん、そういう側面はあると思います。

都市部では塾や予備校、私立の中高一貫校が豊富で充実していますし、たとえば「東大受験が当たり前」という空気の学校と、「高校を出たら就職するのが当たり前」という空気の学校のどちらに通うかといった環境も大きな影響を与えるでしょう。

しかし、親が高所得なら子は高学歴、親が低所得なら子は低学歴、結局「お金がモノを言うのだ」という考え方はちょっと短絡的過ぎると思います。

実際、地方に行けば塾も予備校も少なく、公立中学から公立高校に進学し、予備校ナシで難関大に合格する人も数多くいます。

■親の資金力は要因の1つにすぎない

私が知る限り、高学歴・高所得親の子はほとんど高学歴なのは確かに事実だなあと思う反面、親が高卒・低所得でも子は高学歴になるケースもあるので、親がお金を持っているかどうかは要因の1つに過ぎないと感じています。

つまり相関関係はあっても必ずしも因果関係とは限らない。

そこで、親の所得や学歴が普通でも高学歴になった人たちの成育歴を取材する機会がありましたので、その内容と私自身の経験、そして私が見てきた高学歴同級生の家庭のありようを思い出しながら、私なりに考察してみました。

■高所得と低所得を分けるもの

まず根本的な疑問として、高所得と低所得を分けるものは何でしょうか。

むろん、健康上の理由や介護などといった理由で満足に働くことができないというケースはあるでしょう。

離職や事業の失敗などで一時的に貧困に陥ることは誰にでもあり得ることです。

しかし、そうした特段の事情がないにもかかわらず、ずっと所得が上がらないとしたら、それはなぜか。

私は高所得者と低所得者を分ける1つの要素として「戦略的思考」があると考えています。

目標、計画、アクション
写真=iStock.com/HAKINMHAN
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/HAKINMHAN

戦略的思考とは、目的達成のための合理的な道筋を描くことです。仕事に関して言えば、たとえば自分のキャリアを抽象化して(俯瞰して)、いまやっている業務が将来どのようなキャリアにつながるか、将来はどういうキャリアパスを望むのか、そのためにはどういう経験やスキルセットが必要か、同時にどういう姿勢・意識で仕事をするかなどを考えることです。

あるいは日々の経験から教訓や教えや法則を抽出し、それを他の場面で応用しようと試行錯誤します。

そしてどうすれば自分の仕事に付加価値が出せるのか、仕事以外の時間でも思考を続けます。

高所得者層の多くは、このような内省や振り返りを行い、自分・自社・自社製品の市場価値や立ち位置を、折に触れて客観視しようとする習慣があります。

自分の力がどこまで通用するか試したい、というチャレンジングなマインドも持っています。

■目の前のことにこだわりすぎると収入は上がらない

一方、こうした抽象的な思考が苦手で、そんなことよりも、たとえば時給はいくらか、仕事はキツくないか、待遇はどうなっているか、自宅から通いやすいか、などといった極めて具体的な観点でしか仕事を選べないでいると、収入は上がっていきません。

より高収入な職を得るための戦略(=合理的な道筋、対策)を考えることをしていないのです。

人材エージェントをやっている知人に聞いた話ですが、低所得な人に限って詳細な職務経歴書を書くことができず、「面接が5回ある」というだけで腰が引けてしまうそうです。

これも自分のスキルや経験を俯瞰・客観視できていない、面倒なことを避けたいというマインドなのでしょう。

■高学歴・高所得親の会話によく登場する2つの言葉

このような親の思考力の差は、親が子にかける言葉や親子の会話、あるいは会話のテーマそのものといった日常生活の中での言語体験に大きな違いをもたらします。

高学歴・高所得親の会話の中には「たとえば」と「つまり」という言葉がよく出てきます。

「たとえば」を使う人は、物事を具体化して置き換えて説明できる能力があるということですし、「つまり」は要約して物事の本質を捉えるからこそ使える言葉です。

また、医者や弁護士の知人は、子どもと一緒にリビングで勉強しているそうです。親は専門書や論文などを読み、子は学校の勉強をする。

そうした家庭では子はよく親に質問し、親も子によく質問するようです。学校では質問(疑問を含む)は忌避されやすいですが、知的好奇心も探求心もまずは「なんでだろう?」「どうなっているのだろう?」という質問のはず。

