「宿題はやったの?」は絶対にNG…本当は頭がいい子をみるみるダメにしてしまうNGフレーズ
プレジデントオンライン / 2023年7月26日 20時15分
※本稿は、小川大介『子どもの頭のよさを引き出す親の言い換え辞典』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
■「これくらいできて当たり前」と考えるべきではない
子どもがまだ小さかったころは、やれ笑った、やれ寝返りができたと小さな成長を喜んでいられたのに、できることが増えていくにつれて「これくらいのことはできて当たり前」と思ってしまう。特に小学生になって学校の勉強が始まると、「学校の宿題はやるのが当たり前」「家庭学習は毎日やるのが当たり前」と考える親御さんは少なくありません。
「宿題はやったの?」「毎日勉強するって約束したじゃない!」「当たり前」と思うからこそ、できていないことにモヤモヤしたり、カッとなってしまったりする。そして「またやってないの⁉」「本当に根気がないんだから……」などの、本当は言いたくない言葉を子どもに投げつけ、あとで「あんなこと言わなきゃよかった」と落ち込んでしまう。そんな日々に疲れを感じている親御さんはものすごく多いですね。でもそれが、親として当たり前の姿なのだと思います。
幸せな人生とは、人から愛され、信頼され、自分の力でお金を稼いで生活できるようになること。そんなふうに思い描くのが普通でしょう。そして、そのすべてと学習は切り離せません。問題を解決する力があること、学ぶ力があること、言葉が使えること。これらは、すべてが幸せな人生につながっていきます。
そう思うからこそ、勉強をないがしろにしている(ように見える)わが子の姿に、「この子の将来はどうなってしまうのだろう……」と子どもの未来の幸せが崩れていくように感じる。不安もイライラも親の愛情の証なのですから、つい心ないことを言ってしまったとしても、ご自分を責めないでください。子どもを傷つけたと思ったら、「ごめん! お母さん(お父さん)、さっきはちょっと言いすぎた」と素直に謝ればいいだけのことです。
■命令口調は子どもからやる気を奪う
子どもの勉強のことになると、どうしてもイライラを抑えられずに怒ってしまう……。そんな自分を責めてしまう親御さんは少なくありません。
「勉強のことをとやかく言う=教育ママ」という、昔ながらのイメージも影響しているのでしょう。ところで、「見守る子育て」を世に広めている私は「勉強反対派」なのではないか、という誤解をときどき受けることがあります。「子どものありのままを大事にするんだから、勉強を求めるのもやめたほうがいいんですよね」と。とんでもない!
子どもの将来の幸せに勉強が大切であることは、疑う余地もない事実です。子どもの幸せを願うなら、勉強にこだわるのは当たり前なのです。大事なのは子どもにその思いをどう伝えるかです。お互いが感情的にならずにすんで、気持ちよくすごせる言葉を選んでいく。
「ちゃんとやったの?」「○○しなさい!」という命令口調は子どものやる気を奪うだけでなく、親からの指示がないと動けない子にしてしまう心配もあります。子育てのゴールを「自立」と考えるのなら、子どもが自ら動けるような言葉を渡してあげたいですよね。ここで有効なのが「問いかけ」です。
「宿題は何が出ているんだっけ?」「今回のテスト、何点くらい取れそう?」たとえばこんな感じです。「えっ? それだけで本当に自分から動けるようになるの?」と、よく言われます。それがなるんです。そこで本稿では、「家庭学習」の場面で起こりがちな親子の会話についてお話ししていきましょう。
■「なにをするべきか」を思い出させよう
・本当は言いたくない言葉
早くやりなさい!
・子供に届く言葉
宿題は何が出てるんだっけ?
