子供に1000万円課金しても大学偏差値が3上がるだけ…賢い親は気づいている中学受験以外の課金先2つ
プレジデントオンライン / 2024年4月13日 15時15分
※本稿は、じゅそうけん『中学受験はやめなさい 高校受験のすすめ』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。
■早熟だが協調性がない人は中学受験が向いている理由
本稿では高校受験をどのように攻略していくかについて紹介していきますが、前提として、高校受験ではなく、中学受験をすべき人も存在します。
早熟で認知能力は高い傾向にあるが、社会適応性の面がやや未発達で、先生に気に入られなそうな子は中学受験向きだと言えます。要は、明らかに内申点が取れなそうな子を高校受験市場に参戦させたら、芳しい結果は得られないだろうということです。
現在の都立高校入試では、約3割が内申点となっており、実技科目の配点が多く設定されています。
特に実技科目では、ペーパーテストの出来は最低限しか加味されず、意欲的に頑張っている(ように見える)といった曖昧な理由で内申点が付けられる傾向にあります。
そのため、勉強は得意だけど同級生と比較して精神的にやや幼い・協調性が低めといった傾向が小学生のうちから見られるようなら、中学受験の方が可能性が広がるかもしれません。
中学受験では(一部面接のあるところもありますが)基本はペーパーテスト一発勝負で、勉強さえできれば突破できます。
先ほども触れましたが、私は明らかに「中学受験向き」な子供でした。中学入試や大学入試のように、単純にペーパー試験の点数順だけで合否が決まるのであれば自分はトップ公立高に受かったのに……と、しばらくの間引きずったのをよく覚えています。
■「社会性に難点ありだが、勉強はできる」人におすすめのルート
将来の会社員人生を考えると、たしかに内申点を稼ぐ力はかなり重要な要素になります。しかし、各人には適性というものがあります。
どうしてもそれが難しそうな子に無理やり先生に媚を売る練習をさせ、エリート会社員予備軍に仕立て上げようとしたって無理があるのです。
そういう特性の強い天才肌タイプには、またそれぞれに合った道があるのだと考え、公立進学校→名門大学→大手JTCという優等生ルートは早期に諦めるのが吉でしょう。
ちなみに、そうした社会性に問題ありだが勉強はできる人におすすめなのは医師や公認会計士などの士業だったりします。
もちろんどの職業も他者との関わりは必ず発生しますが、これらの士業は組織内での立ち回りよりも個人の腕が評価される傾向にあります。当然高度な知的能力が必要とされますから、希少性も高く、一度資格を取ってしまえば一生食いっぱぐれる可能性も低いでしょう。
■偏差値3増のために1000万円を注入するという考え方
中学受験をすると、偏差値が2~3程度上がるという説があります。要は、同じポテンシャルの子供を中学受験市場に参戦させることで、高校受験を選択した世界線より1ランク最終学歴が上がるというのは、周りを見ていても実感としてあります。
しかし、中学受験を選択することは、公立コースに比べて最大1000万程度余分に資金を注入することを意味します。
偏差値3のために1000万円を高いとみるかお買い得とみるかは、各々の経済状況にもよると思いますが、大多数の家庭にとっては「え、それだけお金かけてそんなもんなの?」というのが正直な感想ではないでしょうか。
ただ、日東駒専レベルの人が中学受験をしたことでGMARCHクラスになったとか、GMARCHクラスだった人が早慶になったみたいなケースであれば投資した価値はあると言えるでしょう。
大手企業では「早慶」「GMARCH」といった大雑把な枠組みの中で学生を採用しており、1ランク上の大学群に入ることでかなり有利に働くことになるからです。
しかし、これが早慶下位学部から早慶上位学部、上智から慶應、一橋から東大のような違いしかもたらさないのであれば、就職先なども大きく変わることはなく、学歴から得られるメリットは投資に見合うとはあまり言えません。
ただ、これは受験と生涯年収でみた投資収益率というきわめて偏った考え方です。こうした無味乾燥な「コスパ」の側面だけではなく、教育環境や教育理念といった面を重視して私立中学を選ぶご家庭もたくさんあるということは注記しておきます。
■高学歴人材に共通する2つの要素
子供への課金と聞くとまず塾や習い事が浮かぶと思いますが、塾や習い事へ課金することが自己目的化してしまい、子供の成長や将来の成功につながらなければ意味がありません。
中学受験をはじめとする幼少期からの勉強への課金の他に、子供が将来「成功」するための課金について考えてみます。
私は早稲田から大手銀行に入るまでに出会った人々や、SNSを通じて出会った多くの高学歴人材を見てきて、成功するためには次の2つが重要なのではないかと考えています。1つ目はバランスのいい経験、もう1つは海外経験です。
1.バランスのいい経験
バランスのいい経験とは、試験一辺倒の学力の養成だけでなく、課外活動をしたり、友達と遊びに行ったり、家族で旅行に行ったりといった様々な経験のことです。
特に私の周りで成功している人は、サラリーマンであれ起業家であれ、「コミュ力」に優れていると感じられます。
コミュ力とは相手の求めていることを察知したり、主張すべき際はうまく主張したり、そのくせ和を乱すことなく心地よい対人関係を維持できるような能力だと考えています。
例えば勉強一辺倒だった人は、その場の空気よりも会話の「正解」を考えてしまい、強い主張をして空気が悪くなる、といった事故を起こしがちです。
集団で行動するときには、真理よりもその場の空気を優先すべき事態だって起こりえます。
かといって空気を読みすぎて何も言わないだけでは、主張ができない「モブキャラ」となり、集団の中心人物になるのは難しいでしょう。
■小学校時代に勉強以外で「課金」すべきもの
