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「仕事上の接待」でも残業代は請求できる…労働基準法が定める「1日8時間、週40時間は割増賃金」の意味

プレジデントオンライン / 2023年8月11日 17時15分

振込み先口座は「労働者が指定」するもの(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/takasuu

接待は残業にあたるのだろうか。社労士の村井真子さんは「仕事に強く関連し、行くか行かないかを自由意思で決められない接待は、仕事として残業代を請求できる。また労働基準法では労働時間を1日8時間、週40時間と定めており、これを超える場合は副業でも残業代が発生する」という――。

※本稿は、村井真子『職場問題グレーゾーンのトリセツ』(アルク)の一部を再編集したものです。

■「特定の銀行で口座を作るよう指示」は労働基準法違反

入社時に特定の銀行で口座を作るよう指示され、その口座で給与を受け取るというルールがある会社が散見されます。

多くの場合、会社の支払う振込手数料や管理上の都合でこのような取扱いをしているようですが、厳密には労働基準法違反です。

労働基準法では賃金の通貨払いの原則があり、基本的には現金で支払うものとしています。しかし、例外として、労働者の同意があれば銀行振込で支払ってもよいとしているのです。

■振込み先口座は「労働者が指定」するもの

労働基準法第24条第1項では、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」としています。

しかし、これに続く但し書きで「厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い」という文章があり、これが銀行口座への振込支払いを認める根拠になっています。

給与を銀行振込にする会社は多いですが、振込先口座は「労働者が指定する」ものでなければなりません。

もちろん、会社が特定の銀行口座の開設・利用を「お願い」することはできますが、あくまでもお願いなので断ることもできます。

自宅近くに支店がないなど利便性が低いケースもあり、理由を伝えて断っても大丈夫です。

■「デジタル通貨での給与支払い」の動きも

最近では、厚生労働省がデジタル通貨での給与支払いをするための資金移動業者の審査受付が2023年4月1日より開始されました。デジタル通貨での給与支払いが行われるための準備が開始されたことで、大企業を中心として導入の検討が始まっています。

これは会社が支払う給与を、銀行口座を介さずに直接労働者にデジタル通貨で支払う方法です。

デジタル通貨はPayPay、LINE payなど。キャッシュレス決済サービスと接続されたプールのような場所に支払われ、労働者は厚生労働大臣の指定をうけた資金移動業者のなかから好きなキャッシュレス決済サービスの会社を選び、給与を受け取ることができます。

経済産業省の調査によると、2021年のキャッシュレス決済比率は32.5%に達する反面、デジタル通貨(電子マネー・コード決済)比率は3.8%にとどまっています(※1)

※1 経済産業省「2021年のキャッシュレス決済比率」をもとに算出。

今後、新たな給与支払いの方法が普及すれば、会社指定の銀行で一律に給与を受け取るのは時代に合わなくなりそうです。従業員満足度の観点からも、疑問があるときは声をあげてみてください。

■「仕事上の接待」実は残業代を請求できる

飲食を伴う「ビジネス会食」や休日の「接待ゴルフ」など、接待にはさまざまな形があります。自分の意思で行うこともあれば、上司に連れていかれることもあるでしょう。

接待の場で契約獲得の根回しをしたり、参加したかどうかによって担当案件の数や質が変わるようなことがあれば、事実上の営業の場ともいえます。

「仕事上の接待」でも残業代は請求できる(※写真はイメージです)
写真=iStock.com/vadimguzhva
「仕事上の接待」でも残業代は請求できる(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/vadimguzhva

