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「君はいつも遅刻してるね」はどこが問題か…話がロジカルではないと思われる人がつい多用する言葉

プレジデントオンライン / 2023年5月22日 13時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/coffeekai

話が上手な人は何が違うのか。明治大学教授の齋藤孝さんは「論理的な話し方をすることが大切だ。長すぎる文章やあいまい表現には注意したほうがいい」という――。

※本稿は、齋藤孝『格上の日本語力 言いたいことが一度で伝わる論理力』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。

■聞き手が内容をつかめない話し方

日本語は基本的に述語が文末にきます。その構造上、話を最後まで聞かないと、何を言いたいのかがわかりにくい場合がしょっちゅうあります。たとえば、

「高橋さんは昨日、大学時代の同期で、いまもときどき情報交換を兼ねて一緒に飲み歩いては旧交を温めている鈴木さんと、神田の昔なじみの居酒屋で飲もうと約束して楽しみにしていたけれど、鈴木さんの仕事の都合でドタキャンされたそうで、だから今日は朝から元気がないんです」

というように、最後まで聞いて初めて、「ああ、高橋さんは鈴木さんと飲めなかったから元気がないのか。ドタキャンされたのはお気の毒だったね」とわかります。こういう話を聞かされると、ちょっとイラッとします。

なかには、話をいいかげんに聞いて、「何だ、高橋さんが飲んだ話か」とか、「高橋さん、二日酔いか。どうりで元気がないと思った」などと早合点する人もいるでしょう。

これでは論理的な話し方とは言えません。主語と述語があまりにも離れているために、聞いている人が話の内容をつかめず、イライラしてしまうのです。

この場合の言いたいこととは、「高橋さんが元気のない理由」です。では、どう言えばいいのか。

■主語と述語をなるべく近づけて話す

一番のポイントは、主語と述語をなるべく近づけること。まず「高橋さんが今朝、元気がないのは、昨日、飲み会をドタキャンされたからなんです」と言う。

次に「相手は鈴木さんという大学時代の同期で、いまもときどき一緒に飲み歩いては旧交を温めているそうです」と、相手の情報を伝える。

そして「実は昨日も昔なじみの居酒屋で飲む約束をしていて、高橋さんは楽しみにしていたんです」と、元気のない理由の補足説明をする。

こういう展開だと、話がスッキリして、相手に正確に伝わるでしょう。

日本語はその気になれば、主語と述語の間にいくらでも情報を詰め込むことができます。人や物を表す名詞の前に、それを説明するフレーズを長々とつけたり、文を切らずに接続助詞(ので、から、けれど、のに……)でつなげたり、「名詞+助詞(が、の、を、に、へ……)」をいくつも並べたりすることが可能だからです。

それだけでも内容があいまいになるのに、頭のなかで考えが整理されていない場合はもっとひどいことになります。長々と話す、あるいは書くうちに、いつの間にか主語が変わったり、述語が消えたり、全然違う話題になっていたりと、まさに非論理的な話し方・書き方に陥ってしまうのです。

そうならないためには、「主語と述語をなるべく近づけて話す」ことを心がけてください。そのうえで、説明したいことの優先順位をつけて、短いセンテンスでつなげるといいでしょう。この「優先順位」が論理を形成するのに役立ちます。

■「文章が長すぎる話」はわかりにくい

聞く側からすると、「誰がどうした」「何がどうなった」を早くわかりたいのです。その要望に応えるように、サッと重要な部分をはじめにまとめる習慣が大切です。

〈レッスン〉文章を短く切って、大事なことから話す

文章で言えば、句点「。」を少なくとも2行に1つはつける感じがいいと思います。テンポがよく、歯切れのいい説明になるはずです。

話のわかりにくさの原因のひとつは、文章が長すぎることです。短く切って、大事なことから話すようにすると、かなり論理的な話し方・書き方ができるようになります。

次の3つの課題を、例に倣(なら)ってやってみてください。

【課題】
1 あなたの仕事について説明してください。
2 あなたの家族について話してください。
3 あなたが自分の長所・得意をどう生かしているか聞かせてください。


【例】
「私、齋藤孝は明治大学文学部の教授です。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。私が教えている学生は、教師を目指しています。彼らに教師の資質、あるいは、○○の力を身につけ、磨き上げてもらうこと、それが私の使命です。

