どんなエリートでもこれを書くと書類で落ちる…転職で絶対にやってはいけない職務経歴書の書き方
プレジデントオンライン / 2023年7月12日 15時15分
■転職に成功する人が守っている3つのステップ
転職活動がこれまでにないほど活発化しています。当社にも40代・50代のミドル・シニアからの転職相談が日々多く寄せられています。そのような中、転職活動でうまくいく人といかない人の違いの一つは、職務経歴書の記述にあります。
そもそも転職活動の成功とは、次に挙げる3ステップをクリアすることです。
(2)その採用ニーズに自分が合致していることを伝え(接合点の提示)
(3)応募先企業があなたを雇うことに十分なメリットを感じる(再現性の提示)
「あなたが相手企業に感じている魅力」「その職務につくあなたのメリット(経験したいこと、学びたいことなど)」「あなたの優れていること」などは、大事な部分ですが、まずこの3ステップありきでない限り、企業があなたを雇いたくなる直接的な理由にはなりません。
しかし、3ステップの情報交換をせずに、このような自分の(勝手な)メッセージだけを一生懸命にアピールする人も少なくありませんが、これが大きな間違い、失敗のもとなのです。
上記は転職活動全般に言えることで、いざ面接という際にはある程度意識して対応される方もいらっしゃいますが、勝負は実は書類応募段階から始まっていることに、案外、多くの人が気づいていません。
書類応募段階で、この3ステップを踏まえて、職務経歴書を書くことが大事なのです。
■書類選考で落ちる人が書いていること
具体的に見ていきましょう。
皆さんが転職活動で最初にする通り、企業の採用ニーズは転職サイトや自社ホームページに掲載された求人情報の「業務内容」「必須要件」「歓迎要件」「求める人物像」に記載されています。今回は以下の求人情報をサンプルに使います。
■中堅部品メーカーA社(本社:神奈川県、売上高:300億円、従業員数:700人)
募集ポジション「経理財務部長候補」
年収:800万~1200万円
●業務内容
ある特定の金型で高い技術を持つ老舗部品メーカー会社が経営体制刷新に伴い経理財務部長候補を求めます。オーナー家から投資ファンドに株主が移行し、外部から新社長が着任。その社長と共にこれからの同社の管理部門をマネジメントいただける方に参画いただきたいと考えています。若返りも図った同社の、ここからの成長を支えていただける幹部候補の参画を期待します。
●必須要件
経理財務部長として、財務・経理・経営企画の統括・推進で十分なご経験とご実績をお持ちの方
●歓迎要件
・製造会社での経理財務部長のご経験をお持ちの方
・管理本部長として人事総務、法務、情報システムも包括してマネジメントしたご経験をお持ちの方、歓迎
●求める人物像
・論理思考力にたけた方
・社員の業務コミットメントを高められる方
・自ら現場に入り込んでいき、社員に直接働きかけるコミュニケーションスタイルの方
人材エージェントやヘッドハンティング会社が公開するクライアント企業の案件として、かなり一般的なレベルの情報です。
この、中堅部品メーカーA社・経理財務部長候補の求人に対して、多くの方々がアクションされるのが、
・自分は経理財務をやってきた
・勤務地が通勤可能県内だ
・年収条件が合う、あるいはいまよりもよい
ということで、求人情報をよく読まずに、別の企業用に書いていた職務経歴書を手直しして、即エントリー、送信することです。
早いほうがいいに決まっている、うまくいったやつを流用すればいい、足りないことは面接で話せばいい……。いろいろ思うところはあるのでしょうが、先に述べた3つのステップの(2)を満たしていません。
このレベルの判断でエントリーして職務経歴書を送ったとしても、書類で落とされてしまうでしょう。
■肩書だけでは何も伝わらない
では、職務経歴書はどのように書けばよいのか?