接待と残業との関連でいえば、次の項目に当てはまるか否かが重要です。

① 自由意思で行くか行かないかが選択できない。
② 商談など、接待の場で仕事に強く関連する話し合いがある。

①②がともに当てはまる場合、その接待は仕事の一部とみなされる可能性が高くなります。

■「接待ゴルフ」は仕事とみなされない

例えば、上司に命じられて宴会場を手配し、当日は受付で参加者を迎え、会では司会を担当したり、仕事上のメールをその場で送信する場合は、仕事の色が濃くなります。

そのため、時間外の接待であれば残業代の請求が可能と考えます。

また、プレゼン後に顧客から直接フィードバックがあることを想定して、あらかじめ会食の場を設けることも仕事の性質が強いといえます。

一方で、接待が仕事としてみなされないケースもあります。

ゴルフのように参加者にとってレジャー性が高いもの、取引先との関係強化のために自発的に行う飲み会などは、仕事との関連性が薄く、会社の指揮命令下にあるとはいえません。

よって、時間外や休日に行われても残業代を請求することは難しいでしょう。

「接待ゴルフ」は仕事とみなされない(※写真はイメージです)
写真=iStock.com/MichaelSvoboda
「接待ゴルフ」は仕事とみなされない(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/MichaelSvoboda

■ビジネスランチとは別に休憩が必要なケースも

さらに、コロナ禍で増えてきたビジネスランチも同様です。1日8時間という枠内でのことであれば、仕事に強く関連していても残業代は発生しません。

ただし、仕事の性格が強いビジネスランチの場合、その時間とは別に会社は労働者に休憩を与えなければなりません。

連日の接待は心身にも負荷がかかります。上司に対処法を相談してみましょう。

■副業にも残業代が発生する

1日のなかで2社にわたって仕事をする場合、問題になるのが残業時間です。

労働基準法は1日の法定労働時間を8時間までと定めています。8時間は1つの会社ごとではなく、1人の労働者ごとに考えます。

したがって、A社で8時間働き、同じ日にB社で3時間働くとすると、B社の労働時間はすべて時間外労働になります。

時間外労働における割増賃金は、あとから契約した会社が支払います。

理由は、あとから契約した以上、先に契約している会社の存在を知ることができるからです。

前述の場合、A社で法定労働時間の枠を使い切っているので、B社は割増賃金を上乗せした時給で給与を支払う必要があります(※2)

※2 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドラインQ&A」参照

■「1日8時間」「週40時間」以上は割増賃金が発生

また、A社で1日5時間の契約で働く労働者がB社でも働く場合、1日8時間の枠内であれば時間外労働は発生しません。

つまり、B社でも1日3時間までは割増賃金が発生せず、それを超えたところから時間外労働になって割増賃金が発生します。

この考え方は週40時間にも適用されます。

例えば、A社で平日にフルタイムで働く人が土曜日にB社で働く場合、土曜日の労働はすべて時間外となります。

この場合も、B社が割増賃金を上乗せした時給で給与を支払うことになります。

なお、個人事業主や、フリーランスとして業務委託で副業をするときは労働時間の概念の範疇外になります。

なぜなら雇用ではなく、自分の裁量で仕事の受発注がコントロールでき、時間管理ができるためです。

村井真子『職場問題グレーゾーンのトリセツ』(アルク)
村井真子『職場問題グレーゾーンのトリセツ』(アルク)

副業として働くときは、こうした観点も踏まえて仕事を選ぶとよいでしょう。

雇用契約で副業をする際の時間外とは、どちらが本業でどちらが副業なのかではなく、また報酬の多寡にもよらず「契約の前後関係」で考えます。

雇用契約の順番は労働者本人の申告がなければ会社側ではわかりません。

面接や応募の段階で、既に働いている会社があることはきちんと伝えましょう。

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村井 真子(むらい・まさこ)
社会保険労務士
家業である総合士業事務所で経験を積み、2014年、愛知県豊橋市にて独立開業。中小企業庁、労働局、年金事務所等での行政協力業務を経験。あいち産業振興機構外部専門家。地方中小企業の企業理念を人事育成に落とし込んだ人事評価制度の構築、組織設計が強み。現在の関与先160社超。移住・結婚とキャリアを掛け合わせた労働者のウェルビーイング追及をするとともに、労務に関する原稿執筆、企業研修講師、労務顧問として活動している。著書に『職場問題グレーゾーンのトリセツ』(アルク)。

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(社会保険労務士 村井 真子)

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