学校では歓迎されない批判的思考を家庭で補っているのだと思います。かといって親は簡単には答えを与えず、「どう思う?」と子に考えさせるようにしているようです。

こうしたことを含みつつ、高学歴親の会話は論理的で、子は10年以上もその会話に接しますから、子も親の論理的な思考パターンを引き継ぐのでしょう。

■放任型の家庭で子どもは伸びる

一方、親が低学歴であっても子が高学歴になるケースでは、家庭環境はどうだったのか。

高学歴な子が育った家庭では、子に親の考えや価値観を押しつけたりせず、親は子の意志や判断を尊重し、子を信頼し任せる傾向があります。

親による押し付けや理不尽なルールは存在せず、家庭はほぼ「自由」かつ「放任」です。放任というのは無視とか放置ではなく、「好きなことをやりなさい」という没頭や探求(つまり本人が選んだことに集中して取り組むこと)への尊重です。

そうした親の考えは柔軟で、学校の成績が悪くても何かで失敗しても叱ることなく、子の挑戦を称え、好奇心を抑え込まないのです。

■東大生の多くは親から「勉強しろ」と言われたことがない

東大に進学した学生のほとんどは、親から「勉強しろ」などとは一度も言われたことがないそうです。

高学歴になる子の家庭では、子が自分の頭で考え自分で決断する習慣が養われます。

「自分で決めていい」ならば、自ら情報を集め、本人の価値観で判断しようとするからです。

親は子の話に真摯(しんし)に耳を傾け、子の意見を肯定します。他の人と比較したりテストの点数で子を評価したりもしない。「お前にはムリ、やめておけ」などとは言わない。などなど、子の自己肯定感を下げるような言動をしない点も特徴です。

逆に親が子に厳しくして子の意志を抑え込んだり、親が先回りしてレールを敷いたりすると、子は自分で決める必要がないので自分で考えることもしなくなり、親に言われたとおりにやればいいとなります。こうした家庭環境が「指示待ち人材」を量産するのかもしれません。

■思考力の格差が学歴格差と所得格差を生む

こうした「思考力の格差」つまり「思考格差」が結果として学歴格差や所得格差を生むわけで、親の所得は「本質的」な要因ではないというのが私の考えです。

親の所得や学歴を問わず、親が低学歴でも低所得でもあきらめる必要はなく、子の意志を尊重すること、親が子にかける言葉を適切に選ぶこと、親が精神的に安定していること、ガミガミ言わず穏やかな家庭環境を維持する、親が読書や勉強している姿を見せる、論理的な会話を心掛ける、子が自分で考え自分で判断するよう促す、挑戦を称える、失敗を許容する、好きなことに没頭できるようサポートするなどで、日常的に思考する習慣ができ、高学歴になる(ないしは自己責任で自分の進路や生き方を選択できる)ような育て方は可能なのです。

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午堂 登紀雄(ごどう・ときお)
米国公認会計士
1971年岡山県生まれ。中央大学経済学部卒。大学卒業後、東京都内の会計事務所にて企業の税務・会計支援業務に従事。大手流通企業のマーケティング部門を経て、世界的な戦略系経営コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルで経営コンサルタントとして活躍。2006年、株式会社プレミアム・インベストメント&パートナーズを設立。現在は不動産投資コンサルティングを手がけるかたわら、資産運用やビジネススキルに関するセミナー、講演で活躍。『捨てるべき40の「悪い」習慣』『「いい人」をやめれば、人生はうまくいく』(ともに日本実業出版社)など著書多数。「ユアFX」の監修を務める。

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(米国公認会計士 午堂 登紀雄)

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