例えば今回の案件であれば、「私は経理財務部長を務めていました」だけでは不十分です。
また、「中期経営計画策定3年、月次決算取りまとめ10年、財務リポート5年、マネジメント7年」というように、担当したことのある役割ミッションの項目(と経験年数)だけを書き連ねるのも、ミドルシニアクラスに限っていえば失格です。
実績について、社内評価を記述する人がいます。社内評価とは「売り上げ達成率150%で、当該期間中のMVPを受賞しました」「~を提言し、その年の社長賞を獲得しました」というようなものです。
実績は素晴らしいのですが、これらを応募先企業の社長や経営陣、人事部長が見て、「おお、すごいですね。ぜひ採用したい」とは思ってもらえないのは確実です。
相手先企業が評価するのは、「なぜ、売り上げ150%を達成できたのか」「なぜ~を提言できたのか」といった、それら実績の背景にあるあなたの考え方や行動の仕方などのプロセス部分です。
■書くべきは「STAR」
職務経歴書には、主立ったプロジェクトワークについて、ショートストーリーを記載すべきです。ポイントとしては「STAR」を意識することです。
「そもそもどのような状況で(Situation)、それに対してあなたはどのような取り組みテーマを立て(Theme)、実際に実行し(Action)、どのような成果が定量・定性で出たのか(Results)」を記載するとよいでしょう。頭文字を並べて「STAR」と覚えてください。
例えば、「月次決算について試算表提出にスタッフの手作業で40日程を要していたが(S)、時間短縮のため(T)、クラウド会計ソフトの導入と各部の業務フローの見直しを行ったことで(A)、10日内での確定・提出を実現した(R)」というようなかたちです。
■募集要項にある「必須」「歓迎」の意味
必須要件で相応以上の接点があることが当然必須ですが、さらに歓迎要件について、より多くの接点があれば、なおよしです。
例えば今回のケースでは、歓迎要件に「管理本部長として人事総務、法務、情報システムも包括してマネジメントしたご経験をお持ちの方、歓迎」とあります。もしあなたが現在、管理本部長として経理財務のみならず、人事総務や法務、情報システムも管轄しているなら、本件において他の候補者から一歩抜きんでるチャンスでしょう。
ただし、あなたがもともと人事総務畑の人でこちらが主の専門であり、プロモーションの中で現在は経理財務チームも管轄しているという出自であったら、今回のポジションにおいては有力候補者とはいえないでしょう。
なぜならば、必須要件のほうに「経理財務、経営企画」が書かれているということは、「主の専門は経理財務・経営企画のマネジメント人材で、かつ、人事総務や情シスなどは課長以下が回しているものを管理監督できる人」を望んでいるということだからです。
この辺の必須=Must、歓迎=Betterの主従関係もしっかり把握、認識することが大事です。
■社風に合う人物をにおわせる書類の書き方
必須要件と歓迎要件で採用企業とあなたとの接合点を確認しました。それと同じくらい大事なのは、求める人物像における人物タイプでのマッチ度合いです。
いくら経験豊富でスキルや能力が高くても、人物のフィット感がない人を採用するということは、特にミドルシニアクラス以上の採用においてはまずありません。
一緒に働きたいと思わせる人物タイプのマッチ度は非常に重要です。それまで順調に選考が進んでいても、ここが最終的な可否の決め手となることも多いのです。
とはいえ、書類選考段階で人物タイプを伝えることはなかなか難しいです、ですが、職務経歴書の記述から一定の可能性(の有無)を読み取ってもらうことが可能なのもまた事実です。ここで書類通過できるかどうかが決まるのです。
■求人情報を深読みする
今回の求人情報には求める人物像として「論理思考力にたけた方」「社員の業務コミットメントを高められる方」「自ら現場に入り込んでいき、社員に直接働きかけるコミュニケーションスタイルの方」とあります。
さらに会社の状況は、株主は投資ファンドになり、そこから新社長が送り込まれています。
2つの情報を掛け合わせて、企業が求める人物像を想定してみるのです。
ファンドと渡り合う論理思考力の高さと、またファンド投資先企業としての事業・組織テコ入れにあたっての現場力、組織活性化力が必須とされている。求人票にははっきりと書いてはいませんが、企業が欲している具体的な人物像が浮かび上がってきます。
職務経歴書で上記の通りSTARで取り組み実績を記述するにあたって、記載のエピソードが論理的か、またストーリーの中にメンバーたちのコミットメントを高めた取り組みエピソードや自ら現場に入り込んで取り組んだ事実が記載されていると、人物タイプでのマッチ度が高いと判断されるでしょう。
■こうすれば転職で9割成功する
最終的に採用企業が「よし、ぜひ来ていただこう」と、採用を決定するか否かは、あなたが実際に参画してくれたとして、入社後にこれまで同様に(あるいはそれ以上に)持てるものを十二分に発揮して成果を上げてくれるだろうかという「再現可能性」の部分です。
やってみなければ分からないことではありますが、再現を期待・信頼するには、「勤め先企業から与えられて、言われてやったことではなく、あなた自身が具体的にどのような考え方と行動を取れる人なのか」「出した成果について、内容ではなく、自分自身がどう考え、行動し、出した成果かを具体的に表現できる(ロジックがある)」という2点を満たしていることが条件となります。
そもそも企業は「自社を儲けさせてくれる人」「自社の組織を活性化させてくれる人」「本音本気で自社をよくして、添い遂げようと思ってくれる人」を求め、採用し、自社で活躍してくれるよう生かします。この3つを満たす人が理想の転職を果たし、その会社で活躍することができるのです。
「自分は何がしたくて、できるのか」「応募企業に対して、どのような貢献ができるのか。それはなぜか」「応募企業になぜ入社したいのか、その共鳴ポイント、情熱」を明確に職務経歴書に記述できていれば、書類提出の段階で転職成功は9割方見えたも同然です。
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株式会社 経営者JP、人材コンサルタント
早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。その後、リクルートエグゼクティブエージェントのマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。2万名超の経営人材と対面してきた経験から、経営人材の採用・転職支援などを提供している。著書は『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)など。
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(株式会社 経営者JP、人材コンサルタント 井上 和幸)
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