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100万円が16万円になる悲劇…大損した投資家が今年に入って買っていた"ある投資信託"

プレジデントオンライン / 2022年5月25日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SunnyVMD

市場が不安定な時期、投資で気をつけるべきことは何か。経済コラムニストの大江英樹さんは「最近、レバナスで大損してしまったという悲鳴がよく聞こえてきます。レバレッジ型投資信託の落とし穴をよく理解しておく必要があります」という――。

■レバナスで大損した人たちの悲鳴

最近、SNSなどでよく取り上げられているのが「レバナスで大損をしてしまった!」という話題です。みなさんの中にもこの「レバナス」という言葉を聞いたことがある人がいるかもしれません。この言葉はどういう意味かというとアメリカの株式市場のひとつであるナスダック(NASDAQ)の株価指数にレバレッジをかけて投資をするタイプの投資信託のことです。レバレッジというのは梃子(てこ)という意味ですが、投資においては少ない金額で大きな成果が出るような仕組みのことを言います。

NASDAQ指数のような株価指数に投資をする場合、指数の値動きに2倍とか3倍といった一定の倍率(レバレッジ倍率)を掛けた値動きとの連動を目指します。NASDAQ指数にはNASDAQ100とNASDAQ総合指数がありますが、投資信託でよく使われる指数は主にNASDAQ100の方です。例えば指数が3%上がった場合は2倍であれば6%上昇しますので、より大きなリターンを得ることができますが、逆に下がる場合も2倍下がりますので、その損失はより大きくなります。

■100万円が16万円になる悲劇

昨年は年間を通じて米国市場が大変好調でしたから、より儲けを大きくしたいということでレバレッジ型のファンドに人気が集まったわけですが、一旦逆方向に動き始めると損失も2倍、3倍となりますので損失は相当大きくなります。

今年に入って以降、米国株式市場は弱含みが続いており、特にハイテク関連が多いナスダックの下げが目立ちます。ニューヨークダウは年初から約13%の下落ですが、ナスダックは約28%下落しているからです。もし年初の高値でレバレッジ2倍のファンドを買っていると下落率は56%、3倍だと84%の下落ということになります。84%下落ということは100万円が16万円になってしまっているわけですから、レバナスを買った人の悲鳴が聞こえてくるというのもよくわかります。

■レバレッジ型投資信託の落とし穴

それにレバレッジ型ファンドには大きな落とし穴があります。仮に買ってから、ほとんど下がることなく上昇を続けていけば確かに上昇幅の2倍とかのリターンがありますが、上昇と下落を繰り返すと必ずしもその通りにはならないからです。

この理由はレバレッジ型投信の仕組みにあります。一般的にレバレッジ投信は、2倍、3倍のリターンを得られるようにするために先物取引を使っています。その際、対象となる指数の1日単位の値動きに対して2倍とか3倍といった倍率を掛けた騰落率となることを目指しています。これによってどういうことが起きるかを考えてみましょう。

わかりやすくするために極端な例で考えてみます。例えば100で買ったものが翌日80に値下がりしたとします。さらにその翌日には100に戻した場合、±は0となりますが、レバレッジ投信の場合は0にならず、マイナスとなります。100が80になると20%下落しますが、2倍のレバレッジをかけているため、投信の下落幅は-40となり、価格は60になります。翌日に指数の80が100になるということは25%上昇しますから2倍の50%となりますが、60が50%上昇するので90となり、100には届きません。

事実、ナスダックは年初から上下動を繰り返しながら28%下落していますが、同指数を対象とするレバレッジ型投信の場合、価格下落率は約50%となっていますから半値になっています。

金融技術の概念
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

■挽回できないという痛手

さらにレバレッジ型投信で起こり得る問題は基準価額が0円、すなわち価値が全くなくなってしまうということが理論上は起こり得るということです。普通の株式型投資信託の場合、組み入れている企業が全て倒産してゼロにならない限り、基準価額がゼロになることはありません。つまり、単にナスダック市場に連動する普通の投資信託であれば、ナスダックに上場している銘柄が全部倒産しない限り、ゼロにはならないのです。

ところがレバレッジ型の場合、指数であるナスダックがゼロにならなくても暴落が続いて50%下落すれば、下落幅も2倍以上となりますから、理論上はゼロになることもあり得るのです。ただ、現実にはそうなる前に恐らく「繰上償還」をすることになるでしょう。

「繰上償還」というのは、環境の変化で運用の継続が困難になったと判断された場合、運用会社がファンドの運用を停止してしまう措置です。通常、株式や投資信託への投資においては、値段が下がったとしてもそのまま持ち続ければ再び上昇することもあり得ますが、投資信託で繰上償還がおこなわれるとその時点で運用はできなくなります。

これが単に普通の投資信託であまり人気がなく、残高が少ないために繰上償還になったのであれば、いくらかでも利益の出ている可能性はあります。しかしレバレッジ型は多くの場合、価格が大幅に下落したことで繰上償還になると考えられますから、大きな損失が確定し、しかもその後運用ができないので、挽回することもできません。

■リスクは高いが、絶対買ってはいけないわけではない

この数年は米国株式市場、中でもナスダックは非常に好調でしたから、レバレッジ型投信で大きな利益を挙げた投資家も多かったと思いますが、歯車が逆回転してしまうとたちまち大きな損失が出るので、レバレッジ型投信というのは非常にリスクの高いものであることは十分承知しておく必要があります。

ただ、レバレッジ型投信は絶対買ってはいけないのかと言えば、そういうわけではありません。使い方によっては有効な場合もあります。株式投資の場合でも信用取引というやり方があります。信用取引とは、一定の保証金を証券会社に担保として預けることで、証券会社から資金を借りて株を買う取引です(逆に株券を借りて売る取引もあります)。この場合は自己資金の何倍もの株を買うことができますので、これもレバレッジを効かせた取引と言っていいでしょう。

■あくまで短期取引と割り切って

では一体どんな場合にレバレッジ型投信や信用取引を利用するのが良いかということですが、それは「どう考えても大きく下がり過ぎていると考えるので、ごく短期間の間に株価が戻ることを予想して利益を取りに行こう」と考えた場合です。

例えば2020年の始め頃、コロナ禍が拡大することで2月から3月にかけての1カ月という短期間の間に株価は3割以上下落しました。あの下がった時にレバレッジ取引をおこなっていれば、ごく短期間のうちに大きな利益を挙げることができました。もちろんその場合はかなりリスクを取ることを覚悟しないといけなかったわけですが、リスクとリターンは常に表裏一体です。大きなリスクを取ったからこそ高いリターンを得ることができたとも言えます。

いずれにしてもレバレッジ型投信に投資するのであれば、あくまでも短期取引と割り切っておこなうことが大切です。「下がっても持っていればその内上がる」ということは考えない方が良いでしょう。決して長期保有には適さないものですから、まちがっても「NISAで5年間持っておこう」などとは考えない方が良いと思います。

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大江 英樹(おおえ・ひでき)
経済コラムニスト
大手証券会社に定年まで勤務した後、2012年に独立し、オフィス・リベルタスを設立し、代表に。資産運用やライフプランニング、行動経済学などに関する講演・研修・執筆活動などを行っている。近著に『定年前、しなくていい5つのこと』(光文社新書)など。

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(経済コラムニスト 大江 英樹)

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