・小川先生のひと言
まずは、「何をしなければいけないのか」を思い出させましょう。
夕飯前に宿題を終わらせると約束したのにやっていない。または、いつまでもダラダラやっている……。「早くやりなさい!」「うるさいなぁ~。わかってるってば!」日々の生活でもっとも親子バトルに発展しやすい場面といえば、この「宿題をやったかどうか」ではないでしょうか。
親としては、学びの土台となる学校での勉強をおろそかにしてほしくない。一方で、「こっちは忙しいんだから、学校の宿題くらい自分でやってほしい」という親の都合もあるでしょう。仕事から急いで帰って、夕飯づくりや片づけなどやることが山積みなのに、思うように事が進まないとイライラしてしまう。これもごく自然な感情です。
とはいえ、ここでイライラの感情をぶつけてしまえば親子バトルに発展するのは目に見えています。理想的なのは、子どもが自分から宿題に取りかかり、その間に親は家のことをやっておく。そのためには強く言いたい気持ちをいったん横に置いて、子どもの気持ちに寄り添うことが解決の近道になります。
■宿題を進めさせる「3つのステップ」
宿題を自分から始めようとしない。時間がすぎても終わっていない。このような状況のとき、大人は「できている」「できていない」で判断してしまいがちです。でも、ここではまず、“なぜ勉強に取り組めていないのか”に目を向けましょう。
人生経験が豊富な大人と違い、子どもは「いつ、何をしたら予定までに終わりそうだ」という見通しを立てる力がまだ育っていません。また、何かをやり遂げなければならないとき、それが無事に完了するかわからないと不安になります(大人も同じですね)。
なかなか宿題に取りかかれない子の多くは、「何から始めたらいいかわからない」「ちゃんと終わるか自信がない」という不安を感じていて、なおさら身体が動かないのです。そこでポイントとなるのがセルフイメージ。「宿題が終わっている自分」をイメージさせてあげると、身体が動きやすくなります。繰り返しますが、届ける言葉は「○○しなさい!」という命令ではなく、問いかけです。順番は次の3ステップで進めてみましょう。
2.「どこまでやったら終わったことになるのかな?」(取り組みの具体化)
3.「どれくらいかかりそう?」(時間と負担感の確認)
■「ちゃんとやりなさい」はNG
まず何の宿題が出ているのかを問い、やるべき対象を思い出させます。すると、「今日は算数と漢字のプリントが1枚ずつだよ」などと答えてくれるでしょう。「わかんなーい」という答えだったら、宿題をメモする習慣から教えてあげる必要がありますね。
次に「どこまでやれば終わったことになるか」を確認します。大人はよく「ちゃんとやりなさい」と言いますが、「ちゃんと」というのは実はとても曖昧な言葉なのです。プリントを全部埋めればいいのか、丸つけまでするのか、解き直しまでするのか、取り組むべき内容を確認してください。先生から指示がないようなら、「宿題は丸つけまでしようね」「解き直しまでできているといいね」などと家庭で決めておきましょう。
最後に、それぞれの宿題を終えるのにどのくらいかかりそうか、お子さんの感覚でかまわないので答えてもらいます。たとえば「漢字は一度習った字だからすぐできる。算数は上の5問は計算だから簡単。でも、下の2問は文章問題だからちょっと時間がかかるかも」と答えたとしましょう。
■「何分くらいでできそう?」と問いかけたほうがいい
そうしたら、「じゃあ、漢字と計算5問はすぐにできそうだから任せたよ。文章問題がもし難しかったら、一緒に考えてみよう」と伝えてあげる。そうすれば、具体的に何をどうやればいいか見通しがつきます。
宿題が終わっている自分をイメージすることで、子どもは「なんとかなりそう」と気持ちに余裕ができるし、親御さんも今日の宿題に目処がついて安心感を得られます。このように手順をイメージさせてあげると、宿題に取り組むハードルがグッと下がります。
宿題の点検ができるようになったら、「算数のプリントは何分くらいでできそうかな?」と時間を意識させる問いかけをしてみましょう。「計算が12問あるうちの7問は暗算でできるから10分あればできそう。残りの5問は筆算が必要かな。間違い直しを入れたとしても30分あれば終わりそう。じゃあ、17時半からやれば大丈夫!」。こんなふうに自分で計画が立てられるようになればしめたもの。
ここまで到達するにはそれなりに時間と根気が必要ですが、一度習慣化できれば親御さんの負担は減ります。何よりお子さんが自分の予定を自分で選択できるようになり、これは将来の自立につながっていきます。どうか気長に関わって、自分の足で前へ進める子にしてあげましょう。
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教育家・見守る子育て研究所所長
京都大学法学部を卒業後、中学受験個別塾を創設。コーチングと学習タイプ分析を融合した独自ノウハウで受験学習、幼児からの能力育成、子育て支援で実績を重ねる。執筆、講演、教育系企業への助言など幅広く活躍中。6000回の面談で培った洞察力と的確な助言が評判。著書に、『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』・『自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て』(KADOKAWA)、『頭がいい子の家のリビングには必ず「辞書」「地図」「図鑑」がある』・『子どもが笑顔で動き出す 本当に伝わる言葉がけ』(すばる舎)、『1日3分! 頭がよくなる子どもとの遊びかた』(大和書房)、『子どもの頭のよさを引き出す親の言い換え辞典』(青春出版社)など多数。 中学受験情報局「かしこい塾の使い方」
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(教育家・見守る子育て研究所所長 小川 大介)
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