1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

医学部進学は「予備校代で2000万円」もあり得る…普通の受験とはまるで違う「医学部専門予備校」という世界

プレジデントオンライン / 2023年6月20日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AndreyPopov

医師になるには医学部進学の必要があるが、その前に「医学部専門予備校」に通う高校生も多い。受験カウンセラーの野田英夫さんは「医学部専門予備校の授業料は、通常の予備校よりも高く、中には年500万円を超えるところもある。2年程度の浪人は珍しくないので、予備校費用だけで2000万円を支払うケースもある」という――。

※本稿は、野田英夫『『医学部にはエスカレーターでのぼりなさい』 偏差値40から浪人せずに医者になる方法』(日刊現代)の一部を再編集したものです。

■医学部専門予備校の学費は通常の予備校より高い

医学部に進む場合、授業料も多額の費用がかかります。

といっても、それは大学の授業料だけを指すのではありません。

一般的に、「医学部受験は普通の大学受験とは勉強法がまったく違う」「医学部に行くためには専門の勉強をしなければならない」と考えられており、ほとんどの生徒が学校とは別に、“医学部専門予備校”に通うからです。

医学部専門予備校も多数存在します。一般の予備校とはずいぶん様子が異なり、個人または少人数で非常に丁寧な指導を行うため、料金は高めの設定になっているようです。

■500万円を超えるところも

一般的に浪人した場合、予備校にかかる金額(年間)は、図表1のようになっています。

【図表1】予備校 学費(高卒)
出所=『『医学部にはエスカレーターでのぼりなさい』 偏差値40から浪人せずに医者になる方法』

大手予備校の場合は、100万円を切る金額ですが、医学部専門予備校になったとたん、金額が跳ね上がるのがおわかりいただけると思います。

なお、こちらの金額には夏期講習や弱点を補うための科目別授業などは含まれていませんので、それらを受講する場合、さらにプラスαのお金がかかってきます。

また、授業内容も医学部進学コースの「本科クラス」の授業のほか、受験対策として「単科クラス」も受講するケースがほとんどです。

量、質ともに圧倒的に勉強しなくてはいけません。当然ながら講師のレベルも高くなり、予備校にかかる費用も高額になってしまいます。

■予備校だけで2000万円かかるケースも

では、もう少し具体的な金額をご紹介しましょう。

高校入学と同時に、ある有名医学部専門予備校に入り、浪人2年目で合格を勝ち取った場合にかかる費用の一例です。

現役で医学部に合格する生徒は国公私立大学全体では約13%(国公立大学のみは約30%)といわれており、2浪して医学部に合格するケースが多いため、次に挙げた費用はほぼ平均的なものといえます。

【図表2】高校1年~浪人2年目までの予備校費用
出所=『『医学部にはエスカレーターでのぼりなさい』 偏差値40から浪人せずに医者になる方法~』 

ここには、夏期・冬期講習の費用は入っていませんから、さらに、プラスαの費用がかかります。

■親も戦っている

医学部に進学した場合の学費の高さはよく知られていることですが、すでにその準備段階から高額の費用を覚悟しなければならないのです。

このように、親にとっても、医学部進学によって経済的に大きな負担を強いられます。

麻生元財務大臣による「老後2000万円問題」は大きな関心を呼びましたが、両親からすれば、老後の前に2000万円が必要となるのが医学部の世界。子どもが過激な受験戦争の真っただ中にいるときに、親もお金と戦っているのです。

■難関進学校に入れないと医学部受験では不利

そしてもう一つ覚えておきたいのが「死にもの狂いで何年勉強しても、医学部に合格できないケースもある」ということです。

中学受験で難関進学校に入ることができ、そのまま死にもの狂いで上位の成績を取り続けることができれば、多くの場合、現役で医学部に合格できることでしょう。

難関進学校には同じような境遇の生徒が多くいるため、モチベーションが下がりにくいからです。

しかし、難関進学校に入学できなかった場合は残念ながら、現役では医学部に進学できないケースが多く見受けられます。

医学部を目指すような意識の高い生徒が周囲にいないと、どうしても「自分一人でも頑張る」という状況を作りにくくなります。

次第に周りの空気に飲まれて、「医学部を目指す」という志も薄れてきて、ついつい勉強以外のことにかまけてしまうのです。

当然そうなれば、何回受験を繰り返しても医学部に合格することはできません。

このように医学部進学には、高い壁がいくつもそびえているのです。

壁
※写真はイメージです
医学部進学には、高い壁がいくつもそびえている(※写真はイメージです) - ※写真はイメージです

■女子差別は改善されている

医学部入試において、一部の大学で女子を不利に扱っていた女子差別問題は、ニュースで話題になりました。

2018年に発覚した不適切入試以降、女子への差別は改善されていると示すデータがあります。

文部科学省による学校基本調査によると、問題が発覚した2018年度の医学部医学科の入学者で女子が占めた割合は34.7%。

2019年度は37.2%、2020年度は36.6%となっており、女子の入学者が増えたことがわかります。

■国公立大学ではまだ男女の合格率に差がある

全医学部医学科の男女別の合格率を見てみると、2021年度の「私立大学」において男女の合格率にもっとも開きがあったのが川崎医科大学で、女子が6.9ポイント高く、次に聖マリアンナ医科大学では、女子が5.6ポイント高いという結果でした。