私が考える教師の資質・力は、おもに3つあります。1つは、要約力・質問力を含むコメント力。2つ目は……3つ目は……」

というふうに、伝えたいことを整理して短く言うのがコツです。

上司と一対一で話し合い
写真=iStock.com/maroke
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maroke

■「君はいつも遅刻してるね」は非論理的

「君はいつも遅刻してるね」
「そんなことはみんな知ってるよ」
「よくあるよね、そういうこと」
「それをやるのは、けっこうリスクがあるよね」
「相当難しいよ、その学校に合格するのは」
「何でも簡単にやってのけちゃうんだ、彼は」

ビジネスでも日常でも、この種の言葉がよく使われます。いや、「よく」というのは正確ではありません。「かなり頻繁に」と言うべきでしょうか。

こういった頻度や数量的なことに関して、グレード(段階)を大ざっぱに言うのは、論理的ではありません。人によってグレードを受け止める感覚が違うし、表現が大げさな人もいれば、控えめな人もいるので、「共通言語」になりにくいのです。

たとえば「いつも」という言葉。「いつも遅刻する」とか「いつもミスする」といっても、現実に「いつも」である場合は少ないでしょう。言われたほうは「いつも、ですか。たまに、ですよ」と反発したくもなります。こういうときは、

「君はけっこうな頻度で遅刻をするよね。月に2、3回は多すぎるよ」

などと、互いにおおよその線を共有できるように言うのがいいのです。

■「いつも」は精神面にも影響を与える

私たちは1つの事象だけを捉えて、そうしょっちゅうあることでもないのに、つい「いつも~してばかり」という表現を使いがちです。何度か勉強しているのを見かけて、「いつも勉強ばかりしているね」と言ってみたり、たまたまパチンコ屋から出てきたところに出くわして、「暇に飽かして、いつもパチンコばかりしているんだね」と決めつけたり。これは、日常における非論理的な表現の典型と言えます。

ちょっと話は横道にそれますが、この「いつも」は心理面にも影響を与えます。

一例をあげれば、自分はアルコール依存症だと思い込んでいる人の場合。現実に1日のうちで酒を飲んでいる時間を調べてみると、「いつも」というわけではなく、飲んでいない時間、飲んでいない日もある。そこを認識すると、「いつも」の縛りから解き放たれて、治療がうまくいく場合があるそうです。

「いつも~してばかり」が褒(ほ)め言葉ならいいのですが、そうではない場合、言われたほうは「ああ、自分はダメな人間だ」と精神的に追い詰められてしまうのです。

■論理的に話すためには「数字で示す」のが一番

それはさておき、ほかにも前の例のように、「該当する人が数人いるだけで『みんな』と言う」とか、「リスクがどの程度かを調べもせずに『けっこうある』と言う」など、この種の“あいまい表現”は始終やりとりされています。

齋藤孝『格上の日本語力 言いたいことが一度で伝わる論理力』(中公新書ラクレ)
齋藤孝『格上の日本語力 言いたいことが一度で伝わる論理力』(中公新書ラクレ)

論理的に話すためには、「実証的なデータに基づいて数字で示す」のが一番です。そこをまず大事にしてください。

それができない場合は、グレードをしっかりわきまえて、相手と共有できる表現にすることです。

たとえば、リスクについて言うなら、「こういう場合に元本割れするリスクがあります。これまでの統計データによると、5%程度のリスクですね」という言い方は、聞き手にとって親切です。

図表1で、グレード別に妥当な日本語表現を紹介しますので参考にしてください。

【図表】グレード別の妥当な日本語表現
出典=『格上の日本語力 言いたいことが一度で伝わる論理力』

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齋藤 孝(さいとう・たかし)
明治大学文学部教授
1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業後、同大大学院教育学研究科博士課程等を経て、現職。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。ベストセラー作家、文化人として多くのメディアに登場。著書に『孤独を生きる』(PHP新書)、『50歳からの孤独入門』(朝日新書)、『孤独のチカラ』(新潮文庫)、『友だちってひつようなの?』(PHP研究所)、『友だちって何だろう?』(誠文堂新光社)、『リア王症候群にならない 脱!不機嫌オヤジ』(徳間書店)等がある。著書発行部数は1000万部を超える。NHK Eテレ「にほんごであそぼ」総合指導を務める。

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(明治大学文学部教授 齋藤 孝)

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