本当に仕事ができる人は、プライベートを含め重要人物と良好な関係を築き、社内では根回しをして、人を動かせて決定ができる決断力を備えている人です。
そのような対人関係のバランス感覚のようなものは、幼少期からのスポーツ経験であったり、友達と遊んで喧嘩した経験であったり、家族間での信頼関係であったり、学校・地域での上下関係であったり、様々な対人関係を通して身につくものでしょう。
首都圏の中学受験が過熱化し、幼少期から塾へ課金して時間も労力もかける傾向が進んでいますが、お金や時間を投資すべきなのは勉強だけとは言えません。例えば集団競技のスポーツを小学校から続けていれば、周囲と協調して困難を乗り越える経験ができるでしょう。
集団競技では個のパフォーマンスを高めるのと同時に、戦術を理解してチームに献身する協調性も求められます。集団競技を小さい頃から経験してきた人は、そのような「個と集団」のバランス感覚に長けていると感じます。
また意外に思われるかもしれませんが、「体力」も重要な要素であると感じます。社会に出て活躍するには仕事にプライベートに奔走する基礎体力が重要です。
幼少期からスポーツに課金してもらい、良質な体力トレーニングを積んできた人は、大人になってからの活動のベースになる体力面でも秀でているでしょう。
このように、小学校時代に「課金」を検討すべきなのは、勉強以外にもたくさんあるのです。
■「世界を股にかける」が一流の証しに
2.海外経験
また自分が見てきた成功者には、海外経験という共通点も見られます。総合商社勤務やメガバンクの海外駐在担当者といった世界を股にかけて働く人材は、それだけでハイスペック人材のため希少価値が高く給与も高い場合が多いです。
直接海外勤務しない日系大手勤務のサラリーマンも、長期休暇や新婚旅行で海外に行く姿をよく目にします。
グローバル化が進んだ現代では、「世界を股にかける」というのは一流の証しになっていると感じます。
幼少期から海外経験を積むメリットは大きく2つあると考えています。1つ目が語学や文化といった海外の実態を体で吸収できる点、2つ目が「優秀さ」のアイコンになるという点です。
語学を学ぶならその言語が話されている場所で生活するのが一番いいのは言うまでもありません。ネイティブが話している生きた言語を体感することができますし、生活がかかっているとなれば脳も必死になってフル回転します。
特に小学校など年齢が若いうちであれば、新しい言語に対する吸収も早いことでしょう。
また学校文化1つとっても、日本と世界では大きな違いがあります。
実際私は小学校低学年の時にアメリカで過ごしていましたが、現地の小学校では驚きの連続でした。同じクラスには色々な人種が混在しており、今までいかに自分が狭い価値観の中で生きてきたのか痛感しました。
私の家族と同じように世界各国から駐在で来ている人も多く、国籍も多様なため、文化や宗教の信仰の違いなどがあり、学校側もそれぞれの事情に合わせていました。
生徒たちは多文化理解が深まり、お互いがお互いの価値観を尊重していた気がします。日本の学校のような同調圧力は全くありませんでした。
■中学受験よりもおすすめの選択肢
語学学習や異文化理解という点で、幼少期から海外経験に時間やお金を割くのは1つの選択肢です。場合によっては中学受験に課金するよりも、その子の人生を豊かにするようなリターンが大きくなることでしょう。
さらに「海外経験」は、それだけでその人の優秀さを測る「学歴」に近い存在になってきているとも感じます。
近年の就活を経験した人なら常識となっていることですが、「体育会」と「留学」が就活で評価される2大ポイントになっているのです。
大手企業から内定をもらった人に話を聞くと、「私は体育会でもなければ留学経験もないけれど」などという謙遜のセリフをよく聞きますが、それほどまでに体育会と留学は就活で評価されるポイントとして世の中に定着しているのです。
実際に留学といっても数週間の旅行に毛が生えたようなものから、数年間研究に行くガチなものまで幅広いですが、就活では「留学」というワードが一人歩きして、「留学」=語学堪能で、海外の人とも積極的に交流でき、留学に行かせられるくらいには家庭の金銭的余裕もあるなど、万能な指標として捉えられがちです。
数週間の旅行程度の留学に行ったからといって特段有能とは言えない気がしますが、そこは「学歴」の持つ第一印象のように、短時間で評価を下さないといけない就活における事情があるのだと思います。
いずれにせよ「優秀」といった第一印象を獲得できるのなら、海外経験をしておいて損はありません。大学生が短期留学に行くことが主流になるにつれ、大学時代では差がつかなくなり、高校以前になるべく長期で海外にいたことに評価が移っていく可能性もあります。
小・中学校の早い段階から時間やお金を投資する対象として、中学受験よりも「海外経験」はおすすめの選択肢です。
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受験総合研究所、略して「じゅそうけん」の名前で活動する学歴研究家。本名は伊藤滉一郎。じゅそうけん合同会社代表。「じゅそうけんオンライン塾」を運営する傍ら、X(旧Twitter)をはじめとするSNSコンサルティングサービスも展開する。早稲田大学を卒業後、大手金融機関に就職。その後、人生をかけて学歴と向き合うことを決意し退職。高学歴1000人以上への受験に関するインタビューや独自のリサーチで得た情報を、X(旧Twitter)やYouTube、Webメディアなどで発信している。著書に『中学受験 子どもの人生を本気で考えた受験校選び戦略』(KADOKAWA)、『中学受験はやめなさい 高校受験のすすめ』(実業之日本社)がある。
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(学歴研究家 じゅそうけん)
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