私立大学の場合は、男子の人数のほうが際立って高い大学はほとんど見受けられませんでした。

一方、2021年度の「国公立大学」で見てみると、男女の合格率の差が大きい大学が数校ありました。

合格率の差は、男性合格率-女性合格率で知ることができます。

これに当てはめた結果、もっとも差が開いていたのが大阪大学で、男子のほうが17.4ポイント高くなっていました。

このほか、新潟大学は15.3ポイント、筑波大学は14.4ポイント、山梨大学は12.6ポイント、浜松医科大学は10.6ポイントと、男子の合格率が10ポイント以上高い学校は計5校ありました。

これまでの経験上、医学部受験においては、男女で差がつくことも多いように感じています。

その原因は、女子の合格者を制限していたこともあるでしょう。

なぜなら、女性が医師になる場合、医師として働ける期間が短くなる傾向があるからです。

白い背景に聴診器を持つ女性医師
写真=iStock.com/Oleksandra Kharkova
女性が医師になる場合、医師として働ける期間が短くなる傾向がある(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/Oleksandra Kharkova

■女性の合格率に差をつけてきた

例えば医学部で6年間学び、医師国家試験に合格して医師免許を取り、2年以上の臨床研修を受け、1人前になって医師としてのスタートラインに立った時、年齢はすでに30歳前後になっています。

すると、女性の場合は結婚適齢期にもあたるので、そこから結婚、出産、子育ての時間が必要となり、長期間現場を離れることになります。

職場復帰して、このブランクを取り戻す時間を含めても、医師としてしっかり現場で活躍できるようになるのは40歳前後。60歳まで働くとしても、現場で働ける時間は約20年しかありません。数字だけでみてしまうと、非常に効率が悪いということになります。

これは現場復帰した場合ですが、そうでない場合は活躍できる期間はさらに短くなります。

不公平ではありますが、こういった背景から女性の合格率に差をつけてきたのでしょう。

■多浪の受験生を避ける大学

アンフェアということでいうと、医学部の場合は多浪生にも“ハンデ”があるといわれます。

受験勉強を長く続けた末の合格となると、気が緩んでつい遊んでしまう学生が多く、留年する、あるいは国家試験の合格率が低いといった傾向が出てしまいます。

そのため、多浪の受験生を避ける大学があるというのです。

もちろん浪人生のすべてがそういう学生ばかりではないはずですが、そういった学生を一度でも受け入れた大学では、面接でも多浪生には厳しい質問をし、心構えを問うということも現実に行っているようです。

さらにいうと、居住地が首都圏か地方かということでも、すでに差があります。

野田英夫『『医学部にはエスカレーターでのぼりなさい』 偏差値40から浪人せずに医者になる方法』(日刊現代)
野田英夫『『医学部にはエスカレーターでのぼりなさい』 偏差値40から浪人せずに医者になる方法』(日刊現代)

例えば、首都圏の難関進学校の場合、中高一貫のため、高校1~2年生までの段階で高校3年までのすべてのカリキュラムを終えてしまいます。

しかし、地方の場合、進学校にあたるのが県立上位校となり、高校1年生からカリキュラム開始となるため、スタート地点がまったく違っています。

首都圏の生徒と比べると、すでに周回遅れでスタートを切るようなものなのです。

そのため、なかなか現役合格は難しく、浪人してしまう可能性が増えてしまいます。

いま挙げたさまざまな点を鑑みても「医学部入試はフェアじゃない」ということがおわかりいただけたかと思います。

----------

野田 英夫(のだ・ひでお)
受験カウンセラー、MIRAINO教育グループ代表取締役
4月19日(ヨイジュクをつくるため)、東京・市ヶ谷に生まれる。大手進学塾の専任講師から支部長、本社経営部門を歴任。在職中はトップ講師として5000名以上の生徒たちを難関校合格に導く。その後、独立し、早慶中学に特化した完全個別指導の「早慶維新塾」を開校。2020年に大学付属校専門塾「早慶ゼロワン」を立ち上げる。2022年に医学部受験専門塾「Dr.Aiss(ドクターアイズ)」を開校。現在、直営とフランチャイズ校で計11教室を運営している。著書に『御三家はわかりませんが早慶なら必ず合格させます』(朝日新聞出版)、『中学受験 大学付属校 合格バイブル』(ダイヤモンド社)がある。

----------

(受験カウンセラー、MIRAINO教育グループ代表取締役 野田 英夫)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください